自動工場としてのAIエージェント賢いAIより、壊れない工程を
AIに仕事を任せる仕組みを本気で作ると、時間を食うのはAIそのものではなく、その周りの設備だった ―― 実際に作った人の報告を読むと、そうした傾向が見えてくる。本稿は、AIエージェントの基盤づくりを「工場の設計」として読み直し、どこで詰まるのかを整理する。
目 次
序章 準備の大半は、AIの外側にある.............................. 3
第1章 社則と鍵 ―― 注意書きでは事故は防げない.......... 3
第2章 0.95の10乗 ―― 賢くするより、迷わせない.......... 4
第3章 人間はどこに立つのか......................................... 5
第4章 止まった理由を数える.......................................... 6
第5章 「完成」はいつか................................................ 6
第6章 モデルの更新は、材料が変わることである.......... 7
第7章 実装を少しだけ詳しく見る................................ 7
結章 次に詰まるのは生産管理である...................... 8
序章 準備の大半は、AIの外側にある
AIに仕事を任せる、という話を聞くと、多くの人はまず「AIがどれだけ賢いか」を思い浮かべる。しかし、AIを継続的に働かせる仕組みを実際に作った人の報告を読むと、時間を食っているのはそこではないらしい。
本稿が出発点とするのは、ソフトウェア開発の作業依頼をAIに自動処理させる仕組みの、構築中間報告である。作業を四つの工程に分け、それぞれを別々の時刻に自動で起動し、工程から工程への受け渡しは、依頼票に貼る一枚の札だけで行う。
ただし、この四工程がすべて完成しているわけではない。前半は動いており、後半は検証中および設計中の段階にある。以下は完成した設備の報告ではなく、構築の途中で固まってきた設計の考え方として読んでいただきたい。
その著者が最も時間がかかったと述べているのは、AIへの指示の工夫ではない。危ない操作をそもそもできなくする仕掛けを作り、権限を絞り、いまどの工程にあるかを管理し、それらが想定どおり流れるかを検証する、という地味な作業である。
言い換えれば、AIは加工機械にすぎず、時間がかかるのは工場のほうだ、ということである。なお本稿では、いくつかの工程がつながって一つの仕事を通す単位を「ライン」、複数のラインと生産計画までを含めた単位を「工場」と呼び分ける。以下、この構図を製造設備の設計問題として読み直していく。結論を先に置けば、次に詰まるのはAIの能力ではなく、生産管理である。
