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「サイボーグ009」を完結させるのは難しい・・

先日、こういうニュース↓↓を目にした。

新作アニメ「サイボーグ009-ネメシス-」制作決定!

情報はたったこれだけで、どこの制作会社が?とか、監督は誰がやるのか?などの詳細は何も出ていない。
そもそも、「ネメシス」が意味不明である。

聞けばネメシスというのはギリシア神話に出てくる神で、「神罰の執行者」でもあるという。
・・となると、やっぱりあれだろうね。
未完のまま終わったとされる「009」完結編の

「天使編/神々との闘い編」

をアニメ化する可能性が高いと思う。
・・いや、違う可能性もあるけど。

今回は、この「009」原作者の石ノ森章太郎先生について少し書いてみたいのね。
この石ノ森先生って、どうやらギネス記録を保有してるらしいのよ。

「一人の著者が描いたコミックの出版作品数が世界で最も多い」

<770タイトル/500巻/12万8000頁>

この記録は、多分ずっと破られないでしょう。

たくさん描きゃいいってもんじゃねーだろ!」とツッコむ人も当然いるだろうが、しかし、やっぱ数をこなせることは間違いなくひとつの才能だよ。

ちなみに、これに肉薄したのが手塚治虫先生で、一説には
603タイトル/400巻/15万頁>だとされている。
負けず嫌いで知られる手塚先生だけに、石ノ森先生のことは結構ライバル視してたみたいだね。
一方、石ノ森先生は手塚先生のことを、ひたすら尊敬/崇拝してたみたいなんだけど(笑)。

私は、この手塚(師匠)⇔石ノ森(弟子)というラインは日本のサブカルにおいて、めっちゃ重要な核だと思ってるんですよ。

手塚先生は、「鉄腕アトム」で<ロボット>を表現したでしょ。
一方、石ノ森先生は「サイボーグ009」で<サイボーグ>を表現したんです。

「アトム」⇒究極のテクノロジーで、ヒトに近くなった機械
「009」⇒究極のテクノロジーで、機械に近くなったヒト

ロボットとサイボーグは似てるようでいて、そのベクトルは
<機械⇒人間><人間⇒機械>
となっており、実は全く逆なんだよね。

なお、手塚先生が「アトム」で示したベクトル(機械⇒人間)は、今のSFの中でも「AIは人類と共存できるのか?」というメジャーなネタとして、あらゆる作品の中に受け継がれている。
弟子の藤子F不二雄先生は、「共存できますよ」という楽観的アンサーを「ドラえもん」の中でキッチリ描いてたし・・。

一方、石ノ森先生が「009」で示したベクトル(人間⇒機械)は、たとえば「攻殻機動隊」等、主に<サイバーパンク>として現代に受け継がれた感がある。

「ドラえもん」にはユートピア感があったのに対し、「攻殻」の方には逆にディストピア感があるんだよな・・。

いや、もともとルーツの「009」からしてそうだったのよ。
大体、この作品のサイボーグ戦士たちは<正義>の立場でありつつも、その出自は明らかに<>である。
なぜならば、彼らは全員、悪の秘密結社/ブラックゴーストの科学者の施術によってサイボーグになったんだから・・。

こういうパターンはどうやら石ノ森作品の定型らしく、「仮面ライダー」も主人公はショッカーの施術によって人体改造されたバッタ怪人である。

・・そう、石ノ森先生が作る設定は妙に切なくて哀しくて残酷なんだわ。

「009」主人公/島村ジョーは、作中ず~っと苦悩しっぱなしである。
俺はヒトか?機械か?」という自問をずっと繰り返している。
その思考は「じゃ、ヒトとは何だ?」という哲学論ともなり、こういうのが「009」の主題なのかも。

やがて、その哲学は「善とは何か?悪とは何か?」というところに収束していく・・。

多分、石ノ森先生ってめちゃくちゃ頭のいい人だと思うんですよ。
そりゃ、手塚先生のように大阪大学医学部卒みたいな高学歴があるわけじゃないにせよ(高校卒業してすぐトキワ荘入りしたのでは?)、でも地アタマの良さは彼の作品見てると何となく伺えるし。
大体、この人は「マンガ日本の歴史」「マンガ日本経済入門」描いてるわけで、こんなの絶対に凡人なんかじゃ描けない領域だって・・。

思えば、彼の師匠の手塚先生もさらっと「ファウスト」(著ゲーテ)を漫画で描いちゃう人だったし、アニメの「旧約聖書物語」も天地創造からイエス誕生までをまるごと描いちゃってたよね。
いやマジで、バケモノかよ・・。

多分ね、この御二人とも脳にストックされたインプット量が尋常じゃないと思う。
基本、御二人とも育ちがいいというか、ようするに「イイトコのボンボン」なんですよ。

聞けば、石ノ森先生のご実家には蔵があり、彼の父の蔵書がどっさりあったそうだ。
それこそ、夏目漱石やら芥川龍之介やらの文学の類いが多かったらしいが、幼少の頃の石ノ森先生はこれらを片っ端から読んでいたらしい。
こういう原体験って、大事だよね。
その人の作家性の重要な引き出しになるから。

