エウロパ——氷の殻の内側:付録A エウロパ探査年表
望遠鏡時代
一六一〇年一月
ガリレオ・ガリレイ、手製の望遠鏡で木星の四衛星(イオ・エウロパ・ガニメデ・カリスト)を発見。地球以外の天体を中心に回る天体の初確認となり、コペルニクス的転回を決定づけた。
一六一〇年
同年、同時期にドイツの天文学者シモン・マリウスも独立に観測していたとされる。現在使われる「エウロパ」という名称は、マリウスが後に提案した命名に由来する。(ギリシャ神話のゼウスに愛された王女エウロペーに基づく)。
一七世紀〜一九世紀
望遠鏡観測が続き、木星衛星の軌道運動の研究が進む。十八世紀末にはラプラスがイオ・エウロパ・ガニメデの軌道共鳴を理論的に説明した。
一九世紀後半〜二〇世紀前半
分光観測により木星衛星の表面組成の研究が始まる。エウロパ表面が水氷を主成分とすることが示唆されはじめる。
探査機時代の幕開け
一九七三年
パイオニア一〇号、木星系を通過。エウロパの初の近接画像を取得するが解像度は低く、詳細は不明なまま。
一九七四年
パイオニア一一号、木星系を通過。
一九七九年三月
ボイジャー一号、木星系通過。エウロパに最接近(約七三万km)し、表面の亀裂模様を初めて鮮明に撮影。クレーターが極端に少なく、表面が地質学的に若いことが判明。地下に液体の層が存在する可能性が初めて議論される。
一九七九年七月
ボイジャー二号、木星系通過。エウロパに最接近(約二〇万km)し、より高解像度の画像を取得。表面の「線条模様(リニア)」の全体像が明らかになる。表面が氷で覆われ、下層に液体水の海が存在する可能性を示唆する論文が複数発表される。
ガリレオ計画
一九八九年
NASAのガリレオ探査機、打ち上げ(スペースシャトル・アトランティス搭載)。
一九九五年一二月
ガリレオ探査機、木星周回軌道に到達。木星系の長期周回探査を開始。
一九九七年
ガリレオ探査機によるエウロパへの複数回のフライバイが本格化。磁場観測データが蓄積される。
一九九八年
ガリレオの磁場データの解析から、エウロパ内部に導電性の液体(塩水)が存在することを示す木星磁場の変動に応答する誘導磁場が検出される。地下海の存在を強く支持する最初の物理的証拠。
一九九九〜二〇〇〇年
表面の熱画像観測から、最近の地質活動を示す証拠が蓄積される。氷殻の厚さ推定も進み、数kmから数十kmの範囲で議論が続く。
二〇〇三年九月
ガリレオ探査機、木星大気に意図的に突入し運用終了。約八年にわたる木星系探査で、エウロパへの約一〇回以上の近接フライバイを含む膨大なデータを収集。
カッシーニ・ニューホライズンズ・ハッブル
二〇〇〇年一二月
土星探査機カッシーニ、木星系を重力アシストで通過。エウロパの補完的観測を実施。
二〇〇七年二月
冥王星探査機ニュー・ホライズンズ、木星系を重力アシストで通過。エウロパを含むガリレオ衛星の観測を実施。
二〇一二年
ハッブル宇宙望遠鏡による紫外線観測で、エウロパ南極付近からの水蒸気プルーム(間欠泉状の噴出)の痕跡を検出。地下海と表面の間に物質交換が存在する可能性を示唆(後続観測では確認されない場合もあり、現在も議論中)。
二〇一六年
ハッブルの追加観測で、プルームの存在と整合的な観測結果が報告される。
現在進行中の探査計画
二〇二三年四月
ESA(欧州宇宙機関)のJUICE(木星氷衛星探査機)、アリアン5ロケットで打ち上げ。木星系到達は二〇三一年予定。ガニメデへの周回投入を主目的としつつ、エウロパとカリストへのフライバイも予定。
二〇二四年一〇月
NASAのエウロパ・クリッパー(Europa Clipper)、ファルコン・ヘビーロケットで打ち上げ。二〇三〇年前後に木星系到達予定。エウロパに対し五〇回以上のフライバイを実施し、氷透過レーダー・質量分析器・高解像度カメラ等により地下海の詳細な調査を行う。
将来の構想
二〇三〇年代以降
エウロパ・クリッパーとJUICEが木星系で同時稼働する予定。両探査機のデータをもとに、着陸探査(ランダー)の可能性が検討される。
長期構想
氷殻を貫通して地下海に到達するクライオボット(氷中潜行ロボット)と海中を探査する水中ロボット(ハイドロボット)の技術開発が進行中。実現には数十年規模の技術的課題が残るが、地下海への直接アクセスが将来の探査の目標として設定されている。
(2026.5.18 noteにて公開)
