「宇宙戦艦ヤマト」におけるワープ航行を考察
今回は<SF>という概念について少し書いてみたい。
よくアニメ見てると、スタッフロールに「SF考証」または「科学考証」という肩書の人の名前を見かけることあるでしょ。
たとえば、めっちゃ古いところでひとつ例を挙げれば、「宇宙戦艦ヤマト」に【SF設定/豊田有恒】とあるんですよ。
この豊田さんという人は、実をいうとSF作家である。
豊田有恒(1938年~2023年)

私はこの人の小説を読んだことはないけど、聞けば日本SF作家協会5代目会長を務めたほどの人らしく、そこそこの権威なんだろうね。
一時期は日本政府の科学顧問みたいなこともしてたとやら。
で、学生時代は東京大学(理科二類)と慶応大学(医学部)の両方を現役で合格して慶応の方に進学したものの、入学後は遊び惚けて一度も進級しないまま退学になったってさ・・(笑)。
でもまぁ、基本は理系の人なんだろうね。
その後は、趣味としてSFにハマったんだという。
しかし、ここでポイントとなるのが豊田さんの世代である。
1938年生まれ。
・・うむ、宮崎駿や富野由悠季とほぼ同世代ともいえるんだが、この世代はあまりにも古すぎて「オタク」のカテゴリーからはハミ出ちゃうのよ。
だって、戦後復興のごちゃごちゃした時期に青春を送った世代だろ?
当時の国内は娯楽コンテンツも十分だったといえず、ゆえにこの世代は海外からの輸入コンテンツの洗礼を受けたクチである。
この当時から、世界三大SF作家という概念があったらしいぞ。
・アーサーCクラーク
・ロバートAハインライン
・アイザックアシモフ
多分、小松左京や筒井康隆や星新一も彼らの影響を受けたクチなんだろうね。
豊田さんもまた、きっとそうだったに違いない。

さて、これはあくまで私見だが、「オタク」と呼べる人種の一番古い世代を挙げれば、押井守(1951年生まれ)、および庵野秀明(1960年生まれ)ということになると思う。
で、豊田さんの場合はそれ以前の世代ゆえ、「オタク」にカテゴライズできない。
なお、この世代の呼称は特にないので、ここでは便宜上「キサマ世代」とでも呼んでおこうか。
オタク世代⇒漫画/アニメ/特撮
キサマ世代⇒小説/映画(主に海外)
オタクというのは本来、漫画/アニメ/特撮といった<サブカル>への造詣が核になってるものであり、だからアーサーCクラークやアイザックアシモフは少しそこからズレてると定義。
<サブカル>じゃなく、どっちかっつーと<カル>じゃん?
だけど、面白いのが押井さんも庵野さんも上の世代(キサマ世代)のことをめっちゃリスペクトしてるのよ(厳密にいうと、押井守は海外映画の造詣が深く、キサマとオタクの中間世代ともいえる)。
年寄りだからといって、決して馬鹿にしてないのね。
事実、庵野さんはキサマ世代が作った「宇宙戦艦ヤマト」が大好きで、今度はそれをオタク世代として自らリメイクしようとしてるんだから・・。

さて、ここからは「宇宙戦艦ヤマト」のSF考証について触れてみよう。
まずは、動力源の「波動エンジン」についてだね。
このエンジンのテクノロジーについて、作中、徳川機関長が次のように説明してくれていた。
「宇宙エネルギーを圧縮して光より速い『タキオン粒子』に直し、そのエネルギーを動力として航行するのじゃ。
このエンジンなら、光より速く、時間より速く航行することができる。
分かったかな?」

・・いえ、分かりません。
まぁ、分からんなりにも私なりの解釈をすると、このエンジンは液体燃料や固体燃料のようなものを必要とせず、宇宙空間(真空)からタキオンという粒子を精製できちゃうところに最大のキモがあるんだろう。
まさに、夢のエンジンじゃないか!

で、問題はこのタキオン粒子ってやつだが、これは「ヤマト」が勝手に設定したものではなく、普通に科学用語として昔から存在する概念なのね。
ただし、あくまでも仮説の中の素粒子にすぎず、実際に発見されたものではないのであしからず。
そもそも、光の速度を超えるなら相対性理論上だと時空を超えてしまうので、そんな時空を超えるものの発見などできないはずだよ。
ただ、一方で「量子の世界は相対性理論の適用外」というのも現在判明している事実であり、意外といつか発見されたりして・・。
とにかく、こんなタキオンみたいなものを持ち込んでくるあたりが豊田有恒先生のお仕事である。
「ガンダム」がミノフスキー粒子
「宇宙戦艦ヤマト」がタキオン粒子

