AIをいつ外すか探索系エージェントを基幹系ワークフローへ回収する「卒業統治」の製品概念
要 旨
AIの業務導入は、これまで「どう増やすか」に偏ってきた。本稿が扱うのは逆の問い——動き始めたAIを、いつ、どの基準で、どのように「外す」か——である。手順を作る作業はLLMの推論を要するが、それを日々実行する作業はほとんど要さない。この非対称性を制度として引き受け、成熟した処理を決定論的ワークフローへ可逆に移す統治を、本稿は卒業統治と呼ぶ。
市場には、発見(プロセスマイニング)・混在実行・決定管理の製品が揃い、エージェントを運用する統治(制御プレーン)まである。しかし、成熟を測って確定系へ卒業させ、必要なら呼び戻す統治——卒業統治——だけが、独立した製品カテゴリとして見当たらない。その中核は、切り替えを自動化することではなく、切り替えの是非を人間が裁定するための証拠を生成し、台帳化することにある——これを卒業台帳と呼ぶ。最大の難所は、決定論版が元の挙動を未観測の入力まで保存しているかの検証であり、鍵は被覆度・分布外検知・棄権能力にある。
卒業の動機はコスト削減ではなく、監査可能性と決定性に置く。そして卒業は不可逆ではない。環境が変われば再びAIへ戻す。この往復を証拠に基づいて制度化する上位の層を、本稿はAI成熟管理と位置づける。二十世紀は何を自動化するかを、二十一世紀前半は何をAIに任せるかを設計してきた。次の主題は、何をAIから取り戻すか、である。なお本稿でいう「外す」は全面排除ではない。AIは、判断の要る例外に限って残る。
目 次
序章 非対称性という出発点 4
第一章 二つの体制——情報系的試行錯誤と基幹系的確定処理 6
第二章 市場の四層構造と、ひとつの空白 8
第三章 なぜ「卒業」層だけが空白なのか 11
第四章 動機の再設定——維持費から監査・決定性へ 13
第五章 中核の難所——等価性の検証と沈黙故障 15
第六章 製品像——「卒業台帳」としてのアーキテクチャ 18
第七章 探索系と確定系の往復——再AI化という安全弁 22
第八章 隣接領域——コンパイル時決定論化の勃興 24
第九章 実装構成の選択肢——三つの参照アーキテクチャ 27
第十章 失敗モード——卒業統治それ自体のリスク 29
終章 結論——「増やす」設計から「外す」設計へ
