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アニメは『点』で見ずに『面』で見よう!「残響のテロル」

今回は、「残響のテロル」について書いてみたいと思う。
これは2014年フジテレビ「ノイタミナ」枠で放送された作品で、渡辺信一郎監督作品である。
渡辺さんといえば、「カウボーイビバップ」「サムライチャンプルー」などこれまで数々の名作を輩出してきた天才クリエイター。
今から約10年前、ある海外サイトが発表した「日本の偉大なアニメ監督」のランキングでは第3位になってたほどの人である。
そのランキングの詳細は、こちらをどうぞ↓↓

どっちかというと、評価は【国内<海外】という感じの人かな?
彼はアニメ作家であると同時に「音楽プロデューサー」という肩書もあり、今となってはどっちが本職なのかもよく分からん。
「カウボーイビバップ」以降、何度となく菅野よう子とタッグを組んできている。
もちろん、この「残響のテロル」もそうなんだよね。

「残響のテロル」(2014年)

とにかく、この作品は制作スタッフがなかなか豪華なのよ。
監督の渡辺さん、そして音楽の菅野よう子さんはもとより、

副監督・・立川譲(「モブサイコ100」「BLUE GIANT」監督)
作監/キャラデザ・・中澤一登(「B:The Biginning」「海賊王女」監督)
脚本・・瀬古浩司(「進撃の巨人」「呪術廻戦」「モブサイコ100」脚本)

という盤石の布陣。
一応、私の昔からの持論ではあるが、

「アニメは『点』でなく、『面』で見るべき」


というのがあって、たとえば渡辺監督作品を見る際、それは渡辺さん個人を見るんじゃなく、ひとかたまりの制作ユニットとして見るべきだと思うのね。
たとえばだが、<渡辺信一郎+中澤一登+フジテレビ>という組み合わせは本作だけじゃなく、「サムライチャンプルー」もそうである。
中澤さんといえば、タランティーノ作品「キルビル」のアニメパート監督として米国での人気を誇るアニメーター。
そして渡辺さんもまたハリウッド企画「アニマトリックス」の監督やってたわけだし、もはや前提からして、渡辺⇔中澤は相性バッチリと見るべきだろう。

「残響のテロル」刑事・柴崎
「B:The Biginning」刑事・キース

考えてみりゃ、中澤さんの監督作「B:The Biginning」とか、どう見ても「残響のテロル」の文脈である。
渡辺⇔中澤に共通する、ハードボイルドという世界観。
そしてこの世界観は、意外とフジテレビと相性がいい、ということをご存じだろうか?
そもそも「ノイタミナ」は「PSYCHO-PASS」を生んだ枠であり、そのプロデューサーである山本幸治さん(今はツインエンジン社長)がこの「残響のテロル」でもチーフプロデューサーなわけね。
「ノイタミナ」のアニメの特徴をひとついうと、いわゆる「アニメ文法」の作品が極端に少ないことである。
その「アニメ文法」とは何かというと、たとえばだが

・登場人物の髪の色が、ピンクやサックスブルーなどカラフル
・ヒロインが料理に失敗すると、出来上がった料理は紫色をしている

みたいな感じ。
で、「残響のテロル」でもヒロインの料理失敗シーンがあるにせよ、そこで料理が紫色になってたりとかしないのよ。
ヒロインの髪の色も、普通に黒だし・・。

ヒロインは陰キャという設定で、cvは陰キャを演じさせれば無双・種﨑敦美

でさ、フジテレビがあんまりアニメ文法を使いたがらない理由というのは、ひとつのコンテンツに対してアニメ化、実写化を併行して考えてるからだと思うんだ。
もともとこの局は「ドラマのフジテレビ」といわれてたこともあり、実写化に対しては非常に貪欲。
そして実写化が常に念頭にあるからこそ、あんまりキャラをアニメ軸に寄せすぎないように気をつけてるんだと思う。
「残響のテロル」も、豊川悦司あたりを柴崎役にして実写化するのでは?と思ってたが、なぜか中国政府が本作を「有害アニメ指定」したという報道が広まり、こりゃさすがに映画化の話は消えただろうね・・。

ナイン(左)とツエルブ(右)

さて、上の画のふたりが本作の主人公・ナインとツエルブ。
このふたりの雰囲気を見て、何となく私は90年代フジテレビの人気ドラマを思い出しましたよ。

「NIGHT HEAD」(1992年)

