富野由悠季は、なぜ「宇宙戦艦ヤマト」を敵視したのか?
今回は、「宇宙戦艦ヤマト」シリーズについて少し書きたい。
今月から「ヤマトよ永遠にREBEL3199」というのを劇場公開してるらしく、その関係か、「ヤマト2199」「ヤマト2202」「ヤマト2205」などが頻繁に配信されてるんだよね。
思わず、久しぶりに見ちゃった。
このシリーズは70~80年代の旧作のリメイクなんだが、そもそも旧作の設定をよく覚えてないので、どれほど改変されてるのかはよく分からない。
ひとつだけ気になったのは、スタッフロールには松本零士先生の名前が全く出てこなかったことだ。
で、代わりに「原作・西崎義展」という表記がど~んと出てくる。
このへんの詳しい流れについては、こちらの方↓↓をご覧ください。
しかし令和の今、「宇宙戦艦ヤマト」というブランドはどこまで通用するんだろうか?
好きな人は、めっちゃ好きなんですよ。
特に「オタク第一世代」、80年代を知る人にとって「ヤマト」は特別なものであるらしい。
たとえばオタキング・岡田斗司夫氏などは、「最も好きなアニメ」はジブリでもなく「ガンダム」でもなく、「宇宙戦艦ヤマト」だと言っていた。
あまり私にはよく分からない領域だけど、メカ好きにはタマらんものがあるらしい。
とにかく、メカデザインが超絶に凄いとやら?
そういや、今でも「艦これ」とか「ハイスクールフリート」とか、妙に軍艦をフィーチャーした作品があるよね。
こういうのも、おそらく「ヤマト」から始まっている文化なんだろう。

確かに、「ヤマト」がアニメ界に与えた影響は計り知れないと思う。
ひとつ画期的だったのは、おそらくこの作品においてアニメ史上初めての「かっこいい悪役」が出てきたんですよ。
そう、デスラー総統である。

いや、かっこよくないやん?と思うかもしれんが、この当時の他作品の悪役なんて、普通こんなのですから↓↓


ちなみに、「ヤマト」リメイクシリーズになるとデスラーはさらにセクシーになってたわ。

というか、リメイク版は逆にデスラーこそが最大の見どころである。
彼は「2199」で冷酷非情に振る舞い、でも「2202」でその冷酷非情の意味が明かされ、もはや「2205」ではその哀愁に涙せざるを得ない、という流れになってるんだ。
ぶっちゃけ、このシリーズでは主人公の古代進がマトモすぎてクソつまらんキャラなのよ。
軍人なのに銃を撃たない平和主義者で、人道主義者で、聖人君子みたいな奴である。
だからこそ、男の魅力としてはデスラーの足元にも及んでなかった。
でさ、やがて古代とデスラーは共闘する流れになっていくわけね。
今でこそ「昨日の敵が今日の友」っぽい展開は普通にたくさんあるけど、昔のアニメではこういうの、かなり画期的だったんだ。
こういうのも「ヤマト」が先駆けだったじゃないかな?
あるいは「Zガンダム」におけるアムロ&シャア共闘も、「ヤマト」の影響があったのかもしれないね。

でも富野由悠季は「ヤマト」が大っ嫌いだったらしいよ。
彼は当時「ヤマト」の絵コンテを描いてたようなんだけど、どうやら途中で西崎義展プロデューサーと喧嘩になってしまったとやら。
しかも富野さんはこれを根に持ち、「ヤマトをぶっ潰す!」というモチベで「ガンダム」を作ったというんだから、よほど腹に据えかねたんだろう。
でもさ、私はこの【西崎vs富野】という喧嘩の構図、何となく納得できる気がするんだよね。
だってこれ、右翼vs左翼の喧嘩でしょ?

