逆依頼!古椿の霊/みどりの妖怪旅日記
今回訪れたのは岐阜県大垣市。
冬の終わりを告げる冷たい風が吹く中、私はこの地に妖怪「古椿の霊」が現れるという話を聞きつけ、やってきました。

早速近所の方々に話を聞いて回るも、収穫はありません。
「古い椿?さあねえ」
と怪訝な顔をされる始末です。
それもそのはず、確かに伝承はあるものの皆が知っているわけではないでしょう。
それもごく一般的に存在する椿についての妖怪など……。
しかし、あてどなく歩いていると、やがて異様な空間に行き当たりました。
巨大な椿の木が両脇に連なる一本道です。落ちた赤い花が地面を覆い、濃密な花の香りが充満しています。

これは怪しい!
気になって、伝承には夜に何かが起きることが書かれていたのを思い出し、夜に再び訪れてみました。
すると大当たり。
暗がりを歩いていると、背後から突然「ねえ」と声をかけられたのです。
振り返っても闇が広がるばかりで誰もいません。ただ、誰かの視線が首筋にまとわりついて離れないという、生々しい感覚だけが残りました。

その日はそれ以上の事は起こらず、次第に怖くなってきたので早足で撤退です。
翌日の夕暮れ時、懲りずに同じ場所へ足を運びました。
間違いなく、何かがある。
いや、いる。
するとどうでしょう。今度は、道の真ん中に三十歳くらいの美しい女性が立っていたのです。
夕日に照らされた彼女は、どこか輪郭が曖昧で、この世のものとは思えない不思議な雰囲気を纏っていました。

「私、古椿の霊なんです」
え……。
唐突な自己紹介に面食らいましたが、彼女の目は真剣そのものです。
私も無限に質問が湧いてきたのですが、なぜか言葉にすることができず、自称古椿の霊さんが一方的に話し始めました。
なんでも、全国に散り散りになった姉妹たちに、自分の無事を伝えてほしいのだとか。
それが叶えば、皆この世界に囚われることなく解放されるというのです。
思いのほかスケールが大きい……。
妖怪からの直接の依頼なんて前代未聞ですが(本当に女性が妖怪や霊の類であるかどうかはこの際ひとまず置いておいて)、断りきれないのが私の性分です。
依頼を請け負うと、彼女は静かに微笑み、私の手のひらに一粒の種を置きました。

そして私が瞬きをした隙に、彼女の姿は夕闇に溶けるように消えていました。
残されたのは、黒く艶めく椿の種だけ。
たぶん、私が全国を旅する妖怪追いだと知っていたのかも知れません。
でも、この種をどうしろと?
次はどこに行けばツバキシスターズに会える?
わからないことだらけですし、まさかこんなRPGなイベントが起こるとは🧐
どうやら私の妖怪旅は、大きな何かに繋がっていくのかも?
