ゲロを吐いても愛されるヒロイン、「銀魂」
今回は、「銀魂」について書きたい。
実をいうと私は原作を読んだことがなくてアニメでしか知らんが、アニメを見た感想としては、どこか懐かしさのようなものを感じさせる作風だった。
イメージとして、ドリフとひょうきん族を足して2で割った感じ。
少年ジャンプではギャグ漫画に関してもっと前衛的で尖ったものもあった気がするけど、少なくとも「銀魂」はそっち系ではないみたい。
私は、こういうの結構好き。
だけど原作者は、ギャグ漫画とストーリー漫画のどっちをやりたかったんだろうね。
ストーリーの方については「この設定、どう考えても後づけだろ」と思えるのが後半にたくさん出てきて、最後はスケールを広げすぎて収拾つかなくなってるようにも感じたけど。
個人的には、下町人情コメディをベースに、少しだけシリアスを挟む前半のバランスが最高だっただけに、後半にいきなりスターウォーズっぽい展開になったのは少し残念だった。
それでもまぁ、面白かったんだけど。
これは基本、ストーリーよりもキャラを楽しむ作品だと思う。
この原作者はきっと服飾デザインに造詣が深いんだろうが、キャラの衣裳が妙にカッコいいんだよね。



ファッション的観点で、これほどカッコいい作品はあまり見たことがないぞ。
特に月詠さん、いいなぁ・・。

そして、この作品で何よりもドギモを抜かれたのがヒロイン・神楽である。

彼女は常に赤いチャイナ服を着用し、喋る時は必ず語尾に「アル」をつける。
驚くのは、そこまで徹底して中国人キャラを貫きつつ、実は中国と何の関係もないということだ。
だって、彼女は地球人じゃないんだから。
じゃ、なぜ中国人風なのかというと、実はよく分からん。
おそらく、この作品が売れる為のマーケティングじゃないだろうか。
キャラを中国人っぽくした「ドラゴンボール」は爆発的に売れたわけで。
思えば神楽は悟空と同様に戦闘民族で、覚醒するとめっちゃ強くなる設定。
うん、売れる法則を過去作からパクったんだんだね。
思えば登場人物の多くがサムライなのも、「るろうに剣心」からパクってるように見えるし。
唯一オリジナリティを挙げるなら、ヒロインが下品極まりないということだ。


これほど下品であっても、神楽というキャラが可愛いのはなぜか。
おそらく、それは声優を担当した釘宮理恵に頼る部分が大きい。
実写版で橋本環奈があれほどビジュアルを完璧再現できてたのに、それでもイマイチ可愛くなかったのは声の問題である。
よくアニメの作中で銀ちゃんが「声優の無駄使い」と言っていて、おそらくこれは釘宮さんほどの人気声優がツンデレ要素ゼロの神楽のような汚れ役をやるのはもったいないという意味だろうが、しかし逆に釘宮さんなしには「銀魂」のアニメにおける成功はなかったと思う。
それほどに、釘宮神楽は魅力的なキャラだったわけで。

アニメでは画面をこの静止画にして、万事屋キャスト3人がトークをするという技法を何度も何度も繰り返していた。
この尺稼ぎによって、アニメーターはめちゃくちゃ助けられたことだろう。
そしてこの3人の掛け合いの中でも、釘宮さんの巧さは抜群だったと思う。
基本は銀ちゃんと新八で会話を成立させ、そこに神楽がちょいちょい割り込むスタイルなんだが、この割り込みがホントに巧い。
まるで熟練のトリオ漫才みたいな完成度で、いつも感心しながら聴いてたよ。
実写版でもアニメのパロディとして小栗旬・菅田将暉・橋本環奈で静止画トークしてたんだけど、これを見ると俳優3人のトークがあまりにも酷く、いかに声優3人のトークが巧かったかがホントによく分かった。
声優といえば、攘夷四天王の配役が見事だったね。

坂田銀時・・杉田智和(涼宮ハルヒの憂鬱)
桂小太郎・・石田彰(エヴァンゲリオン)
坂本辰馬・・三木眞一郎(化物語)
高杉晋助・・子安武人(ジョジョの奇妙な冒険)
この4人の重鎮は、いまや名脇役四天王って感じ。
主演の杉田さんは低音が魅力のダンディ系なんだけど、一方で覇気のないキャラを演じることも得意としている。
オッサン声なのに「涼宮ハルヒ」のきょん役に抜擢された理由はそこなんだろうが、この銀ちゃんもまたハマリ役だったと思う。
そして、石田彰と子安武人。
クセのあるこのふたりはいまや悪役界の大御所だが、ふたりともキモいんだよね。
今の若手声優で、このふたりのようなヌメっとした独特の湿感のあるキモさを出せてる人は見たことがない。
「異世界おじさん」なんて、子安氏のキモさを前提にしなければ絶対成立しなかった企画だと思うし、これは異世界物の変化球として近年稀に見る怪作だったよ。
さて、この「銀魂」、海外でのウケはどうなんだろうか?
「NARUTO」「BLEACH」「鬼滅の刃」「るろうに剣心」など、こうした和風テイストのアニメは、ほぼ例外なく海外でヒットしている。
じゃ、「銀魂」はどうなのか。
これが正直、ヒットしてるという話をあまり聞かないんだよね。
まあ、しようがないか。
これはギャグ作品だから、日本人にしか分からないパロディや時事ネタがあったりして、海外ではそのへんのニュアンスが伝わらないだろうし。
たとえば、作中で頻繁に出てくる「子供がまだ食ってる途中でしょうが!」というドラマ「北の国から」のパロディ、あんなの外国人が分かるわけないし。


というか、日本人でも平成生まれは「北の国から」を見たことない人も多いはずだよね。
そういう人たちが「銀魂」見て、意味を理解してるんだろうか。
まあ、かくいう私だってコロッケのちあきなおみのモノマネを見て笑ってたクチで、実際はちあきなおみという歌手の姿を見たことが一度もないんだけどね。
詳細が分からずとも、何となく雰囲気だけで笑えるものかもしれん。
あと、下ネタが非常に多いのも輸出コンテンツとしてはマイナス要素かもしれない。




テレビにも倫理規定はあるだろうに、結構攻めてたと思う。
こういう攻めの姿勢は実写版の「銀魂」にも実は継承されていて、つまらん映画だから決してお薦めしないけど、ひとつだけ笑ったシーンがあって、というのもこの登場人物が出てきたからさ。

銀ちゃんが急いで空中の敵拠点に行かなきゃならん場面で、ナウシカがメーヴェ(グライダーみたいなやつ)を銀ちゃんに貸してくれたんだよね。
ムロツヨシが「これ大丈夫なの?」と連呼してたが、確かにジブリの許可をとってたかは怪しい。
まさかナウシカが、こんなしょうもない形で実写映画化されるとは・・。
ちなみに、2作目は「トトロ」のねこバスが出てきた。
ムロツヨシはねこバスじゃないと言い張ってたが、ねこバスだった。

ともあれ「銀魂」は、こういう攻めの姿勢を含めて「銀魂」である。
テレビシリーズだけでも367話あって、完結編の劇場版もあって全部見るのはさすがにハードル高いが、これは神回とされるものだけ検索して、それをツマミ食いする視聴方法でも全然いいと思う。
ナンセンスギャグアニメの古典となる名作だからね。
視聴は国民の義務だと思う。