思えば、いまどきの作家は大体が「昔の漫画/アニメ」を元ネタにしてるものだが、さすがに手塚先生や石ノ森先生ともなると元ネタが「漫画/アニメ」外であることの方が圧倒的に多いんですよ。
こういうところが、彼らならではのアドバンテージだよね。

「サイボーグ009」神々との闘い編

さて、「サイボーグ009」に話を戻そう。

前述の「天使編/神々との闘い編」についてだが、この章が描かれたのか結構古い話で、1969~1970年頃だってさ。
結局うまくオチをつけられず、中断し、そのまま放置されることになったという。
なぜ、そんなことになったのか?

・・それは、難しい題材だったからだよ。


ここで扱うのは、「黙示録」。

いつもなら009が闘う相手はブラックゴーストという軍産複合体(すなわち資本家/支配階層そのもの)であり、これは全共闘運動の【保守vs左翼】という当時の時代の趨勢をそのまんま映したものだった。

1969年の安田講堂、この1年後、三島由紀夫は割腹

当時は「何が正しくて、何が正しくないのか」がよく分からなくなった時代だと思うのよ。

腐った政府は悪だ、と断罪するまでは簡単なんだが、じゃ、それに抵抗している「左翼」は善なのか?
と思いきや、連合赤軍なんてのは明らかな悪だったし・・。
じゃ、自衛隊駐屯地で切腹した「右翼」三島由紀夫は善か?悪か?

・・もうね、何が何だかワケが分かりませんよ(笑)。

こうして、誰しもが善/悪が何なのかがよく分からなくなってきた時代の中、石ノ森先生が「009」の中で主人公たちと敵対する存在として選んだのが、よりによって「神」だった。

神(創造主)が「黙示録」の通り、人類の粛清を決定
⇒これに抵抗して、人類を救おうとする009は<悪>なのか?


この命題、いくら何でも難しすぎるやろ・・(笑)。
まぁ確かに、全共闘の総括、ってことで間違いないとは思うんだけどね。
でもこれに綺麗にオチをつけられなかった先生のキモチは、痛いほど分かるわ・・。

で、こうして石ノ森先生が断念した、この「黙示録」ネタを果敢に拾ったのが、弟子の永井豪先生だったと思う。

「デビルマン」(1972~1973年)

ちなみに、永井先生の幼少期の愛読書はダンテ「神曲」だったらしい・・
どんなコドモやねんww

まぁ、これは永井先生なりの「009/神々との闘い編」解釈だったんじゃないかな?
これはこれで、一応「あり」だよね。

で、本来なら1998年、この「神々の闘い編」は新たに「Conclusion God's War」と名を刷新し、石ノ森先生が今度こそは完結させる予定だったらしいのよ。
多分、先生もこれの未完が心残りだったんだろう。
ところが、制作の途中で先生は悪性リンパ腫が悪化し、逝去・・。

「Conclusion God's War」

結局、「Conclusion God's War」は未完の遺作となってしまった。

ただ、アニメとしてはこの最終章の「黙示録」的コンセプトを拾い、「009 RE:CYBORG」という劇場版として仕上げられている。

「009 RE:CYBORG」(2012年)

これ、もともとのプロット作ったのは押井守だが、色々あって、結局は神山健治監督作品ということにおさまりました。

まぁ、押井さんにせよ神山にせよ「攻殻」の人ゆえ、「009」リブートには適任という判断だったんでしょう。

私、この作品は結構好きなんですけど、でも締め方は結構「曖昧」でしたよね。
やっぱ、ちゃんと締めなきゃ・・ということで今回の新作「ネメシス」なのかもしれない。

とにかく、「ネメシス」は続報を待ちましょう。

で、待ってる間は、ぜひ皆さんはこれ↓↓を復習しておいてください。

「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」(2001年)

数多くある「009」アニメシリーズの中でも、これが最も誠実に原作を再現してるらしい。

やっぱね、これイイですよ。
石ノ森節が冴えてるというか、サイボーグの哀愁が何とも切なくて、グッとくるものがあります。
でも、一番切なくなるのが、本編以上にオープニング曲ですかね。

「009」オープニング曲「What's the justice?」
唄/globe 作詞/KEIKO 作曲/小室哲哉

globeボーカル/KEIKO

この「009」の翌年、KEIKOさんは小室哲哉と結婚。

KEIKOさんが一番ノッてた頃ですね~。
でも、やがて離婚・・。

小室さんの不倫会見を見た時、「・・あ、島村ジョーだ」と私は思いましたけどね。

小室哲哉

この平成版「サイボーグ009」オープニングには、そういう切なさの伏線がぎゅっと詰まってるんですよ。

やはりサイボーグって、切ないですねぇ・・。


これ未見の方は、是非ご覧ください。
傑作だと思いますよ。


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