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“容疑者=悪者”に見えてしまうのはなぜ?──決めつけの心理とその危うさ

◆報道に触れて思うこと
 立てこもり、発砲事件──センセーショナルなニュースに触れるたび、容疑者が“悪魔のような存在”に見えてしまう。「なんて悪いやつなんだ」「とんでもない奴だ」──そんな決めつけを、無意識にしてしまう自分がいる。

 人は誰でも、勝手な「決めつけ」をしてしまう生き物なのかもしれない。だからこそ、その性質を知っておくことが、暴走を防ぐ第一歩になる。

◆原因帰属という心理バイアス
 人間は、他者の悪い行動の原因を、その人の内面に求める傾向がある。これを心理学では「原因帰属」と呼ぶ。

 悪いこと → 個人の性格や人格(内的因子)

 良いこと → 社会や環境のおかげ(外的因子)

 この偏りが、事の本質を見誤らせる。ニュースを見て、無意識に「きっと悪いやつだ」と思ってしまうのも、このバイアスの影響かもしれない。

◆ナチス裁判と“決めつけ”の危うさ
 第二次世界大戦後のナチス裁判──ユダヤ人大量虐殺に関与したA・アイヒマンの裁判では、世論が感情的に「決めつけ」に走りそうになった。

 個人の責任か、組織の責任か。後者を主張した識者には、脅迫や批判が集中した。「悪魔を擁護する者」として、決めつけられたのかもしれない。

 現代の芸能事務所や企業の不祥事でも、同じような感情の流れを感じることがある。

◆組織が人を変える──監獄実験の教訓
 スタンフォード監獄実験(P・ジンバルドー)では、一般人を囚人役と看守役に分けて監獄生活を再現したところ、看守役が非人道的な行動をとるようになり、実験は1週間で中止された。

 この実験は、個人の性格だけでなく、環境や役割が人を変えることを示している。つまり、組織犯罪も、個人の内的因子だけでなく、外的因子も考慮すべき。

◆暴力に“大儀”を見出す日本人の傾向
 アカデミー賞授賞式での“ビンタ事件”──アメリカでは「暴力は許されない」とされたが、日本では「奥様を侮辱されたなら仕方ない」と擁護する声も多かった。

 暴力に“大儀”を見出す傾向。もしナチスの行為にも“大儀”があったなら、日本人はそれを認めてしまったかもしれない。自分もそのエラーに陥る可能性があることを、常に戒めておきたい。

◆「従った」は「支持した」
 アイヒマン裁判を傍聴した哲学者H・アーレントはこう述べた。

 「組織の指示に従ったということは、それを支持したことにほかならない。」

 命令に従っただけでは、責任を逃れられない。個人の意思が、そこに含まれている。だからこそ、流されず、自分の考えを持つことが大切。

◆声を出すための“安全な場”
 組織の中で、自分の考えを声に出すのは難しい。「心理的安全性」が確保されていないと、口を閉ざしてしまう。

 Googleの「プロジェクト・アリストテレス」でも、心理的安全性が、チームの生産性に大きく影響することが示された。

 日本では、特に高齢男性にとって、声を出すことはハードルが高い。それでも、少しずつでも、話し合える雰囲気を育てていきたい。

◆思考の偏りを知っておく
 1990年代の日本は、モノづくりの時代。指示命令に従い、画一的に動くことが価値だった。

 でも今は、情報が商品となる時代。多様な価値観が共存する社会では、画一的な思考はリスクになる。

 「決めつけ」の雰囲気はすぐには変えられない。それでも、日常から少しずつ、耳を澄ませ、声を出していくことはできる。

◆最後に
 「なんてひどい人たちなんだ」「きっと鬼畜みたいなやつなのよ」──そんな短絡的な決めつけをせず、冷静に、様々な意見に耳を傾ける。そして、自分の考えを、少しずつでも声にしていく。

 それが、流されずに生きるための、小さな訓練なのかもしれません。

〜決めつけず、耳を澄ませる。
   声を出す勇気が、思考の偏りをほどいていく。〜

                            yoitenki4110

参考:
※1 『人文学部心理学科リレーエッセイ NO.09 「原因帰属」』東海学園大学(2015.04.06)
※2 「『ウィル・スミス平手打ち』擁護に見る日米の差妻の外見へのジョークに対する暴力は愛の証か」東洋経済online(2022/04/01 10:00)
※3 山崎雅弘「アイヒマンと日本人」(祥伝社新書)2023年 P189
※4 「心理的安全性とは? 注目されている背景やメリット・つくり方を解説」リクルートマネジメントソリューションズ(2022/08/18)
※5 「Googleが解明!心理的安全性の重要性とプロジェクトアリストテレスを解説」ユニポスHRコラム(2024.07.16)

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