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今期のダークホースNO.1かな?「出禁のモグラ」

やはり「夏は怪談の季節」という意味なのか、夏クールというのはホラー系のアニメのリリースが多いですよね。
で、そういうアニメ群の中でも、ひと際ユニークだなと私が思ったのがこの作品です↓↓

「出禁のモグラ」

これ、「鬼灯の冷徹」を描いた江口夏実先生の新作のアニメ化らしい。

思えば「鬼灯の冷徹」って不思議な作品だったよなぁ・・。
確か、2021年の星雲賞(コミック部門)受賞してるんだよ。
明らかにSFじゃないのに。
でもその受賞を思わず納得してしまうほど、内容が妙にアカデミックというか、ウンチクの量がやたら多いんですよね。
コメディだが笑える回数より、「へぇ、そうだったのか」と感心する回数の方が圧倒的に多い。
とにかく情報量が多い漫画である。

「鬼灯の冷徹」

後に、江口先生が小説家・京極夏彦と対談する企画があって、その対談内容を見てたらひたすら京極先生が「鬼灯の冷徹」を絶賛するものでした。
でも、それ見て私はとても腑に落ちたというか、京極先生こそウンチク系の代表格みたいな人じゃん?
先生の小説は常に情報量多すぎるわけでw↓↓

どの小説も頁数が多い・・

そして、「類は友を呼ぶ」というべきか

・京極夏彦(1963年生まれ)
・荒俣宏(1947年生まれ)
・水木しげる(1922年生まれ)


というのは、この業界におけるひとつの<派閥>らしいのね。
おそらく江口先生(1983年生まれ)は、その<派閥>に入閣できた最若手と解釈していいだろう。

思えば、凄いメンツだわ~。

水木(1922年)⇒荒俣(1947年)⇒京極(1963年)⇒江口(1983年)って世代の継承とグラデーションが実に見事じゃん?

いや、個人的には、この系譜に西尾維新先生(1981年生まれ)を追加したいところだが(西尾先生は京極先生の大ファンだし)、北斗神拳的一子相伝でいくと【西尾<江口】というのが今のところの趨勢であるような気がする(京極先生が江口先生をめっちゃ気に入ってるみたいだから・・)。

しかし、江口先生も「鬼灯の冷徹」しかヒット作がないという弱みがあったので、そういう意味では2作目の「出禁のモグラ」も何とかヒットさせたい思いが強かったでしょうね。

でも、私が見た感じ、

ぶっちゃけ「出禁のモグラ」は前作の面白さを遥かに上回ってませんか?

いや、めちゃくちゃ面白いですよ、これ。

例によって江口先生ならではのウンチク量は健在だし、あと今回は「あの世」でなく「現世」の話ゆえ、とっつきやすい内容になったといえる。

その一方で、主人公のモグラを正体不明としてるところが何ともうまい。
・・でも多分、モグラは「あの世」の住人(モトは獄卒?)だよね。
当然、鬼灯様たちとも顔見知りである可能性は高く、いずれ本作と「鬼灯の冷徹」の関連は明かされていくことになるんだろう。

いや、そういうのをヌキにして、単体のオカルトコメディとして見ても本作は十分に面白い。
アニメ制作としては原作リスペクトの精神なのか知らんが、表現がやたら「漫画っぽい」。

こうやって擬音をわざわざ文字表現するのが目立ち、アニメを見てるというよりは漫画を読んでるような気分になってくる。
多分、そこが「狙い」だろう。

・・そう、よくも悪くもこれは「漫画」なんですよ。
それもいまどきの「コミック」じゃなく、「漫画」。
それこそ、こういうもののルーツともいうべき、レジェンド水木しげる先生の「貸本」っぽいニュアンスのやつね。

水木先生の「貸本」漫画

うむ、やっぱ漫画は電子書籍でなく、紙だよなぁ・・って人たちも結構いると思うし、このアニメも徹底して「紙の匂い」を感じさせる作りになってるね。
背景とか、なかなかいい味出してる。
あまりデジタル処理に頼らない系というか、手描き感がかなり強めに出てる感じ。

そして何より、キャラデザがいいじゃないか。

真木くん

モグラとともに主人公的立ち位置にいるのが真木くんだが、このキャラデザはどう見ても「いまどき」じゃない(笑)。

「いまどき」のデザインの例

なんか、妙に生々しい等身大っぷりなんだよね。

非リア充系大学生(文系)の真木くん

服とかも「あぁ、こういう大学生おるおる」という感じで、ホントうまい。

真木くんとは友達以上恋人未満、ゼミ仲間の八重ちゃん

ヒロインの八重ちゃんがかわいいのがせめてもの救いだが(いや、設定上はあまりイケてない地味な子?)、こういう感じの女子大生って確かにいますよ。
このリュックしょってる感じとか、リアルやわ~。

第1話で、真木くんと八重ちゃんが居酒屋を出て2人で夜道をぷらぷら歩いてる時の空気感とか(八重ちゃんが笑いながらふらふらしてる感じ)、見てて一瞬ドキッとしませんでした?
なんか、自分の大学時代を覗き見られたような感覚ですよね・・。

今クール、同じ大学生を描いたやつで「ぐらんぶる」(⇐大好き!)があるが、「ぐらんぶる」はめっちゃ面白い一方で「あるある」系共感がほぼ皆無なんですよ。
逆に、「モグラ」には共感しかない(笑)。

