アニメ史上、歴代最高の作画枚数のアニメを知ってる?
今回は、アニメの<作画枚数>について色々と書いてみたいと思う。
アニメファンは、その作品の価値基準のひとつを作画枚数で語ったりもするものさ。
もちろん、誰しも
作画枚数が多いアニメ=いいアニメ
ではないことぐらいは分かっている。
ただ私は、これをひとつの<監督のチカラ>の顕在化だと解釈してるのね。
じゃ、それが分かりやすい表があるから見てもらおうか↓↓

見ての通り、やはり高畑勲、宮崎駿、両氏の作品は作画枚数が多い。
でも、見てもらいたいのはそこじゃなく、むしろ高畑/宮崎以外のところさ。
近藤喜文監督「耳をすませば」⇒6万4941枚
森田宏幸監督「猫の恩返し」⇒5万7738枚
宮崎吾朗監督「ゲド戦記」⇒7万6135枚
米林宏昌監督「借りぐらしのアリエッティ」⇒7万4761枚
宮崎吾朗監督「コクリコ坂から」⇒6万9758枚
・・お分かりいただけるだろうか?
いくらジブリといえど、高畑/宮崎以外の人の監督作品は全て10万枚以下、つまり「割と普通」なんだよ。
これが何を意味するかというと、まぁ率直にいえば、ジブリ社内において
高畑/宮崎以外の監督は<圧政>のアニメ作りを実行しなかった、ということ。

ぶっちゃけ、ひとつの映画で10万枚をも超える作画作業ともなると、これはもはや<強制労働>、いうなればブラック企業の域。
ブラック企業は、よく過労死が出るよね。
事実、ジブリにも近藤喜文過労死説があったわけで、いやもちろん、真相はそうでなかったと思うけど、でも高畑さんは「彼を殺したのはパクさんだよね?」と言われて黙って頷いたという逸話があるほどで、また宮崎さんも「俺が近ちゃんを死なせた・・」と言って号泣していたという。
そう、近藤さんの死(享年47歳)は、ふたりの巨匠の心に大きな傷を刻んだんだ。
それが1998年の出来事。
ちなみに近藤さんの最後の仕事は「もののけ姫」(約14万枚)だったわけで、じゃ、その後の高畑/宮崎、両氏の仕事ぶりはどう変化したのか?
高畑勲監督「となりの山田くん」⇒17万3035枚
宮崎駿監督「千と千尋」⇒11万2367枚
こいつら、何も反省しとらんやないか~い!

いやむしろ、近藤さんの死がかえってふたりの心のタガを外してしまったのかもしれない。
「ひとり殺すも、ふたり殺すも、堕ちる地獄は同じ」
という連続殺人鬼的な思考回路(笑)。
ええ、高畑さんに至っては、最後24万枚までいきましたとも・・。
そして皆さんにご理解いただきたいのは、このおふたり、ともに本質は左翼なんだよ。
左翼、つまり<横暴な資本家側の圧力に抵抗し、労働者は団結していこう>という思想の下に彼らは育ってきたのさ。
ところがおふたりとも、なぜか、ジブリでは労働者たち(アニメーター)を苦しめる立場に(笑)。
それこそ「農民は、生かさず、殺さず」の悪徳領主のごとく、きつい年貢(作画枚数)を農民たちに強制するようになっていったわけね。

・・いや、誤解のないように。
私は、高畑/宮崎両氏をディスりたいわけでは断じてない。
むしろその逆で、このパワハラ取り締まりのご時世に、ここまで見事な強制労働を成功させた彼らの<圧政>、いや、それは裏を返すなら<人望>かもしれんが、とにかくそのコントロール手腕が凄いですよ。
だからこそ、彼らの作品は異様なほどクオリティが高いともいえるし。
思えばあの黒澤明監督にしても、彼の<圧政>もまたエゲツなかったらしいぞ?

・・いやいや、作画10万枚?
24万枚?
そんなの大したことねーじゃねーか
と一部の人は既にそう感じているに違いない。
まぁね、確かに上には上がいるもんですわ。
日本という枠組みを超えて世界に目を向ければ、もっと凄い<圧政>が現実にあったわけだからね。
それが、この作品↓↓
「ファンタジア」作画枚数100万枚‼

この「ファンタジア」は、もはやアニメ界の奇跡の結晶。
アニメーターを志す人たちは、ほぼ全員が一度はこれを見てると思う。
見たことがないという人は、これはもう著作権フリーとなってるので、普通にYouTubeで無料動画を視聴できるから一度ご覧ください。
私も今まで10回ぐらい見てるけど、ここだけの話、
そのうち8回ぐらいは途中で寝てます・・(笑)
いやいや、私と同じく、途中で寝た人は絶対多いと思うんだけど?
・・あ、そうか、これを見たことない人の為に説明が必要か。