一応、当時の「ヤマト」ファンは別に作品をイデオロギーで見てなかったと思うよ。
だけど企画した西崎さん自身は、そうでもなかったんじゃないかな、と。
ぶっちゃけると、この人はかなり右寄り、いわゆるナショナリストだったと思う。
その論拠として、彼は石原慎太郎とかなり仲いいんだよね。
実際、石原さんは劇場版「ヤマト復活編」の原案まで手掛けてるし・・。
西崎さんと石原さん共通の嗜好は、いわゆる「神風特攻」「玉砕」である。


なんていうかな、「ヤマト」って割とナショナリズム強めの作品なんだよね。
祖国を守る為に命を落とす、それは美しい、みたいなノリだから。
反権力志向の富野さん的には、そのへんが我慢ならなかったのかもしれない。
分かんないけどさ。
宇宙戦艦ヤマト=右翼的
機動戦士ガンダム=左翼的
というのは割と昔から指摘されてきたこと。
でも今改めてリメイク版「ヤマト」を見ると、思ったほどには右翼テイストがないんだよね。
むしろ、左翼的ニュアンスもあったりして。
「ガンダムUC」の福井晴敏さんが脚本書いてるから?
たとえば「2202」だと、古代らは軍上層部の決定を不服とし、反乱を起こして単独ヤマトで出航しちゃうのよ。
どうやら、旧作でもそういう展開だったらしい。
結果、地球軍vsヤマトという不毛な戦いになっちゃうんだけど。
こういうパターン、確か「機動戦艦ナデシコ」、「無責任艦長タイラー」もそういうのがあったかと記憶する。

で、「2205」ではもっと凄くて、今度は艦長の古代が部下に反乱起こされるのよ。
部下に銃を向けられたりなんかして・・。

でさ、古代はその反乱(部下の意向)をあっさり認めちゃうんだよね(笑)。
でもって、部下にこう言う。
「お前は正しい。 絶対に譲れないものが人にはある。
それを譲れと言われたら、抵抗しろ。
立場なんか気にするな」
こういうの、反乱を起こされた側の艦長がいうセリフではない気もするんだが、古代は真面目にそんなこと言うのよ。
いやいや、部下が上官に銃を向けて逆らうのがOKって・・。
思えば、「ガンダム」ブライト船長のリーダーシップも相当ユルかったが、古代艦長の場合はさらにその上をいってるようだ。

うん、福井晴敏版「ヤマト」は想定以上にリベラルだということ。
もはや、軍も「ゆとり」の時代なんだろう。

いや、上の画を見る限り、デスラーのところは全然「ゆとり」じゃなさそうなんだけど・・。
<独裁国家艦隊vsゆとり戦艦>
こういうのは、スペースオペラにおけるひとつのお約束。
【銀河英雄伝説】
ラインハルト陣営(独裁)

ヤンウェンリー陣営(ゆとり)

【機動戦士ガンダム】
ザビ陣営(独裁)

ブライトノア陣営(ゆとり)

まぁ、いまどきのコンプライアンスでいうと、上司として好ましいのは
・古代進
・ヤンウェンリー
・ブライトノア
ということか。
でも確かに、軍というのは上官が間違った方向に進んでしまった場合、どうすりゃいいのか?というのが非常に難しい問題だよね。
「上官の命令が絶対」が軍の原則だし、もしも上官から「非戦闘員も含めて町ひとつ全員虐殺しなさい」と命令が下ったら、それに従うべきなのが軍人ってもんでしょ?
よく考えたら、恐い組織体系だと思う。
それを思うと、わざわざ部下に「抵抗しろ」とまで言ってくれる艦長・古代は非常にありがたい上官さ。
ひとつの組織論として、なかなか「ヤマト」は面白いよ。
あと注目ポイントとしては、とにかくヤマトが打たれ強いことだね。
ほとんどのパターンで1隻vs大艦隊であり、毎回必ずフルボッコなのよ。
なのに、毎回それを耐え忍ぶ。
ただ、ひたすら我慢、我慢である。
いまどきの俺Tueee!を見慣れた人たちにとっては、逆にこういうの、新鮮かもね(笑)。