この差は何かな~と思ったが、要は生活臭の有無なんだろう。

これは江口先生がうまいのか、アニメ制作陣がうまいのかどっちか分からんが、とにかく画に込められた生活臭がスゴイ。
たとえば、上の画の居酒屋の壁の汚れた感じとか、こんなのは普通のアニメなら省略するところじゃん?
汚いし。
でも、このアニメはちゃんと表現してるんだよねぇ・・。
こういうところが秀逸。

いやね、江口先生ってめちゃくちゃ画がうまい人だと思うんだわ。
高校時代で、この画力↑↑ですよ?
大学は美大で、日本画を専攻していたらしい。

う~む、美大出身の女子ですか~。
もう、それだけで「個性強めの人」が確定である。
・・いや、あるいは作品の内容からして大学では民俗学の専攻をしてた系の人かなと思ってたが、そっちじゃなく純粋に画から入ってきた人でしたか。
しかしオンナノコが敢えて、あの水木しげる先生を敬愛しちゃうもんですかねぇ?

で、このての<漫画論>において私が最も信頼してるのが山田玲司先生なんだが、山田先生いわく、漫画界の系譜は「光の一族」と「闇の一族」という2つに分けられるものらしいのね。

山田玲司 代表作「Bバージン」「ゼブラーマン」

「光の一族」

・手塚治虫
・石ノ森章太郎
・藤子不二雄
などトキワ荘をルーツとするメジャー系

「闇の一族」

・水木しげる
・白戸三平
・つげ義春
などをルーツとする「ガロ」系

山田先生いわく、「光の一族」は主に実家が裕福なタイプが多く、海外からの輸入コンテンツに触れられた人たちだという。
手塚先生の場合は子供の頃の実家にフィルム映写機があったらしく(さすが医者の家系)、当時そんな家庭は決して多くなかっただろう。

一方、「闇の一族」は実家がさほど裕福でもないタイプで、どっちかというと触れられるコンテンツは日本土着のものに限定されていたようだ。
必然、「光の一族」がブルジョア的作劇だったのに対し、「闇の一族」の方はドロドロしたプロレタリアート的作劇になっていったんだね。

それが、後の「ガロ」というサブカルの萌芽に繋がっていく。

しかし、こういう「ガロ」文化が興隆したのは主に70年代の話である。
言っちゃ悪いが、江口先生はまだ生まれてもいない。
だからタイムリー世代でも何でもないのに、なぜか江口先生は明らかに「闇」の方に惹かれている。
それは前述、同世代の西尾維新先生もまた同じくである。

うむ、これは江口先生も西尾先生も<1995年>を何歳で迎えたかがポイントだと思うよ。
<1995年>、年が明けるとともに阪神大震災が起き、さらにオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きた、あの忌まわしい年のことさ。
あの年で確実に何かが壊れ、その後、日本は不況の一途を辿ることになっていく・・。
その年に江口先生は12歳、西尾先生は14歳である。
多感な時期だよね。

そんな時期にテレビをつけたら「ドラゴンボールZ」とかやってて、

「おら、ワクワクすっぞ!」

とか言ってるんだが、いやいや、そんなワクワクする空気じゃねーし()。

だから、こういう「光の一族」系のコンテンツに対しては一種の嘘っぽさを江口先生は感じてしまったのかもしれない。
ちなみに、「ドラゴンボール」の連載が終わったのも1995年なんですけどね。

で、1996年から始まったのが「ゲゲゲの鬼太郎」第4期なんですよ。

「オバケは死なない、試験も何にもない」

うむ、この時代の空気感は「ワクワクすっぞ!」という悟空より、鬼太郎の飄々とした佇まいの方が逆にしっくりきたのかもしれないね。
ましてや、この第4期って「ドラゴンボール」の監督だった西尾大介さんが監督やっていて、結構好評だったんです。
当時、江口先生は絶対これ見てたと思う。

うん、やっぱ落ち込んだ時代には、ブルジョア系よりプロレタリアート系の方が効くのよ。

<ブルジョア系>

科学の時代です!テクノロジーの時代です!愛は世界を救う!

手塚治虫

<プロレタリアート系>

人間、いつか必ず死ぬよ・・この世の中、科学じゃ分からんこともあるよね

水木しげる

・・で、江口先生はプロレタリアートの方にシンパシーを感じたんだろう。
「光」ではなく、「闇」に惹かれたんですよ。

そういう流れを踏まえた上で「出禁のモグラ」を是非一度ご覧になってみてください。

すると、例の「貸本漫画」っぽい作画、さらに擬音を視覚化した表現、それらの全部が綺麗に繋がってくるから。

あともうひとついうと、このアニメの特徴は切り方である。
普通、アニメってのは次週視聴に繋げる為、ヒキを作るもんでしょ?
ところが、本作はそれがないに等しい。
会話の途中でぶちっと切って、次週に会話の途中から始めるとか、ね。
これは非常に珍しい作りだと思う。
「おら、ワクワクすっぞ」的な、ブルジョア商法(?)の真逆をいっているといってもいいかと(笑)。

いや~、面白い。

おら最近「出禁のモグラ」にワクワクすっぞ?


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