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「BLOOD」を生んだ押井塾とは何だったのか?

今回は、「BLOOD THE LAST VAMPIRE」について書こうと思う。
これは2000年の劇場公開作品だけど、ひとつ興味深いのは、この作品が当初一般公開される予定がなかった、とされていることである。
一般公開される予定のない映画?なんやそれ?と思うよね。
うん、実はこれ、「押井塾」で塾生たちの提出課題作品として作られたものなのよ。
あ、まず押井塾が何なのかを説明すると、押井守が若手育成の為に企画したセミナーのようなもので、Production I.Gが仕切ったらしい。
実際その塾で何が行われてたかというと、塾生はひたすら企画書を書かされてたとやら。
押井さんにお題を出されて、皆はそのお題に沿った企画を考える⇒提出する⇒押井さんに酷評される、というのをひたすら繰り返してたらしい。
で、その企画の中のひとつが、「BLOOD 」だったわけさ。
この企画を作ったのが、神山健治と藤咲淳一。
いわば大学のゼミの卒論みたいな感じで、この作品の制作はスタートしたんだろう。

こういう言い方はあれだが、たかだかセミナーの提出課題である。
なのに、いざ作るとなるとスイッチが入っちゃうのかねぇ・・。
塾外から、黄瀬和哉や北久保弘之までも制作メンバーに入ってきた。
本来なら脚本を書いた神山さんが監督をすべきだったんだろうが、どうやら彼は塾以外でも「人狼 JIN-ROH」の演出を押井さんにやらされてたらしく、スケジュール的に無理っぽいので監督は北久保さんに。
そうそう、皆さんはこの「人狼」見たことある?
これは押井さん原作・脚本の映画なんだけど、また凄い名作なんだわ。
かつて「パトレイバー」劇場版で見せた警察機構のシリアス路線を、さらに2倍ぐらいシリアス度を増幅させた感じのハードボイルドな作風である。
「毎日映画コンクール」では、99年の最優秀アニメ賞を受賞。
この作品を見たことある人は分かると思うけど、硬質な雰囲気が「BLOOD」に酷似してるんだよね。
というより、これをテキストにして「BLOOD」は作られたんじゃないかな?

2018年、韓国がこれを実写化している

この「人狼」は「Production I.G最後のセル撮影アニメ」とされたのに対し、「BLOOD」の方は「Production I.G初のフルデジタルアニメ」とされている。
そしてその出来は素晴らしく「やっぱ劇場公開しよう」となり、結果的には00年の文化庁メディア芸術祭で大賞を受賞。
さらにアニー賞(米アカデミー賞のアニメ版)にノミネートされるなど、各方面で絶賛されることとなった。
これを見たクエンティン・タランティーノが影響を受け、映画「キルビル」で「BLOOD」をオマージュした女子高生キャラを投入。

本当は柴咲コウにオファーしたらしいが断られ、次点で栗山千明に

今となっては、「人狼」より「BLOOD」の方が有名なんじゃないかな?
「BLOOD+」「BLOOD-C」などシリーズ化までされたし。
ちなみに、これらのシリーズ作品に藤咲さんは関わってるけど、神山さんは関わってないらしい。
「BLOOD」制作後はすぐに、「攻殻SAC」や「東のエデン」で忙しくなっただろうからね。
押井さんいわく、神山さんは押井塾の「級長」なんだそうだ。
愛弟子といったところだろうか。
彼は押井さんへの忠誠心が非常に強いというか、師匠の依頼ならどんなクソみたいな仕事でも引き受けてしまうところがあるんだよね。
その一例が、押井さんプロデュースの実写映画「真女立喰師列伝」の仕事である。
この映画はほとんど押井さんが個人的趣味でやったような企画で、全6編のオムニバス形式なんだけど、そのうちの1編で神山さんが監督・脚本・主演という3役をムリヤリやらされてるのよ。

「真女立喰師列伝」に主演させられた神山健治の勇姿ww

これ、何かの罰ゲームだったんだろうか?
まるで嫌がらせかのように、この作品は東京国際映画祭、ベルリン国際映画祭に出品されたらしいぞ(笑)。

さて、ここで押井守の話を少ししておきたい。
前述の「人狼」についてだが、これは明らかに政治色が強くて、一種の国家体制批判ともとれる作風である。
いわゆる「社会派」というやつか。
私が思うに、押井作品というのは大体4つのグルーピングができると思うのよ。

