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エウロパ——氷の殻の内側(2):第一章 探査史——地下海仮説の成立(上)

第一章 探査史——地下海仮説の成立

望遠鏡の天体から探査機の天体へ

ガリレオ・ガリレイが一六一〇年に木星の傍らに四つの動く光点を見出したとき、それは天文学の歴史における転換点だった。地球以外の天体を中心として回る衛星の発見は、地球が宇宙の中心ではないという認識を強化し、コペルニクス的転回を決定的なものにした。しかしその四つの光点——イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト——は当時の望遠鏡の性能では点以上のものとして見えなかった。 それから三世紀以上にわたって、エウロパの正体は謎のままだった。軌道周期は約三・五日と計算され、木星から約六七万キロメートルの距離を公転していることが分かった。表面が非常に明るいことから反射率(アルベド)が高く、おそらく氷で覆われているだろうという推測もなされた。しかしそれ以上のことは分からなかった。
ガリレオ衛星の中ではガニメデの巨大さが際立っており、エウロパは最も小さく、最も地味な存在として、長らく脇役に甘んじていた。エウロパの名は、ギリシャ神話においてゼウスに見初められてクレタ島へと連れ去られた王女に由来するが、その名の詩的な響きと比べて、天文学的な存在感は薄かった。

事態が一変したのは、一九七〇年代後半のボイジャー計画によってだった。一九七九年、ボイジャー一号と二号が木星系を相次いで通過し、ガリレオ衛星の表面を初めて詳細に捉えた。その映像がもたらした衝撃は計り知れなかった。イオの表面には活発な火山活動の証拠が見出され、太陽系で地球以外に現在進行形の火山活動を持つ天体が存在することが初めて確認された。これは、木星の潮汐力による加熱という予測をまさに裏付けるものだった。
そしてエウロパの表面には、別の驚きが待っていた。クモの巣あるいは大理石の模様のように複雑に走る無数の亀裂が、地表を覆っていた。クレーターがほとんどなく、表面が著しく若い——これは何らかの過程によって地表が絶えず更新されていることを意味した。しかもその表面は驚くほど滑らかで、高低差が乏しかった。これほど広範囲にわたって平坦な表面を持つ天体は太陽系でも稀である。なぜこれほど平らなのか。なぜ亀裂が走るのか。ボイジャーはその謎を提示したが、答えは与えなかった。地下に液体の海があるなら、氷殻が浮かんで水平に保たれ、流動によって亀裂が生じる——この仮説は、ボイジャーの映像を前に徐々に形成されていった。

決定的な証拠をもたらしたのは、一九九五年から二〇〇三年にかけて木星を周回したガリレオ探査機だった。NASAのガリレオ計画は、木星系への最初の本格的な周回探査であり、エウロパに対して十二回のフライバイを含む長期にわたる観測を行った。その成果の中でとりわけ重要だったのは、磁場の観測だ。 木星は太陽系最大の磁場を持つ惑星であり、そのガリレオ衛星はこの強力な磁場の中に置かれている。ガリレオ探査機は、エウロパの近傍を通過するたびに、エウロパに特有の磁場の変動を検出した。それは外部の外部の木星磁場が時間的に変化するたびに、エウロパ内部で誘導電流が生じていることを示していた。誘導電流が生じるためには、電気伝導性の高い物質が必要だ。岩石や氷では説明できない。塩分を含む液体の水——塩水——が最も自然な説明だった。 さらにガリレオの観測データは、氷殻の厚さや内部構造の推定にも貢献した。重力場の精密測定からは、エウロパが表面の氷殻、その下の液体の層、そして岩石と金属からなるコアという三層構造を持つことが示唆された。氷殻の厚さについては諸説あり、場所によって数キロメートルから数十キロメートルまで変化する可能性があるが、その下に存在する海の深さは一〇〇キロメートル程度に達するとも推定された。地球の全海洋の水量を超える膨大な水が、エウロパの氷殻の下に潜んでいるかもしれない。氷殻の下に海がある——この仮説は、ガリレオ計画の終了後には、もはや仮説という言葉で収まらない確信へと近づいていた。

(続く)

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(2026.3.12 noteにて公開)

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