見出し画像

面接で評価を誤る3つの落とし穴

面接が構造的に抱えている評価誤認の落とし穴に関する話です。

先にお伝えしておくと、よくある認知バイアス(ハロー効果、中心化傾向など)の話ではありません。より構造的な面接の課題を指摘していきたいと思います。

評価の目的は入社後のパフォーマンスの予見

面接に限った話ではないですが、採用の過程で実施する「選考」の目的は大きく分けて2つあります。
「評価」と「惹きつけ」です。
今回はこの2つの目的のうちの「評価」についての話題です。「惹きつけ」は重要な目的のひとつですが、当記事のスコープ外とします。

選考における評価は、入社後のパフォーマンスの予見のために実施します。

  • この人はうちの会社に入社して成長して活躍してくれるだろうか

  • この人はうちの会社で長く活躍し続けてくれるだろうか

もちろん、活躍してくれるかどうかや、長いこと会社にいてくれるかどうかは、応募者側だけの要因だけでは決まりません。入社後の仕事内容、仕事量、待遇、環境、人間関係など、様々な要因が影響します。

ですので、選考のフェーズにおいて、完璧な予見はできません。

では、入社する人が「誰でもいいのか」といえばそれもまた違うと思います。

入社後のパフォーマンスの予見の精度を少しでも高めるために、面接などの選考プロセスで応募者を「評価」しています。

ですので、

評価を誤る = 入社後のパフォーマンスの予見を誤る(可能性がある)

ということになるので、評価はなるべく精度高く実施したいと皆が思っています。

面接の直接評価と間接評価

選考プロセスではほとんどの企業で面接を実施していると思います。

面接の評価には、直接評価と間接評価の2種類があります。

直接評価

面接の場において、面接官が応募者の発言や行動、表情、立ち居振る舞いなどを直接観察して評価をすることを指します。

たとえば、以下のようなbehaviorは面接で直接評価することが可能です。

  • 話がわかりやすいか

  • 質問されたことに適切に回答しているか

  • 目を見て話しているか

  • 身体がゆらゆら揺れていたり極度に挙動不審でないか

間接評価

面接官が応募者の当該の能力の発揮を直接観察するわけではなく、応募者の過去のエピソードから発揮の事実を抽出し、間接的に評価することを指します。

たとえば、以下のような行動は面接の場では直接観察はできないため、間接評価することになります。

  • 周囲の人と協働できているか

  • 最後まで粘り強く取り組むことができているか

  • 計画的に取り組んでいるか

  • 予期しないことが起こったとしても柔軟に対応できているか

これを踏まえて、面接の誤認の3つの落とし穴について解説します。

落とし穴① 直接評価に引っ張られる問題

面接官に何のレクチャーもせずに自由に「優秀だと感じた人を合格としてください」と伝えると、ほぼ直接評価のみの評価となります。
すなわち、「話がわかりやすい」応募者が合格するということです。

「話がわかりやすい」人が優秀ではないと言っているわけではありません。

会社で活躍するためには話のわかりやすさだけでなく、他者との協働や粘り強さなども大抵の場合は重要です。そしてそれらの能力は面接では直接評価することができず、間接評価になります。

しかし、これらの間接評価対象の能力は考慮されず、多くの場合直接評価した能力(話がわかりやすい)がより高い応募者が合格となります。
なぜなら、話のわかりやすさというものはコミュニケーションにおける論理性のことであり、論理性は「説明力」だからです。

説明力は人を納得させる力ですから、この力が高い応募者を合格と判断しがちになり、どうしても直接評価に引っ張られてしまいます。

落とし穴② 場の難易度無視問題

パフォーマンス評価は、能力の発揮の質だけでなく、発揮した場の難易度とのかけ合わせで評価すべき、というのが私の持論です。

たとえば体操競技の採点はD得点(Difficulty:技の難易度)とE得点(Execution:技の完成度)の組み合わせで構成されています。
この考え方はビジネスのパフォーマンス評価にも適用すべきです。

最後までやりきったという点だけを評価するのではなく、そのやりきった場の難易度はどの程度だったのか。
自ら積極的に動いたという点だけを評価するのではなく、その場は自ら動くことにハードルがあったのかなかったのか。
など。

これらをあわせて評価しないと、「入社後のパフォーマンスの予見」という意味では片手落ちです。

ところが多くの面接の現場では、場の難易度は無視されて、行動の質だけが評価の観点になっています。

なぜこのようなことが起こるかというと、用意している評価基準に「場の難易度」に相当する表現がないためです。

選考の設計を少しでもしている企業であれば、評価対象の能力の評価基準というものを準備していると思います。この評価基準に、場の難易度に関する記載がなく、行動の質しか書かれていないケースがほとんどです。

ですので、面接官が評価基準に則って評価しようとすればするほど、結局場の難易度が無視されることになり、結果として入社後のパフォーマンスの予見の精度が落ちてしまっているのです。

落とし穴③ 無い袖は振れない問題

であれば、場の難易度も考慮して評価をしようじゃないか。と息巻いても、この試みは多くの場合失敗に終わります。

なぜなら、応募者側に面接官が期待しているような場の難易度における経験がないことがほとんどだからです。

間接評価をするためには、応募者の過去のエピソードを聞く必要があります。この過去のエピソードに、面接官が望むような場の難易度の経験がない場合、どうしようもありません。無い袖は振れないからです。

面接が抱える構造的な課題として、エピソードの選択権を応募者側が握っている、という点があります。
応募者は、自分がやりきっていない経験が話しませんし、自分が活躍していない経験も話しません。活躍した経験のみを話してきます。

面接官側が「こういった経験はありませんか」と聞いても、その経験がなければ、エピソードを話すことができません。もしかしたら応募者側は、やってみたらできる能力はあるけれど、やったことがないためアピールできない、ということかもしれません。面接の間接評価では、こういった可能性について評価できないのです。

面接は万能ではない

ここまで指摘してきたように、面接の現場では次のようなことがたびたび起こっています。

  • 応募者の能力を間接評価するために過去のエピソードを聞いても、場の難易度が無視された評価が行われる(落とし穴②)

  • 場の難易度を意識しようとしても、応募者側にその経験がないことが多く、評価できない(落とし穴③)

  • 結局「話がわかりやすい」などの直接評価に偏ってしまう(落とし穴①)

面接は万能ではありません。
面接には誤認が発生する可能性がそれなりにあるという前提に立つのが正しいスタンスだと思います。

ではどうすればよいか、という話は別のnoteで展開できればと思います。


今回のnoteは2025年8月1日に発売した拙著『採用基準のつくり方』の第1章「なぜ、面接で評価の誤認が起こるのか」の内容を再構成したものになります。

いいなと思ったら応援しよう!