はい、若き日の豊川悦司と武田真治が主演してた「NIGHT HEAD」だね。
これ、プロットが割と「残響のテロル」に似てるんだ。

①幼い子たちが組織に監禁され、謎の実験の被験体とされる日々
②ある日、2人が組織を脱走
③2人は素性を隠しながら、能力を使って組織に抵抗


大体、どっちもそんな感じの話。
物語の完成度としては、圧倒的に「残響のテロル」の方が上なんだけど。
あと、多分これの元ネタは「NIGHT HEAD」以外にもうひとつあり、それは70年代日本映画の名作「太陽を盗んだ男」です。

「太陽を盗んだ男」(1979年)

これもまた、テロリストが原発からプルトニウムを盗んだ系の物語。
他でもなく、渡辺監督はこの映画を「マイフェイバリット映画10選」のうちの1本に挙げてます。

という感じで、とにかく本作は色々なエッセンスが融合してるわけよ。

・70年代ハードボイルド映画をベースにした渡辺信一郎の作家性
・山本幸治プロデューサーのフジテレビ的カルチャーの引き出し
・中澤一登の硬質なキャラクターデザイン
・菅野よう子は、今回アイスランド風の劇伴という新たなアプローチ


やはり相性が良かったというべきか、これらの要素が実にしっくり融合してたと思う。
もともと、このての刑事ドラマとフジテレビの相性は抜群にいいのさ。
なんせ、「踊る大捜査線」を大ヒットさせたところだから。
そもそも「踊る大捜査線」の物語の大筋って、

巨悪の味方につく警察上層部        vs巨悪を倒そうとする現場の刑事たち

という感じだったでしょ?
いやいや、「残響のテロル」そのまんまのプロットじゃん?

まさにこれ、フジテレビ的カルチャーの集大成とでもいうべきアニメかもね。

「残響のテロル」のモニター監視システム
「踊る大捜査線」のモニター監視システム

さて、あとひとつ本作で注目してほしいところは、この作品の制作会社がMAPPAだということ。
まずはMAPPA設立の経緯について知っておいてほしいんだが、これは2011年のこと、老舗マッドハウスが経営不振から日テレの子会社になってしまい、そこの社長だった丸山正雄さんが新たに作った会社がMAPPAなんだね。
もともとは、引退して隠居する予定だったという丸山さん。
ただ、彼はどうしても片渕須直の企画「この世界の片隅に」映画化を実現したい想いがあったみたいで、ほぼそれだけを目的にしてMAPPAを作ったらしいのよ。
ところがひとつ誤算だったのは、この丸山さんが異様なほど人望ある人で、「丸山さんが新会社作った」という一報が業界を巡るや、みんな続々と丸山さんのところに「俺たちも一緒に仕事をさせて~!」と寄ってきたのよ。
「いやいや、本来、この会社は片渕君の映画を作る為に・・」と丸山さんも最初は渋ってたんだろうが、多分、皆の圧にやられたんだろうね。
なんせ、中にはこんなコワモテの奴↓↓もいたんだから・・。

渡辺信一郎

で、気がつけばMAPPAの記念すべき第一回作品は「この世界の片隅に」ではなく、なぜか渡辺信一郎監督作「坂道のアポロン」になってたのよ(笑)。
さらにその2年後、矢継ぎ早に「残響のテロル」が完成。
この時点で、まだ「この世界の片隅に」は完成してません・・(笑)。
とにかく、なんか怒涛のように渡辺さんは2本の作品を作り、そのまま怒涛のようにMAPPAを去っていったそうだ。
でも、よく考えたら渡辺さんって、「カウボーイビバップ」の時もちょうどBONESがサンライズから独立するというドタバタのタイミングで作ってるんだよなぁ・・。
あの作品、クレジットは一応「サンライズ制作」になってるけど、実質は「BONES制作」だからね?

つまり渡辺さんは、敢えて会社サイドの予算が甘い時期を付け狙って、自分が作りたいものを好き放題に作るという、一種の確信犯なんじゃないの?


ちなみにだけど、「サムライチャンプルー」もまたサンライズから独立したばかりのマングローブに彼が乗り込んで作ったものらしく、案の定、これがマングローブ第1回作品になったという。
なるほど、

ようするに渡辺信一郎って、バージンキラーということよね?


エロい人やなぁ・・。
まぁそうはいっても、この人の作る作品はほぼ例外なく面白いんですよ。
今回ご紹介した「残響のテロル」もマジで面白いので、もし未見の方がいらしたら是非ご覧ください。


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