この作品は、8つの有名なクラシック曲で構成されたミュージックビデオのようなもので、ディズニーがその曲に抱いたイメージをアニメ化したものといえば伝わるかな?
一種のイメージビデオともいえるので、抽象表現がやたら多いんだ。
セリフがほとんどないし。
ただ、とにかくそのアニメーションが凄い!
私はこれを初めて見た時、
「へぇ、さすがアメリカ、1940年でもう既にCGがあったのか・・。
・・てか、あるわけないやん!」
と、ひとりツッコミを入れましたとも。
でもこの作品、ホントにCGで制作した映像にしか見えないのよ。


いや、確か世界初のCG映画は1982年の「トロン」(ディズニー制作)だったと思うので、「ファンタジア」が手描きアニメであることは間違いない。
まぁ確かに、CGだろうが手描きだろうが「描くこと」は同じだし、つまりは「CG映像だろうと手描きで実現可能」ってことよね。
それこそ、アニメーターが人間の尊厳を捨てて、コンピュータ端末と化せばいいんだよ(笑)。
もちろん、ディズニーの<圧政>なくして出来ないことだけどね。

とにかく、見てくれ!としか言いようがない。
1940年、つまり太平洋戦争勃発の傍らで、アメリカはこんなものを作ってたという、その国力のエゲツなさ・・。
ちなみに、その頃の日本では松竹がこんなアニメ↓↓を作ってました。

「くもとちゅうりっぷ」も非常によくできた萌えアニメなんだけど、さすがに比較対象が「ファンタジア」ともなると見劣りは否めない。
もし、当時の我が国の参謀本部が「ファンタジア」をちゃんと見ていれば、もう少し早めの講和に動いてたかもしれないのにねぇ・・。
ただ、先ほども書いたことなんだが「ファンタジア」は凄いアニメにせよ、基本はミュージックビデオだし、めっちゃ面白いもんでもありません。
どっちかというとアート。
普通に面白さを求めるなら、同じ初期ディズニーでも他に色々あるんだ。YouTubeで無料視聴できるものの中から傑作を選ぶなら、
「白雪姫」⇒ディズニー最初の長編であり、レジェンド作品
「ピノキオ」⇒「鉄腕アトム」の元ネタ説あり
「バンビ」⇒手塚先生はこれを見てアニメを志したらしい
「シンデレラ」⇒これもレジェンド作品、女子は好きでしょ?
「ピーターパン」⇒「屋根裏のラジャー」とセットで見るといい
といったところ。


で、私がディズニーを見ててホントにスゲーなぁ‥と思うのは、たとえば「白雪姫」の中でも
<白雪姫>⇒ロトスコープ作画(一度実写を撮ってから模写)
<7人のこびとたち>⇒カートゥーン作画
という形で、めっちゃ手間のかかる<描き分け>をしてることなんだよね。
アニメーターたちからすりゃ、「これは効率悪いし、もう少し普通にアニメ作りません?」と絶対言いたかったはずなんだけど、しかし、そういうのが言えなかったんだろうねぇ・・。
なんせボスが社長、創業者、カリスマゆえ、絶対に「やれ!」と言われたら逆らえなかったんだろう。
・・でも、結局成功してるからいいじゃん、と思う人もいるだろうが、いやいや、ディズニーのその異様なコダワリってやつが財政を圧迫していたのは事実で、現実は一時期まで「ヒットしても赤字」だったんだよ。
特に、前述の「ファンタジア」にかかった費用はエゲツなかったらしくて、それを回収するのには20年ぐらいかかったという。
ディズニーの当時のアニメーターさんたちって、ホントに大変だっただろうなぁ・・。
ちなみにデジタル化された今となっては、<ディズニーの動き>をちゃんとプログラム化してるらしいので省力できてると思うんだけど。
<今はコンピュータ制御された、伝統的なディズニーの動き>




もしディズニーさんが今も生きてたら、今の3DCGばかりの自社アニメ作品を見て、どう思うかな?
・・いや、私は「OK!」と言ってくれる気がするのよ。
それは「ファンタジア」を見て思うことだけど、ディズニーさんが追求した美の到達点はもはやデジタルグラフィックの領域だったのでは?


さて、日本アニメは今後、「ファンタジア」に対抗できるの?
そりゃ作画100万とかは無理でしょうよ。
というか、日本のやり方はそっち系ではなく、<メリハリをつける>という方向性にあると思う。
作品トータル作画枚数は問題じゃなく、ピンポイントに「〇〇のシーン」で命懸ける!みたいな。
たとえば、近年話題になったのが映画「Fate/stay night Heaven's Feel」におけるセイバーオルタvsバーサーカーのシーン。
信憑性は定かではないが、
このシーンに投じた作画枚数は日本アニメ史上最高数との噂
じゃ、とりあえず見てもらいましょうか。
見たら確実に泣くと思うので、覚悟して見て↓↓
私、思わず号泣した・・
だって、斬られて悶え苦しむバーサーカーが、私の目には日々徹夜での作画を強いられて苦しむufotableのアニメーターさんの姿にしか見えないもん。
そして、セイバーオルタはufotable社長・近藤光ですね。

多分、この人もまた<圧政>なんだろうなぁ。
我々は、<圧政>に耐えてくれてる農民たちにひたすら感謝しようぜ!

