サッカー・アフリカ王者が決する瞬間をセネガルで観てみた観戦記。
試合が終わって2時間以上が経つのに、外から聞こえる車のクラクションの嵐や雄叫び、ブブゼラみたいなうるさい音が静まる気配はない。
こんなにも盛り上がっている光景を見るのは初めてかもしれない。
大人が子どもみたいに大はしゃぎしていて、雄叫びをあげたり飛び跳ねたり歌ったり踊ったりと、ドンちゃん騒ぎだ。

これを書きながら、僕も久しぶりに興奮が冷めやらない。
なんたって、自分が暮らすセネガルがアフリカ・ネイションズカップで初めて優勝したのだから・・・!!!
サッカーに興味のない人からしたら、これはもう耐え難いうるささに違いない。でもこの国の多く人は大のサッカー好きだ。
それを思うと、現地でこんな雰囲気を味わえるのをたまらないと思えるくらい僕もサッカーが大好きで、本当によったなと思う。
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アフリカ・ネイションズカップ(ここセネガルではみんな「CAN(カンヌ:Coupe d'Afrique des nationsの略)」と言っている)は、アフリカ大陸のサッカー王者を決める大会で2年ごとに開催される。
前回は2019年、今大会はコロナの影響で1年延期になって2022年にカメルーンで開催された。
10年以上前、アフリカを旅していたときににこの大会を現地で観て以来、日本からもそれなりに観てきて、セネガルで暮らすことになってまず確認したのもこの大会の試合スケジュールだった。
今大会、セネガルは優勝候補の筆頭でもあった。
サディオ・マネやエドゥアール・メンディ、カリドゥ・クリバリ、イドリッサ・ゲイェ、シェイフ・クヤテ、イスマイラ・サールなど、戦力はアフリカ屈指。多くのブックメーカーの優勝オッズでも一番人気だった。
大会屈指のメンバーを揃えるセネガルにとっては初の国際タイトルを狙えるチャンスである上に、アフリカ・ネイションズカップの決勝は3度目だ。
さらに前回大会は決勝で敗れている悔しさもあり、選手だけでなく国民のモチベーションは高いどころじゃない。
それでも、序盤のグループリーグでは結果と内容ともに振るわず。
3試合でわずか1得点ながら運良くグループ首位突破し、決勝トーナメントでは対戦国に恵まれたのと、強豪国らしく尻上がりに調子を上げられたこともあり、すべて90分で決着をつけて、決勝にたどり着いた。
今大会のセネガルは、セネガル史上最強、もしかしたらアフリカ史上でも最強じゃないかとも言われている。それくらい豪華なメンバーが揃っている。
ただ多くのセネガル人が「メンバーはめちゃくちゃいいのに監督がダメなんだよ」と言っていた。
サッカーファンなら覚えているかもしれないけど、セネガル代表の監督は2018年ワールドカップで日本代表が対戦したときに話題になったアリウ・シセだ。
エースのサディオ・マネも決勝前のインタビューで「僕が見てきた中で最も批判されてきた監督」と、冗談ではなく真顔で語るくらい、とにもかくにも批判されまくっていた。
ところが、決勝までたどり着いたことで潮目が変わったらしい。
それまで「シセ・アウト!」と熱く批判を展開していたセネガル人たちが、決勝前になると「シセ・ベスト!」と手のひらを返して絶賛していた。
ちなみに、「お前はシセをどう思う?」と聞かれたから、「わからないよ。でも、シセは2018年ワールドカップで対戦した日本で人気だったよ、ハンサムだから」と言ったら、セネガル人たちは大爆笑していた。
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「どこで観戦するのが一番盛り上がる?」
「モニマ(モニュメント)!」
そう聞いて、準決勝のブルキナファソ戦はふだんサッカーを一緒にやっているセネガル人たちと一緒にモニュメントへ。
モニュメントとは、アフリカ・ルネサンスの像という、セネガルの首都ダカールの観光名所の一つだけど、「微妙」「謎」「変」などと評判は芳しくない。

このモニュメントのふもとでパブリックビューイングがあり、試合前から大勢の人でごった返していた。

とりあえず後方に陣取ったものの、すぐに気づいたのは、セネガルの人たちは大きすぎて前に立ちはだかられると全く画面が見えないこと。

一緒に行ったセネガル人たちは、身長190㎝前後もあるのに見づらそうにしているのだから、170㎝弱の僕には見えるはずもない。
結局それからの90分、こんなに背伸びをしたことないくらい背伸びをしつづけても画面はほぼ見れず、周囲のリアクションで試合経過を追うことに。
試合はスコアレスで迎えた後半、セネガルが2点先行した後に1点を返されるも、終了間際に追加点を決めて3-1で勝利。
チャンスを迎えたり、ピンチを凌いだり、得点なんてしようものなら、全身全霊で感情を表現するセネガル人たちを囲まれ、「雰囲気でサッカーを視る」という視聴体験を経験できたのは新鮮だった。

