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その能力は評価可能か? 活躍に必要な能力でもassessableでなければ意味がない問題

採用の求める人材像に含まれている能力が、選考プロセスにおける評価手法では評価が難しいケースが多すぎることに関する話です。

選考設計支援の現場でよく起こること

私は企業の採用の選考設計をビジネスの主戦場としています。
選考の精度を高めるためには次の2つの観点があります。

  1. 何の能力を評価するか

  2. 正しく評価できているか

ですので、本来であればこの2つの観点についての設計を支援したいところなのですが、すべての現場でそのような形で関わることができるわけではありません。

求める人材像や評価要素、選考プロセス(多くの場合はほぼ面接)については所与のものとして考え、どのように面接を進めるかという点や面接官トレーニングが支援対象であることもよくある話です。

こういったケースで何が起こるか。
お客様から「これがうちの面接評価表です」と渡された評価表を見ると、そこに並んでいるのは面接では評価が非常に難しい要素である、ということです。

たとえば「完遂」に類する能力。やり切る力、行動持続力、粘り強さ、などもこれに相当します。
この能力、本当に面接でそれなりの精度で評価できると思いますか?

面接の場で応募者が「完遂」の能力を発揮していることを直接見るわけではありません。ですので、必然的に「完遂」の能力は過去のエピソードから発揮の事実を聞くことになります。

するとどのようなことが起こるのか。

拙著『採用基準のつくり方』から「完遂」の能力を評価することが難しいことを記載している箇所を引用します。

面接官を経験したことのある方なら、「C:最後まであきらめずに取り組むことができている」について、評価に差をつけるのが難しいと感じたことがあるのではないでしょうか。
評価に差をつけるのが難しい理由は、応募者がエピソードから評価されることを知っているため、「やり切ったことがない経験」を話さないからです。

『採用基準のつくり方』より

全員必ず「やり切った」経験を話してくるのです。
ですので、評価基準に照らし合わせると、評価に差をつけることが難しくなります。評価に差をつけることがあるとすれば、それはほぼ「エピソードの話の構成がうまかったかどうか」に過ぎず、その能力は「完遂」とは実際には関係ないにもかかわらず、あたかも「完遂」のレベルに差があるように面接官が感じてしまっているだけです。

このように、面接という手法で評価が難しいけれど、企業の面接評価表によく書いてある能力は他にもあります。

  • 柔軟性、状況判断、変化への適応など

  • 創造性

  • 自律性

こういった能力も、面接では評価が困難であると感じます。

なぜ選考で評価できない能力が面接評価表に記載されているのか

これには2つのパターンがあると思っています。

1つ目は、過去のいつ誰が作成したかわからない評価要素を何十年も使い続けているパターンです。
人事部の誰も、その評価要素を誰が定義したのかを知りません。定義の根拠なども何も残っていません。
おそらくはるか昔に、選考をするなら評価項目がないと困るということで、当時の人事部長や採用課長あたりが決めたのだと思います。
このパターンの場合は、今すぐに求める人材像の再構築をすべきです。

2つ目は、求める人材像の設計についてコンサル会社が入って、膨大な報告書とともにロジカルにまとめたパターンです。
大抵の場合、求める人材像設計のインプットとして役員クラスのインタビューもしていて、最後は役員への報告とともに合意形成しています。
ですので、「入社後の活躍に必要な能力」という意味ではケチのつけようのないものになっています。

ただし、この2つ目のパターンにも弱点があります。
それは、「入社後の活躍に必要な能力」と「その能力が選考で評価可能か」は別の観点であることをケアしていないことです。

下図の採用基準の定義の4つのステップを見てください。

ステップ1で定義する求める人材像とステップ2で定義する評価要素を見比べると、ステップ2では能力が間引かれていることがわかります。
なぜ間引いているかというと、入社時点では当該の能力は「評価の必要がない」あるいは「評価することができない」というものが存在するためです。

もちろん、間引いた能力(図でいえば能力D)については、入社後の育成で身につけることができるということを人事部として設計に組み込んでおく必要があります。

パターン2の場合に起こりがちな注意点として、図の「ステップ2」の行程を入れず、求める人材像をそのまま選考プロセスの評価要素にしてしまう、というのがあります。

これにより、せっかく作成した求める人材像が選考の現場で使いにくいものになってしまっている、ということが散見されます。

選考では、能力の変動性だけでなく、評価可能性についても考慮すべき

選考の現場でよく言われているのが、能力の先天性/後天性に着目した変動性です。

能力にはあとから意図的に変化させやすい能力と、変化させることが難しい能力があります。
下図は、能力を先天/後天の層別にわけて整理したものです。

自社で活躍するために必要な能力のうち、いくつかはあとから変化させることができる能力(後天)、いくつかはあとから変化させることが難しい能力(先天)があるとすれば、当然のことながら選考時点では先天能力を重視して評価すべきです。

能力の変動性(developable)については選考の現場では今や常識になっています。

一方で、先ほどから指摘しているように、選考という一過性のプロセスにおける評価可能性(assessable)については、あまり検討が進んでいないように思います。

採用基準の定義においては、評価可能性についても考慮に入れたうえで設計を進めないと、あとから「この能力はどうやって評価するんだ?」ということになりかねません。

あわせて考えたい選考プロセスにおける評価手法の組み合わせ

評価可能性を考える際にはあわせて評価手法も検討する必要があります。
面接では評価が難しい能力でも、別の評価手法、たとえば行動観察などで評価が可能である能力もあるためです。

先述した「完遂」についても、やや長時間の行動観察をすれば、「完遂」しているかどうかを直接観察することができるので、評価可能となります。

選考プロセスに面接を複数回設けている企業が多くありますが、「評価」という観点では他の手法と組み合わせた方が網羅的な能力評価につながります。(「惹きつけ」という観点では面接は効果的です)

ほかにも、知的能力を測定したいのであれば面接よりも専門のテストの方が向いています。また、面接にもケース面接やプレゼン面接などいろいろな手法がありますので、評価したい能力に応じて設計を変えることが有効です。

自社の評価要素がassessableでないと感じたら

順番に3つの観点で選考を見直してみることをおすすめします。

①採用基準の見直し

当該の評価要素を含めて、自社の採用基準が採用の目的に資する内容になっているか見直してみると良いと思います。採用基準や求める人材像などの定義は、時折見直さないと、誰も触ることのできない聖域になってしまいます。そうなる前に定期的なメンテナンスが必要です。

②選考プロセスの見直し

当該の評価要素を、これまでと異なる評価手法で評価できないか検討してみるのも良いです。面接では難しくても、行動観察であれば評価可能な能力要素は多く存在しています。グループワーク、ケースワーク、ビジネスシミュレーションなど、目的にあわせて導入を検討してみてください。

③面接でどうにかできないか、あがく

現場から呼んできた面接官に特に何のトレーニングなどを施さずに面接を依頼すると、かなり直接評価に偏った評価になりがちです。そもそも、面接官は直接評価と間接評価というものがあることを知らないこともあります。評価可能性が低い評価要素でも、面接の設計および設計内容について面接官にトレーニングすることで効果を少しでも高める努力をすることはできます。

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