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「店を畳んだ職人たち」の羅針盤——伴走型サポートという、気が遠くなるほど不毛で愛おしい時間について

ビジネスの世界には、二通りの「正解」があります。 一つは、あらかじめ決められた場所で、決められた時間に、決められたモノを効率よく作り続けて売るという、実にお行儀の良い正解。 そしてもう一つは、そんな退屈な枠組みからはみ出し、自分がその都度感じたインプットを、最も美しい形で社会にぶつけるという、破天荒な正解。

先日、僕が伴走型のサポートをしている、とある3人の職人チームが「お店を畳む」という決断をしました。

客観的に見れば「閉店」という名の撤退です。でも、僕らの間では違いました。彼らが本当にやりたかったのは、毎日同じシャッターを開ける「商店の経営」ではなかった。日本中の豊かな自然や魅力的な人と触れ合う中で、その都度得られたアイデアや感性を、最適な時に、最適な場所で、最適な形でアウトプットする——いわば、イノベーションそのものを生み出す生き方へと舵を切るための、前向きなリセットだったのです。

彼らのその青く尖った想いにどうしようもなく共感してしまい、「よし、一緒にやろう」とサポートを決めたのが、すべての始まりでした。

「お金ができた瞬間」に牙を剥く、職人のこだわり

とはいえ、彼らはどこまでも純粋な「職人」です。当然ながら、ビジネスの感度はそれほど高くない。 どれだけ素晴らしいアプローチであっても、食べていけなければただの趣味で終わってしまいます。彼らのイノベーティブな活動をしっかりマネタイズし、かつ軌道に乗るまでの資金繰りをどう組み立てるか。

ここからが僕の出番です。何度もミーティングを重ね、頭を突き合わせ、一緒に泥臭い資金調達に走り回り、緻密な実行計画を作り上げました。

そして先日、ようやくまとまった資金調達がひと段落し、当面の軍資金が確保されたのです。「これでようやく一安心、さあ計画を実行に移そう!」……と思ったのも束の間。 人間の心理とは実におかしなもので、お金の不安が解消された瞬間、彼らの中に眠っていた「ある魔物」がムクムクと頭をもたげてきました。

そう、職人ならではの「こだわり」です。

僕らの計画はこうでした。資金はいずれ尽きるし、借りたお金は返さなければならない。だからまずは、できることからスモールスタートで小さなマネタイズを繰り返し、市場の反応を見ながら少しずつ輪を大きくしていく。そして、その輪が十分に大きくなる仕組み(仕掛け)はあらかじめ施してあるから、その決定的な瞬間にこそ、彼らの圧倒的な能力を100%爆発させて価値を最大化させよう、と。

ところが彼らは、その「スモールスタートの第一歩」のクオリティに、尋常じゃない熱量で拘り(こだわり)始めてしまったのです。

ビジネスにおいて、「こだわり」という言葉はいつも良い意味で使われるとは限りません。拘りすぎるがあまり、彼らは最初の一歩を踏み出さなくなってしまった。打席に立たないから、当然、成功も失敗も起きない。PDCAサイクルもPDRも、エンジンがかからないまま完全にフリーズしてしまったのです。

なぜ僕は、「指示を出す監督」にならないのか

これ、コンサルタントやサポートをする側からすると、実はめちゃくちゃ胃が痛くなる、伴走型サポートの「一番辛いフェーズ」だったりします。

ぶっちゃけて言えば、こちらが主導権を握って「四の五の言わずに、まずはこれをこの通りに売ってください!」と命令口調で引っ張るサポート手法もあります。ぶつかる壁があらかじめ分かっているなら、こっちでレールを敷いて走らせた方が、初期段階の数字は圧倒的に早く作れます。

だけど、僕は頑なにそれをやりません。 なぜなら、その「指示待ち」の形で進めたプロジェクトは、最初のブースト期間が過ぎた後、事業者さんが「自走できなくなる」ケースを、僕は嫌というほど見てきたからです。

僕らが関わっているのは、あくまで「彼らの事業」であって、僕の事業ではない。 僕がいなくなった後も、彼らが自分の足で立ち、自分の意志で舵を切り、自走し続けてくれることこそが、サポートにおける唯一のゴールのはずです。

だからこそ、初動の船出がどれだけ頼りなく、イライラするほど時間がかかったとしても、「伴走」という形にこだわり抜く。ここでグッと堪えて波に乗ることができれば、あとは彼らが自らの熱量で勝手に遠くまで走っていってくれると信じているからです。

いざ、新しい航海へ!

というわけで、またしても彼らと膝を突き合わせ、何度も長い長い話をしました。 「クオリティへのプライドは最高だけど、それを出すのは今じゃない」「まずは小さく生んで、世間の風に当ててみよう」と、諭すように、語りかけるように。

スモールスタートが切りやすくなるような細かい仕組みもこちらでいくつも仕掛け、ようやく、本当にようやく、彼らの心が「やってみるか」と前を向きました。

いよいよ、最初のアウトプットの形と、スタートする日が決まりました。 ここまでの遠回りは、決して無駄な時間ではなかったと、彼らの引き締まった表情を見て確信しています。

さあ、仕込みはすべて終わりました。 これから彼らがどんなイノベーションを社会にドカンと撃ち込んでくれるのか、今から楽しみで仕方がありません。

いよいよ、これからです!

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