◇
その試合のハーフタイム。
トイレに向かおうと、ものすごい人混みをかき分けて一人で移動していたら、手に持っていた僕のスマートフォンがいきなり消えた。しっかり握っていたはずが、一瞬にして力づくで奪われたような感覚だった。
「うわっ!!」と思ったところで、混雑の中うまく身動きがとれず、誰が取ったのかもわからない。
「最悪だ……」
喪失感と悲壮感が漂おうとした次の瞬間、誰かの怒号とともに、誰かが誰かの手をはたくのが見えた。同時に、僕の足元にマンチェスター・ユナイテッドの壁紙のスマホが転がり、即座に手を伸ばしてなんとか拾う。
一瞬の出来事でわけがわからなかったけど、たしかに誰かにスマホを取られ、誰かがそれに気づいて取り返してくれたようだった。
僕は「ジェ、ジェレジェフ!(現地のウォロフ語で「ありがとう」の意)」と叫んでみたけど、相変わらずの喧騒の中、誰がスマホを取って誰が取り返してくれたのかもわからなかった。
奇跡的な出来事だったとはいえ、セネガルなら取られるのも見知らぬ誰かが取り返してくるのも、どっちもありえることだなと思ったのが、4ヶ月住んでみての感想でもある。
◇
そして、ついに迎えた決勝戦。
街は試合前からお祭りムード一色で、スーパーもパン屋もブティックでも、みんなセネガル代表のユニフォームを着ていて、歩くだけで気分が上がる。

「決勝の日、モニュメントはキックオフ4時間前に行けば席を確保して座って見れるから、そうしよう!」
一緒に観戦する予定のセネガル人たちも、準決勝で肝心の試合をあまり観れなかったフラストレーションが大きかったらしい。
ただこの一戦は、もはや国をあげての一大イベント。決勝を控えた週末を前に「群衆には近づかないように」という注意喚起が一部の日本人向けに出てしまい、群衆中の群衆でしかないモニュメントでの観戦は泣く泣く断念。
Belle ambiance à Dakar après la qualification du Sénégal. 🔥🇸🇳
— Actu Foot (@ActuFoot_) February 2, 2022
🎥 @piibouundpic.twitter.com/MtLyeknYxG
決勝進出が決まった後の街はこんな感じだったこともあり、「優勝したらもっと大騒ぎになるんじゃないか」という意味で、注意喚起が出てしまうのも無理はなかった。
そこで仕方なく、一緒にサッカーをしている別のセネガル人の友達が働いているという近所のカフェで観戦することに。
決勝の相手はエジプトだ。
セネガルがアフリカネイションズカップの優勝経験がない一方、エジプトはこの大会に滅法強い。最多7回の優勝を誇り、エースにはモハメド・サラーという世界最高の選手の一人が君臨する。
ちなみにエジプト代表を率いるのは、僕が大好きなマンチェスター・ユナイテッドのサー・アレックス・ファーガソン時代に長年アシスタントコーチを務めたカルロス・ケイロスだ。
準決勝のカメルーン戦で判定に猛抗議したところ退席処分になり、決勝はベンチ入りできなかったけど。

◇
決勝は決勝らしくチャンスの少ない試合になり、延長戦を戦ってもゴールは生まれず、勝敗の行方はPK戦へ・・・。


そして、セネガルのキッカー5人目。
エースのサディオ・マネのPKがネットを揺らして勝敗が決した瞬間、
「ヴォォォオオオオオォォォォォォオォ!!!!!!!!!!!!!!」
雄叫びとともに、一斉にみんながレストランの外に飛び出していく。


走っている車に飛び出したり、車から危ないくらいに身を乗り出したり、バイクを立ち乗りしたりと、喜びをどう表現したらいいのかわからないのか、あらゆる悪ノリで感情を爆発させている。


ずっとこの雰囲気の中にいたかったけど、終息する気配もなく、むしろどんどん人だかりが大きくなっていくこともあって退散。
サッカーで街が、国が、こんなにも盛り上がれるんだという夢のような時間を過ごすことができて、一サッカーファンとして感動を覚えている。
セネガルという国に、最高の夜を味わわせてもらった。
🇸🇳👑 AFRICA'S KINGS 👑🇸🇳#TotalEnergiesAFCON2021 | #AFCON2021 | #TeamSenegal | @Fsfofficielle pic.twitter.com/jPF1X29iZ8
— #TotalEnergiesAFCON2021 🏆 (@CAF_Online) February 6, 2022
📹 𝐇𝐈𝐆𝐇𝐋𝐈𝐆𝐇𝐓𝐒: 🇸🇳 0(4) - 0(2) 🇪🇬
— #TotalEnergiesAFCON2021 🏆 (@CAF_Online) February 7, 2022
Watch all the key moments from #SENEGY 👇 as #TeamSenegal are crowned African champions for the first time in history following a dramatic encounter against Egypt. 🦁 #TotalEnergiesAFCON2021 | #AFCON2021 | @Football2Gether pic.twitter.com/A7aKozrtU8
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さて、次の「決戦」は3月に行われる2022 FIFAワールドカップ・アフリカ最終予選。何の因縁か、セネガルはまたもエジプトと対戦する。
アフリカ大陸の予選は厳しいと知っていたつもりだけど、アフリカ最強の2カ国が潰し合い、いずれかの国はワールドカップに出場できないとは。
試合はホーム&アウェイで行われ、セネガルは「決戦」となる2ndレグをホームで戦うことができる。そして、その試合のチケットはがんばれば手に入るらしい・・・!
それにしても、外から聞こえる車のクラクションの嵐や雄叫び、ブブゼラみたいなうるさい音は、日付が回ってもいつまでもうるさい。
「歴史的な夜」はまだまだ終わりそうにない。
