見出し画像

どう考えてもこれ、「攻殻」の原型だよね?「ダーティペア」

今回は「ダーティペア」について書いてみたい。

これは、1985年にテレビ放映されて人気を博したシリーズである。

TVアニメ「ダーティペア」(1985年)

制作/サンライズ

制作はサンライズ

80年代サンライズといえば「ガンダム」等でイケイケな時期だったと思うが、「いつまで巨大ロボットばかりもなぁ・・」という思いもあったのか、ちょっとお色気路線にも手を出してきたという流れ。

思えばこの当時、アニメ界ではお色気がひとつのキーワードだったのよ。

「うる星やつら」(1981年)

制作/スタジオぴえろ

「キャッツアイ」(1983年)

制作/東京ムービー

「うる星やつら」におけるラムちゃんのビキニ、また「キャッツアイ」では三姉妹のレオタード・・。
それまで女児向けアニメを除けば「主人公はオトコ」という時代に、露出度高めのオンナノコを主人公に据えるのがひとつのトレンドになってたのかもな。

で、「ダーティペア」の原作は高千穂遥の小説シリーズである。
この時代、まだ「ラノベ」という概念はないわけだが、まぁラノベの元祖的位置づけといってもいいのかもしれない。

小説家/高千穂遥(1951年生まれ)

高千穂先生はこの「ダーティペア」で星雲賞を2度も受賞(短編賞/長編賞)しており、つまり、この作品はライトに見えて実は本格SFだということを最初にご理解いただきたい。
ナメたらいかんよ?
なんせ、前提がサイバーパンクだから・・。

女性エージェントが企業、軍などの陰謀を暴いていくプロットはほぼ「攻殻機動隊」と同じで、むしろ、「攻殻」の原型が「ダーティペア」だといっても過言ではない気がする。
・・思えば、高千穂先生は押井守と同じ1951年生まれで、この世代の人たちというのはどこか共通した匂いがある(笑)。
押井さんは、後に「ヘッドギア」というクリエイター集団の中で名作「パトレイバー」を作ったが、それよりもっと前に動いてたのが高千穂先生の方で、彼が中心となったクリエイター集団が「スタジオぬえ」である。

「スタジオぬえ」メンバー(右端が河森正治)

「スタジオぬえ」といえばどうしても河森正治、および「マクロス」の印象が先立つだろうが、いや、河森さんあたりは「ぬえ」第2世代の人ですからね。
第1世代、つまり初代は高千穂先生たちの方なんですよ。
考えてみりゃ、後のガイナックス(ルーツは大阪のサークル)は「ぬえ」のコンセプトを倣った存在だともいえるわけで、やはり高千穂先生が日本サブカル界に与えた影響は大きかったと思う。

特に彼が注目を集めた要素は、オタク系の「論客」としてである。
中でも有名なのは、先生の「ガンダム批判」だろう。

まず、高千穂先生が「ガンダム」視聴後のアンケートに答えてるわけだが、これがもう辛辣で・・(笑)。

<アンケートの質問項目>

<高千穂先生の回答>

どんだけ「ガンダム」ディスるねんww


・・いや、誤解のないように言っとくが、「ぬえ」は「ガンダム」の制作にもきっちり携わってるんですよ?
それでいて、このディスり方・・(笑)。

で、後に月刊「OUT」という誌が、富野由悠季vs高千穂遥の「SF論」対談というのを企画したらしく、80年代当時、かなり話題を呼んでいたらしいぞ。

伝説のアニメ誌/月刊「OUT」

なお、私はその富野vs高千穂の対談記事を読んだことないし、実際に御二人がどういう議論をしてたのかは知らん。

ただ、高千穂先生いわく「ガンダム」が当時「リアルロボット」を標榜し、科学的に矛盾のない描写を志向してるというコンセプトに対してツッコミを入れた、とのこと。
おいおい、全然矛盾があるぞ、と。

いや、高千穂先生自身はアニメ/漫画に科学的矛盾があることなんて百も承知の人で、そこを否定するはずがないんですよ。
だって、先生は永井豪先生の大ファンで、ファンクラブの幹部をやってたというほどの人なんだから・・(笑)。
そもそも「キューティハニー」の「空中元素固定装置」(ハニーの変身能力の理論体系)なんて、あれとかエセ科学の代表格みたいなものじゃん?

空中元素固定装置・・空気中の元素(炭素等)を固体化するテクノロジー?

でも、この時代にイケイケだった富野由悠季に対して正面きって噛みついた人って、高千穂先生ぐらいだったんじゃない?
ましてや、先生は富野さんより10歳ほど年下なんだよね。
このへんのクソ度胸、なんか逆に怖いわ(笑)。

なお、この御二人は別に喧嘩したわけではなく、高千穂先生と「ガンダム」スタッフはその後もいい関係を築けているようなのでご安心ください。

今年に開催された対談企画(左から大河原邦男、高千穂遥、永井豪、安彦良和)

さて、そろそろ「ダーティペア」に話を戻しましょう。

まず、この「ダーティペア」において、ひと際目につくのがOPのカッコよさである。
それまでのサンライズ作品はOPが男性ボーカルで、妙に艶のあるバリトンで「もえあがーれー♪もえあがーれー♪」みたいに唄う「分かりやすさ」が優先されてたと思うのよ。
まぁ、分かりやすい歌だからコドモもすぐ覚えられるという利点があるものの、言っちゃ悪いけど、かなりダサい・・。
その点、「ダーティペア」は違ったんだ。

たとえば、劇場版「ダーティペア」のOP↓↓

めっちゃカッコいいでしょ?


