「薬屋のひとりごと」で毒の耐性をつける
今期放映のアニメの中で、「葬送のフリーレン」と並んで話題となってるの
が「薬屋のひとりごと」である。
とにかく原作が鳴り物入りだ。
【ラノベ累計発行部数ランキング】
①とある魔術の禁書目録・・・3100万部
②転生したらスライムだった件・・・3000万部
②ソードアートオンライン・・・3000万部
④魔法科高校の劣等生・・・2200万部
⑤涼宮ハルヒシリーズ・・・2000万部
⑤スレイヤーズ・・・2000万部
⑦薬屋のひとりごと・・・1800万部
この原作小説、とんでもないベストセラーじゃないか!
ちなみにこれは昨年夏集計のデータなので、今はもっと順位を上げているかもしれん。
というか、もうとっくに2000万は超えてるはずだ。
しかし上位の「とある」「転スラ」「SAO」「魔法科高校」「ハルヒ」「スレイヤーズ」、全てテレビアニメ化はもちろんのこと、劇場版まで制作されてる大ヒット作ばかりじゃん。
そんな中、なぜ今まで「薬屋のひとりごと」だけがアニメ化されてなかったのかが不思議なほどである。
そして不思議なことといえば、もうひとつ。
この小説は既にコミカライズされてるんだが、驚いたことに「ビッグガンガン」と「サンデーGX」の両誌で並行して連載されてるという。
漫画家が違うとはいえ、全く同じ内容の作品が、である。
こんなおかしな話はあるまい。
何か契約がこじれてそうなったとしか思えんのだが、まぁそうなってしまうほどに魅力的な原作だったとでもいうべきか。
きっとアニメ化に際しても、これまで色々あったんだろうなぁ・・。

で、世紀の鳴り物入りというべき今回のアニメ化、さすが気合いが入ってるね。
作画は美しくて完璧。
ただ唯一難をいうなら、時々デフォルメの絵を使ってたのがダサかった。
いまどき、キャラの頭身が変わるような懐かしい表現法を敢えてやるんだ、と少し驚いたほどさ。

割と男子はデフォルメを嫌う傾向にあり、逆に女子は好む傾向にある。
この古臭いデフォルメを見る限りだと、この作品は少年誌掲載であっても
女性向けなのかもしれないね。
まあ、そんなに多くなかったからよしとしようか。
声優については、主演に悠木碧をもってきたあたりが実にうまい。
私が思うに、今日本で最も巧い声優さんのひとりが悠木さんだと思うから。
いわゆる清楚可憐系(早見沙織など)のキャラではないが、そっち系以外なら何でも役をこなせるし、役者肌の天才でしょ。
女優でいえば、満島ひかりや二階堂ふみのイメージに近い。
今回の役柄でも、敢えて低い声域を使って完璧にこなしている。
いや~第3話、さっそく泣いたわ。
音楽もいいし、「フリーレン」と並んで今期の覇権アニメになるのは間違いないだろう。

さて、こういう系統の作品を中華風ファンタジーというのだろうが、今までもこのてのやつは色々あったよね。
「十二国記」「彩雲国物語」「暁のヨナ」「精霊の守り人」「ふしぎ遊戯」など、総じて女性向きというイメージが私にはある。
ちなみに私は、上記のうち「暁のヨナ」と「ふしぎ遊戯」はあまりにも少女漫画臭が強すぎて気持ち悪くなり、早々にリタイヤしてしまった。
やっぱ、イケメンが顎クイする系のやつって男は生理的にダメだわ・・。
「彩雲国物語」ですら結構きつかったもん。
その点、「薬屋」はヒロイン自身が顎クイ系に寒気のするタイプなので助かった。
こういう中華風というのは、男子なら「キングダム」「三国志」など戦記物にいくんだが、女子の場合は意外と宮廷舞台が好きだよね。
やっぱ、貴族とか皇子とかに憧れがあるのかな?
宮廷は戦場のようにドツキ合いのバトルはないまでも、水面下の静かで陰湿なバトルが日々あるみたいだけど。
食事に毒を盛るなど珍しいことでもなく、現代のような捜査技術もないから下手人が捕まることも少ない。
悪い奴ほど利を得る時代じゃないか。
そもそも、「薬屋」のヒロインは人身売買組織に誘拐されたから後宮に来たわけで、つまり宮廷は組織を罰するどころか、賃金を支払ってるわけよね。
酷い話である。
いや、こういう理不尽がまかり通る時代だからこそ、ドラマになるんだが。
しかし女子が中華風ファンタジーを好むのは、やはりイケメン度が高いからだと思う。
中国の貴族ってやつは、何か妙に妖艶なんだよね。