【社会派作品群】痛烈な社会批判、国家体制批判を作品に込めている
・人狼
・GHOST IN THE SHELL
・劇場版パトレイバーetc

【文学派作品群】難解な芸術志向、やや宗教色がある
・天使のたまご
・イノセンス
・スカイクロラetc

【エンターテイメント作品群】原作を独自に解体する傾向にある
・テレビ版うる星やつら
・テレビ版パトレイバーetc

【クソ作品群】見るに値しないレベル、趣味で作った駄作
・「立喰師」シリーズ
・ぶらどらぶ
・実写映画全部

これ、ジブリの鈴木敏夫も役者として出てるww

この中で特に問題にしたいのが、3つめの「クソ作品群」である。
「ぶらどらぶ」を、このグループの中に入れさせてもらった。
これ、見たことある人いる?
まだ見てないという人は、見ないで下さい。
時間をドブに捨てることになるから。
「何で押井さんは、こんなクソアニメを作ったんだろう?」と疑問に思った人も多いはずだ。

実をいうと、これには元ネタがあるわけよ。
それは押井さんが過去に撮った実写映画、「血ぃともだち」である。
困ったことに主演女優がいわくつきで、あの唐田えりかなんだわ。
例の東出昌大(杏の旦那)と不倫してた子。
運悪く、この映画を撮った後になって不倫が発覚して、ずっとお蔵入りになってた映画らしい。

で、なぜか押井さんはこのお蔵入り映画のアニメ化をしちゃったわけよ。
なぜ、そういうことをしたのか、詳しい事情は分からん。
ただ、「血ぃともだち」の中にあったアニメパートをまるごと転用してたのを見るに、おそらく「低予算」というのが制作の最優先事項だったんだろう。
「血ぃともだち」のアニメ部分と台本を使い回せば手っ取り早くて安上りだよね、と。
しかし「ぶらどらぶ」の監督は西村純二さんで、この人は「true tears」とか名作をたくさん作った大御所だぞ?
個人的に押井さんと友達だからムリヤリ頼まれたんだろうが、とにかく監督も脚本家もお爺ちゃんだからセンスが古くてギャグが寒いし、見てるとマジで辛くなってくるよ・・。
くれぐれも、絶対見ないでね。

「ぶらどらぶ」

で、こういう「クソ作品群」を見て、「ああ、もう押井守はダメだな・・」と考えるのは少し違うと思う。
というのも「ぶらどらぶ」の押井+西村コンビは、その後に「火狩りの王」を作ったんだけど、こっちの方は見違えるように完成度高いからね。
そう、これは押井さんなりの「緩急」なんだ。
なぜ、彼は敢えて駄作を作るのか?
そのヒントは、彼と同じく国際的に「巨匠」と呼ばれるビートたけしにあると思う。

この人も欧州に行けばもはや神様扱いなんだが、どうも本人的にはそういうのが苦手らしく、彼は敢えて自分を茶化して「こんなしようもないオッサンなんですよ」アピールをするでしょ。

こういうのって、一種の照れ隠し?
凡人である私にその心境までは推し量れないが、巨匠は巨匠なりにバランスをとってるんだと思う。
そして、このビートたけしの悪ふざけと同じ意味を持つのが、押井守のクソ作品の数々ではないのか。
「俺、巨匠なんて呼ばれてるけど、見て見て、こんなクソつまんない作品をまた作っちゃったよww」と妙に嬉しそうな押井さんの顔が浮かぶんだよね。

押井さんいわく、この作品は「楽しかった」「満足」らしい

特に「ぶらどらぶ」は完全に趣味に走ってるというか、第12話で登場人物が急に映画批評を始めたりするんだが、これは明らかに映画マニア・押井守の趣味の領域。
マスターベーション見せんなよ、と思うけど、まぁ、たまにはいいか、とも思う。
とはいえ、この作品って女子高生がバンパイアという企画だし、考えるまでもなく「BLOOD」のセルフパロディってことだよね?
「押井塾」の作品を、自ら茶化して笑い飛ばしてしまうという暴挙。
全然「らぶ」じゃないじゃん(笑)。
こういうところ、好きやわ~。
まぁ「ぶらどらぶ」はともかくとしても、「BLOOD-THE LAST VAMPIRE」はお薦めです。
私は「BLOOD+」や「BLOOD-C」よりも、原典の「THE LAST VAMPIRE」が一番好き。
付け加えると、「人狼」もお薦めです。

海外作品だが実写化もされている「BLOOD」
「人狼」は、第二次世界大戦でドイツに占領支配されたという架空の日本を舞台とした物語である


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