・・そう、後にサンライズは「カウボーイビバップ」でカッコよさの極致を極めるんだが、その原型といえるものは既に「ダーティペア」の中にあったんだ。

あと、TVシリーズのOPを唄ってたのが中原めいこさんで、これがまたイイ感じなのよ。

この中原さんという人は「アイドル」ではなく、いわゆる「学園祭の女王」的立ち位置にいた感じの人だったかと。
そういう意味では、それまでの「アニソン」のカテゴリーにはいなかった人だな。

中原めいこ/代表曲「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」

こういうところからして、なんか80年代アニメとしては妙にスタイリッシュだったと思う。

で、ストーリー的には未来版「あぶない刑事」という感じだが、それを女子のバディ物にしたところが秀逸。
ちなみにですが、ヒロインのケイ&ユリのモデルはこれ↓↓ですよね。

クラッシュギャルズ

多分、

ライオネス飛鳥⇒ケイ 長与千種⇒ユリ

ということなんでしょう。

なんかね、なぜか80年代は女子プロレスが人気でして・・。
いや、厳密にいうと男子のほとんどは興味なく「誰得?」とさえ思ってたんだが、なぜか女子には人気あったんですよ。

そういや、私が生まれて初めて女子の家に遊びに行って、部屋に上がらせてもらった際、その部屋には女子プロレスラーのポスターが大量に貼られてたの見て、一気に何かが萎えたのを思い出しました・・。
小学校時代のちょっとしたトラウマです。
今でもライオネスの顔を見た瞬間、驚くほどピタッと萎えますけど?

まぁ、それはともかくとして、アニメ「ダーティペア」はめっちゃ面白いですよ。
基本、1話完結スタイルでそこに連続性は全くないし、どこから見始めても大丈夫なやつなんだが、最も見応えがあるのは次の3つ。

OVA「ノーランディアの謎」(1985年)

劇場版「ダーティペア」(1987年)

OVA「謀略の005便」(1990年)

この3つは、ちょっと別格ですね。
これらを未見の方でなおかつ視聴環境がない方は、

「ノーランディア」⇒「Dirty pair Affair of Nolandia」
劇場版⇒「Dirty pair movie」
「005便」⇒「Dirty pair flight 005 conspiracy」

というワードでYouTubeを検索し、ご覧になってみてください。

特に「攻殻」や「パトレイバー」が好きな人は絶対気に入ると思いますよ?

基本、これは主人公最強系である。

主人公ふたりはパッと見アホっぽく感じるが、実は超敏腕エージェントで、敵に出し抜かれるなどがほとんどないといっていい。
草薙ばりのキレ者である。
ただ、仕事のやり方が荒っぽいのが玉にキズというか、彼女たちが去った後は常に瓦礫の山(笑)。
よって「ダーティペア」と呼ばれてるんだが、それはあくまで蔑称で、正式登録名称は「ラブリーエンジェル」らしい(誰もそう呼ばないけどw)。

でね、この作品はいかにも80年代っぽい作画がいいんですよ。
ちなみに上の画は劇場版のやつなんだが、これは監督がアクション物に定評ある真下耕一さんだけに、特にいい。

なんていうかさ、今はデジタルアニメに移行してるからエフェクトがとても簡単なんだけど、この時代はまだセル画ですよ。
だからホント、作画そのもので魅せなきゃしようがない時代。

いまどきのデジタルエフェクトって、やっぱ化学調味料/合成着色料みたいなもんじゃないですか。
でもセル画のアニメって、常にオーガニックな素材なのよ。
そういう条件の中でも魅せていこうという創意工夫があり、それが逆に味となってるんだよね。

よく作画厨のアニメファンほど古いアニメばかりを見てるのって、多分そのへんなんだろうなぁ・・。
食通ほどオーガニックがお好き、といったところだろうか?
なんか、少し気持ちが分かる気がする。

あと「ダーティペア」の魅力は、SFファンも納得させるディテールというのがあるだろうね。
ちょっとした設定に、科学知識のある人ほど琴線に触れてしまうものが必ず仕込まれてるんです。
このへんは、

さすが、富野さんに噛みついた論客だけのことはあるわww

とはいえ、全く科学知識のない人でも十分に楽しめるのが「ダーティペア」の真骨頂である。
難しく考えず、楽しんでもらえればいいさ。

何にせよ、この作品が後世に与えた影響はデカいと思うよ?


いいなと思ったら応援しよう!