これは中国の時代劇を演じた俳優さんたちなんだけど、日本のそれと比較しても妖艶さが桁違いでしょ?
ロン毛率が高く、いかにも女子が好きそうな感じ。

一方、これは日本で最もポピュラーな宮廷ロマンス劇の「源氏物語」なんだが、これを見て女子が「きゃ~光源氏ステキ~」と悶えるかというと、やや微妙である。
なんか中国の宮廷物と比較すると、地味にさえ感じるし。
正直、宮廷ロマンス劇というジャンルで中国に勝てる気はせんわ。
ただ「薬屋」のいいところは、敢えてロマンスを抑えめにしてあるところである。
甘ったるいのが苦手な男子とすれば、そういうのはむしろ見たくないし。
少し気になるのは、OPでは猫猫が化粧をして妖艶になってることだな。

本編との違和感がエゲツないんだが、やっぱりこれって伏線なの?
なんか気になるわぁ。
この猫猫は、幼少より花街で育ったという。
色恋メインの女社会で育ち、これまでその美しさも醜さもたくさん目にしてきたことだろう。
第4話では彼女が梨花妃にパイズリを伝授してたっぽい描写があったので、さすが花街育ち、そっちの知識も豊富にあるみたい。
彼女のようなオタク気質は花街ではさぞ異物だっただろうに、不思議と彼女は遊女たちからめちゃくちゃ可愛がられてたような描写があった。
何となく、そこは理解できる気がするよ。
ああいう典型的な女社会の中で、猫猫みたく少年のように純粋なオタク気質を維持してる女の子というのは、逆に尊いんだよね。
ある意味で、主人公としては王道かもしれない。
少し思い出したのが、「赤髪の白雪姫」だ。

これは典型的な少女漫画ではあるものの、主人公の白雪がストイックに薬学を極めていく姿勢が見てて心地よく、私は好きな作品だ。
私の「薬屋」のイメージは、「赤髪の白雪姫」と「後宮の烏」を足して2で割った感じかな。

「後宮の烏」も後宮を舞台にした謎解きの探偵物で、めっちゃ良かったわ。
思えば宮廷ミステリーというジャンルって、中国ドラマではやたらと多いんだよね。
だから女性層には決して目新しいものじゃないだろうが、「ビッグガンガン」や「サンデーGX」で「薬屋」のコミックスがやたら売れてるという話を聞くに、少なくとも男性層には目新しかったんだよ。
私は前々から思ってたんだ。
女性は少年誌のような男性向けコンテンツにズカズカと土足で上がってくるのに対し、男性は女性向けコンテンツに対してやや及び腰だよな、と。
「薬屋」が女性向けコンテンツとはいわんが、少なくともそっち系への導入の先鞭となり得るテキストなのは間違いないだろう。
「薬屋」を面白いと思った男性は、次に「後宮の烏」へ。
「後宮の烏」でもいける感触を掴めば、次は「赤髪の白雪姫」へ。
そうやって徐々に男性たちが女性向けコンテンツの毒への耐性をつけていけば、ゆくゆくは「カードキャプターさくら」ぐらいまではいけるんじゃないだろうか。
多くの男性たちが「さくら、怪獣じゃないもん!」のモノマネをできるほどになれば、このミッションも完了である。