とりあえず、なんか素粒子という概念を出しておけばSFとしての信憑性が出てくる、ということを押さえておいていただければ十分です。
じゃ、次に「ヤマト」の華とでもいうべき「ワープ」について少し検証してみましょう。
これについては「こんなこともあろうかと」でお馴染み、工作班長/真田志郎が作中で説明をしてくれていた。

「ワープとは時間軸を通らずに飛び越えることです。
例えば時間が<波>だとすれば、頂点から頂点に飛行すれば谷間の分だけ余計な時間をかけないで済むわけです」

・・そもそも、時間って<波>なんでしたっけ?
もう、そこからよく分からなくなってるんですけど?
なんか誤魔化されてる気がするなぁ・・。
と皆さんも思ったでしょうけど、そう、まさしくSF考証とは「いかにして誤魔化すか」がキモなんですよね。
というのも
基本SFというのは、ほとんど<嘘>で構成されてるものなんですよ!
それを、いかに「ホントっぽく感じさせるか」という印象操作が「ヤマト」における豊田先生のお仕事だったんです。
SFファンはそこをちゃんと分かってるから「うまく騙されたフリをする」という作り手⇔受け手のアウンの呼吸が成立してるわけだが、たまに無知なコドモがこれにツッコんだりするのは正直ウザくてたまらん。
そういうのを見かけた場合は、皆さんも是非「SFとの接し方」をコドモによく説明してあげてくださいね。

さて、この「ヤマト」から約半世紀を経たこともあり、あれから人類の科学技術もだいぶ進歩しています。
よって、
現実世界でも、今はテレポーテーション実験が成功したりもしてるんだからね?
ただ、「ヤマト」の方法論とは少し違ってまして・・。
確か、あの時の真田班長の説明は「空間の歪み」を前提とするワームホール式の移動で、まぁ、これはこれで確かにその理論は実をいうと現実世界でも体系化されてるんだが、今トレンドになってるのはそれとは別の
「量子テレポーテーション」
という新概念である。

ぶっちゃけ、これは原子レベルのテレポーテーション実験までは成功してるらしいんだが、さすがに人間のテレポーテーションまでは無理でしょ~、とされているのが現実。
・・という以前に、倫理上、絶対にやっちゃいけないと私は思うよ?
だってさ、この量子テレポーテーションは厳密にいうと「移動」じゃないからね。
この考え方をざくっと説明すると、まず人間を形成してる最小構成単位は「細胞」だけど、その細胞を極限まで細かく分解していくと「量子」というさらに小さな単位になるわけよ。
つまり人間とは、量子のカタマリなわけね。
・・で、その量子⇔量子の組み合わせを仮に何らかの形で数式化できたとして、ここでいう量子テレポーテーションというのは、遠く離れた向こう側でその数式通りに量子を新たに組み立て直す、というやり方なんだわ。
「量子もつれ」という量子の特性を利用したやり方です。
ちなみにだが、この実験、オリジナルの素体はテレポーテーションと同時に原子崩壊します。
人間なら死亡ですね(涙)
ただ、転送先の向こうで新たな素体が構成されるので、パッと見は「移動」したように見える。
でもこれって、どう考えても「移動」じゃないでしょう?

そもそも、仮に転送先で肉体が新たに再構成できたとして、人間ってホントに肉体さえ構成されればそれで十分なのか?
その再構成されたヒトを、ヒトと呼んでいいのか?
仮にヒトには<魂>みたいなものがあるとして、それもちゃんと再構成されてるんでしょうか?
というか、そもそも<魂>は数式化できるものなんでしょうか?

・・など色々考えていくと、絶対に量子テレポーテーションは人類にとって禁忌の領域なんですよ。
数式で人間を作り直すだなんて、絶対に何かが間違っている!
3Dプリンターじゃないんだから。
・・あ、繰り返しになるが、「ヤマト」のワープは量子テレポーテーションじゃないからね?
あれはタキオン粒子で空間の歪みを作り、その空間ごとスキップする方法論だから。
だけどさ、今度「ヤマト」のリメイク手掛けるのって庵野秀明だろ?
庵野さんって、どっちかというと<量子テレポーテーション派>だと思うんだよねぇ。
だって、彼「ウルトラマン」大好きだから・・

ウルトラマンってさ、これどう見ても「ワープ」式瞬間移動ではなく「量子テレポーテーション」だろ?
庵野さん、これをやっちゃう気がするんです。
で、庵野さんは結構SF考証にも強い人だから、「ワープするごとに変化していく古代進」なんかを表現する人だと思うのよ。
ワープ前の古代進

ワープ後の古代進

ワープ前の森雪

ワープ後の森雪

ひとつハッキリしてるのは、森雪の巨乳化の原因は量子テレポーテーションということだよねw

