戦国武将の戦術メカニズムを解説してみる
タイムリープしてみたいと思ったことはないか?
私は何度も思ったことあるし、実際、神社の階段で「ここを転げ落ちたら過去に飛べるのかな・・・」と考えたこともある。
でも、多分無理だ。
今後テクノロジーがどれほど進化しようと、百年経っても千年経っても無理だと思う。
だって、この宇宙を支配してる物理法則を完全否定する行為だし、そんなの宇宙が許すはずがない。
ただし、宇宙は「過去に行くこと」は許さなくとも、「過去を見ること」は許してくれている。
事実、夜空に浮かぶ星がそうだ。
あの星の光は、100光年離れた星ならば100年前の光ということになる。
この理屈でいうと、今100光年離れた星から地球を見れば、それは
100年前の地球が見えているということだ。
そう、理論上「過去を見ること」は可能なんだよ。
もし将来、それこそSFみたいなワープ航法が可能になったとして、また望遠のテクノロジーが千里眼並みに進化していたら、ひょっとして我々は過去の歴史を肉眼で見ることができるのかもしれないね。
そんなワープ航法なんて無理だろ、と言いたいのは分かるが、それでも私はタイムマシンよりまだ実現性があると思う。
ただし、それでもひとつ問題があって、というのも望遠鏡から見える映像がGoogleマップのような空撮なので、まず屋内は見えないし、屋外でも人物は頭頂部しか見えないだろう。
そうか~、ダメか~。
じゃ、視聴対象は約500年前の日本ということにして、ここは戦国武将の合戦を見るというのはどうだ?
だって戦なら上からの空撮でも見えるし、陣形がよく把握できる分、かえって分かりやすいかもしれないしね。
というわけで、その日の合戦視聴に今から備えて、今回は戦国武将の「陣形」「布陣」について復習しておこうと思う。
まずは、基本から。
【戦国武将の布陣の主な形】

最も有名なのは、「鶴翼」と「魚鱗」だろう。
あの関ケ原の戦いで、西軍は鶴翼、東軍は魚鱗を使ったとされている。

この両布陣の対決は、お互いの凹と凸の形がピタッとハマって、見てて気持ちいいんだよね。
萌えるわ~。
じゃ、鶴翼と魚鱗、各々の強みと弱みを見ていこう。
まずは鶴翼から。
<鶴翼の陣の強み>
・陣形がワイドに広がっている為、敵を包囲しやすい。
・広範囲の人員配置の為、ほとんどの兵士が稼働できて効率いい。
<鶴翼の陣の弱み>
・ワイド型の都合上、層の奥行きが浅いので突破されるリスクはある。
・ワイド型の都合上、最後列・大将の防衛ラインがやや薄い。
なるほど、これはハイリスクハイリターンの攻撃的戦術ということか。
皆さんはサッカーに詳しいか知らんが、FCバルセロナのポゼッションサッカー、あるいはヨハンクライフのトータルフットボールなどをイメージしてもらえばいいだろう。

実に鶴翼っぽいでしょ。
クライフは「1-0で勝つぐらいなら4-5で負けた方がいい」と言うほど点を取ることに執着したバランス悪い人なんだけど、一応サッカーの世界では史上最高の名将のひとりとされている。
じゃ、次は魚鱗の方をいってみようか。
【魚鱗の陣の強み】
・陣形がコンパクトで厚みがある為、崩れにくくてガチガチに堅い。
・後列にいくほど人員が多い構造なので、大将の防衛ラインは鉄壁。
【魚鱗の陣の弱み】
・密集している為、敵に包囲されやすい。
・厚みある陣形の都合上、外郭の兵だけが稼働し、内部中央が稼働しない。
なるほど、これは堅守速攻カウンタースタイルといったところか。
鶴翼に比べると、ややローリスクローリターンの手堅さがある。
戦は、大将の首を取られたら負けだからね。
サッカーでいえば、セリエAのカテナチオといったところか。

実に魚鱗っぽいでしょ。
イタリアはなぜか1-0の僅差で勝つことを何より喜ぶみたいで、そこはヨハンクライフと対照的である。
0封勝利は彼らの美学。
チャラいイタリア人のくせに、何でサッカーだけはこんな堅実でクソ真面目なのか、昔から私は不思議だけどね。
さて、こうして鶴翼と魚鱗を見てきたんだが、皆さんはどちらがお好みだろうか。
私はサッカーならポゼッションスタイルの方が堅守速攻スタイルより好きなんだが、こと戦に関しては王将とられた時点で即終局、という将棋ルールだからね。
サッカーみたく「失点しても取り返せばいい」というルールじゃないので、どちらかというと魚鱗の方がいいと思うよ。
ただ、魚鱗の陣が好きかといえば微妙なところで、なんせ稼働してる兵と稼働してない兵の格差がひどくて、とても組織効率がいいとは思えんのだわ。
そこで出てくるのが、戦術界最大のファンタジーと名高い「車懸りの陣」ですよ。

ね?ファンタジーでしょ。
これは大将を中軸に据えた円陣で、時計方向に回転することで敵と対峙する兵が次々に入れ替わるという、まさに夢の陣形といっていいだろう。
疲弊した兵は陣の回転によって後方に回り、常にフレッシュな兵が前線にいるという画期的な構造である。
また、通常の陣形なら最後尾の大将の指示が最前列にまですぐには届かないが、この大将中心の円陣ならば比較的スムーズに全軍への意思伝達ができる。
この車懸りは、上杉謙信が使っていたようだ。
謙信「皆の者、よいか。この車懸りの陣は難易度が高いゆえ、全員集中して臨むように。よいな?」
全軍「かしこまりました!」
謙信「全軍、出陣じゃ!」
(中略)
謙信「ダメだダメだ。ちゃんと右回転ルールを守れ!足を止めるな!
どうして皆うまく回転できんのだ?」
参謀「やはり敵がいますから、闘ってるのを中断して回転するのはさすがにちょっと・・・」
謙信「相手をチェンジするタイミングをつかむのが難しいのか・・・。
うむ、妙案がある。これを使おう」
参謀「こ、これは、オクラホマミキサーのCD!フォークダンス!」
(中略)
謙信「だいぶ回転できるようになってきたな。しかし、みんな回転することに気をとられすぎて、陣がちっとも敵陣の方向に進んでないぞ?」
参謀「そりゃ敵がいますから、敵が後退でもしてくれない限り、うちの陣は永久に前進しないかと・・・」
謙信「戦が始まって3時間たつのに、俺、20cmしか進んでないんだけど」
参謀「円陣の中心って、身動きとれなくて意外とつらいですね」
謙信「あ、わかった。前にいた兵がいちいち回転して後ろに戻ってくるから前進しないってことじゃん。つまり回転が諸悪の根源だよ」
参謀「殿、それを言ってしまっては車懸りの陣のコンセプトが・・・」
謙信「もういいや。陣が前進できないなら、俺ひとりで武田の本陣に特攻してみるわ。・・・じゃ」
参謀「と、殿~っ!」
これが謙信と信玄の一騎打ちで名高い、川中島の戦いの経緯である。
対峙していた武田信玄の軍は、鶴翼を使っていたようだ。
ちなみに、この戦いを描いた映画として「天と地と」があるんだが、
この合戦の光景を上空から撮った映像が、これ↓である。

非常に美しい!
私は是非、これのホンモノを上空から肉眼で見てみたいんだよ。
一応ここまでの話をまとめると、これほど難易度の高い「車懸りの陣」を使った上杉謙信が戦国時代NO1ファンタジスタだ、という結論でいいんじゃないだろうか。

