見出し画像

1990年3月 確かにわたしたちはそこにいた 高校の卒業式に出た後に 午後3時過ぎに ラーメンを食べた思い出

 この記事は、約2170文字です。

その日は、電車から降りて、歩いて通学していた わたしたちがずっと気になっていた。昔ながらのラーメン店に、初めて入った。
 なぜ、午後3時まで、食事にありつけなかったのか、今は覚えていない。
 わたしたち、3人は、スクールカーストの下の下にいて、
 告白する男子も、慕ってくる後輩も、卒業式後に集まる「プライベートパーティー」もなかった。
 だから、高校最後の思い出に、イベントみたいなことをしたかったのかもしれない。
 そして、お腹を空かして食べた その、「昔ながらのラーメン」が、今まで食べたラーメンで、一番美味しかった。
 その時、何話したかも覚えていない。
 わたしたち、3人は「就職」して、2人は同じ職場、わたしは別の職場に就職して、離ればなれになった。
 高校にいた時は、毎日のように会えなくなるのはわかっていた。
 でも、この関係はずっとこのままで、ちょくちょく会うだろうなー、と思っていた。
 永遠に続く関係だと思っていた。
 
 そして、わたしの「予想通り」高校卒業しても、2人とはちょくちょく会った。
 半年ぐらい経ち、その友達のひとりは、
 精神的なバランスを崩した

 精神病院に入院しないといけないほどに

 もともと、精神的には不安定なタイプだったし、明らかにウソだとわかる発言もしていた。
 でも、その入院生活を経て、自分の家に戻って来たその友達は、
 以前とは、明らかに違う人になっていた。

 わたしはその当時、地元の美術館で働いていた。
 その友達は、わたしが帰って来る時間をめがけて、毎日のように電話をかけてくるようになった。
 もともと、人にものすごく気を遣うタイプで、以前の彼女からは考えられない行動だった。
 そして、休みの日には会いたがった。
 わたしは、電話で彼女の「現実ではないけど、彼女にとって現実な」話を聞いたし、
 休みの日も、彼女の気晴らしになれば、と、彼女の行きたい場所に連れていった。
 その、恋人同士のような関係は、3年ほど続いた。
 わたしにとっては、ほぼメリットのないお付き合い。
 限界だった。

 わたしは、毎日のように電話をかえてくる彼女に
 「もう、会わないし、電話もかけてこないで!」
 と、言った。
 当然、猛反発されて、泣きおとしまでされたけど、わたしの意志は固かった。
 本当に、恋人と別れるみたいに別れた。

 約、20年後
 彼女は 「自死」 した
 わたしは、永遠に会えると思っていた。彼女にもう二度と、会えなくなった。

 もうひとりの友達とも、ちょくちょく会った。例の精神的に不安定になった彼女と、3人で会うこともあった。
 友達2は、高校時代にできなかった。恋愛に燃えていた。
 転職をよくしていたけど、彼に影響されて買った。
 高級車のローンを払うために、仕事は続けていた。
 その彼とは、お付き合いしていたが、すぐ破局した。
 彼女は、彼のことをずっと思っていて、その男もズルい男なので、たまに会って「体の関係」は、続けていた。
 そして、暇な時間があると、わたしの職場に車で会いに来て、今はない、地元の「ホットサンド」が美味しい喫茶店で、わたしは彼女の愚痴を聞いた。
 その関係は、10年続いた。

 わたしたちが、30になったぐらいの頃に、彼女は
 わたしからお金を借りたい

 と、話を持ちかけた。

 わたしは、彼女にお金を貸したくなかったので、必死に抵抗したけど、彼女はひかない。
 もともと、気が強いタイプで、わたしは彼女の「ワガママ」をずっと聞いていた。
 だから、最終的には根負けして、彼女に「5万円」を貸した。

 お金は返ってこなくて
 彼女との関係も終わった

 風のうわさで、彼女は例の男ではない男性と結婚し、子どもにも恵まれたそうだ。
 よかったと内心ほっとして、
 それから、約10年の月日が流れた。

 今年、新聞のお悔やみ欄で
 彼女の名前を見つけた

 わたしはまた
 永遠に会えると思っていた友達に、会えなくなった。

 例のラーメン店に、
 わたしは、この前再会した「幼なじみ」と、行った。
 もう、36年も経っていたのに、そのラーメン店がまだ営業していたことにびっくりして、
 会えなくなったふたりの友達と、そのラーメン店で卒業式後にラーメンを食べた話をした。
 彼女も同じ高校で、亡きふたりのことは知っていた。
 わたしが、そのラーメンが美味しかった話をすると、
 彼女は食べたいといい
 彼女の車で、ラーメン店にラーメンを食べに行った。

 不思議な感覚だった。
 老夫婦が営むこのラーメン店は、とっくの昔になくなっていると思っていたけど、あって。
 ずっと会ってなかった「幼なじみ」と再会して、ふたりでそのラーメンを食べている。
 彼女とは、永遠に会うだろう だなんて思っていなかったのに。

 ラーメンは、普通に美味しかった。

 お店は、ラーメンの店名の文字はハゲていたけど、それ以外は時が止まったみたいにあの頃のままだった。

 永遠なんてない 頭ではわかっていても、錯覚してしまうこともある。
 そんな錯覚してしまうほど、一緒にいたふたりと、「貴重な時間」を過ごせてよかった。

 わたしもしみじみしていたけど
 幼なじみの友達も
 しみじみしていた。

 ラーメン店のラーメンは、
 変わらず美味しかったけど
 あの日のラーメンが
 一番、美味しかった。




 


 
 

 

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集