構造化面接は、何をどこまで構造化すべきなのか
構造化面接と呼ばれる面接手法の解像度を高めて理解する話です。
採用に携わる人であれば、構造化面接という面接手法を聞いたことがあると思います。また、非構造化面接よりも構造化面接の方が妥当性が高く、選考で導入した方がよい、ということも最近ではよく知られるようになってきました。
ところが、「構造化面接」という言葉の解釈の幅がわりと広く、人によって意味することが異なる場合があり、そのため議論がかみ合わない場面をこれまで何度か見てきました。
そこで、構造化面接が意味する実務的内容について整理をしてみました。
構造化面接と行動(描写)面接は同義ではない
特に新卒採用における構造化面接の導入で、行動面接と混同していることがあります。
新卒採用では行動特性を面接で評価することが多く、行動事実を深掘りしていくことを構造化面接と呼んでいるのだと思いますが、両者の意味合いは異なります。
構造化面接
すべての応募者に対して同じ質問項目、評価基準で行う面接方法です。
たとえば
「あなたの職務経験について教えてください」
という質問を全員に最初に実施する、と決めて面接を進行します。
行動面接
過去の具体的な行動事実を聞き出して行動特性を評価する面接方法です。
たとえば
「これまでで最も困難な場面を乗り切った経験を教えてください」
と質問し、行動事実を掘り下げる追加質問をして面接を進行します。
実際には、行動特性を構造化面接により評価することが多いため両者が同じ意味で使われてしまっていますが、本来的には異なるものなので注意が必要です。
ちなみに、行動面接のことを行動描写面接と呼ぶことがありますが、同じ意味であると捉えてよいでしょう。
全応募者に対して同じ質問で面接を進行することができるのか
構造化面接について調べると、その定義(の一部)に次のようなことが書かれています。
「全ての応募者に対し同じ質問をする」
これについて、面接を担当したことがある人は「ん?」と思ったことがあると思います。
無理でしょ笑
と思いますよね。
私もそう思います。
最初の質問は用意したものが使えますが、それ以降は応募者の回答内容によって質問を柔軟に変えてコミュニケーションを取るように話さないと成立しない、と皆が感じています。
この点について理解するために、もう少し詳しく構造化面接について知る必要があります。
構造化の度合いというものが存在する
構造化については、完全に構造化されているのかまったく構造化されていないのか、すなわち0か100かの議論ではなく、構造化の度合いが存在します。
Huffcutt & Arthur(1994)は、面接の構造化を以下の要素によって定義しました。
質問内容の標準化
評価基準の明確化
面接官のトレーニング
回答の記録と比較
ポイントとして、構造化が意味する内容は「質問内容」だけではないことが挙げられます。評価基準を明確化すること、トレーニングをすること、回答を記録し比較することも構造化の要素だということです。
そのうえで、構造化の度合いが妥当性に段階的に寄与する可能性を指摘しました。
つまり、4つの要素について構造化の度合いを分けて妥当性を調査したところ、構造化の度合いが高いほど妥当性も高くなる可能性があることがわかったのです。
また、興味深い指摘として、構造化の度合いが低い場合は1段階度合いを上げることで妥当性も上昇したが、構造化の度合いがすでに高い場合にさらに構造化したとしても、妥当性はさほど向上しないという結果が得られたことが挙げられます。
これは構造化の天井効果と呼ばれ、何もかも完全に構造化しても効果が高くならないことを意味しています。
面接の構造化を構成する15の要素
後続研究でCampion, Palmer, & Campion (1997)は面接の構造化を構成する15の要素を定義しました。
15の構成要素は、2つの大分類に分かれます。
A. 面接内容に関する構造化
職務分析
質問の統一
効果的な質問形式
追加質問の制限
面接時間
副次的情報の統制
応募者の質問の扱い
B. 評価プロセスに関する構造化
評価スケール
スケールのアンカリング
記録の保持
複数評価者
面接官訓練
同一面接官
独立評価
統計的合算
研究では、15の構成要素の中から優先度の高い要素(A-1. 質問の統一、B-1. 評価スケール、B-5. 面接官訓練など)を先に着手することが推奨されています。
このことからもわかるように、構造化はする/しないの話ではなく、どの程度構造化したか、という観点が重要です。
また、15の要素の中で重要な指摘が、「A-4. 追加質問の制限」です。
追加質問は禁止するものではなく、一定のルールのもとで運用
「A-4. 追加質問の制限」は原文ではLimited Promptsと記述されており、これの意味するところは
フォローアップ質問が無制限に行われるのではなく統制されているか、
ということです。
つまり、ルールに基づいた追加質問をすること(probing)が構造化のひとつの要素(段階的に妥当性向上に寄与)ということです。
Campion, Palmer, & Campion (1997)において以下の記述があります。
Interviewers may be allowed to probe for additional information but should be trained to do so in a consistent and job-related manner.
(面接官は追加情報のために掘り下げ質問をしてもよいが、それは職務関連性があり、かつ一貫した方法で行うよう訓練されるべきである。)
単なる思いつきの質問や雑談は面接の構造化を歪めますが、「枠組みを維持した掘り下げ」は構造化の一部として容認されるのが現在の主流な見解となります。
まとめ:構造化面接の整理
これらのことから、構造化面接については以下の整理ができそうです。
構造化はする/しないの話ではなく度合いがある
構造化の要素は色々ある
構造化の度合いを高めると妥当性も高まるが、すでに構造化の度合いが高いと追加で構造化をしても妥当性の効果は限定的である(構造化の天井効果)
構造化の要素で重要なのは「質問の統一」「追加質問の制限」「評価スケール」「面接官訓練」
追加質問は統制されていれば構造化の一部として容認される(妥当性の向上に寄与する)

拙著『採用基準のつくり方』の参考になる部分を引用しておきます。
完全な構造化を目指す必要はなく、「ある程度」の構造化で間接評価の質は十分に担保されることがわかります。「ある程度」の構造化とは、評価基準を定めておき、面接の大まかな流れを決め、質問については行動面接をベースに柔軟に実施していくというイメージです。筆者はこれで十分だと考えいます。
ただ、「質問を柔軟に実施」といっても質問のパターンがなく自由に質問をしてよいのであれば、まったく構造化されていないことと同じです。
そこで重要になってくるのが、応募者のエピソードの内容によって、どのように質問をしていくかについてのプロトコル(複数の当事者が対象の事象を確実に実行するための手順)です。
質問進行のプロトコルは「3点モデル」と「深掘り質問」がキーワードになります。
これについては別note記事で展開したいと思います。
