ウルトラウォーカー東海道五十三次の旅 -自分の限界と向き合った前編-
速報から間が空いてしまいました。
そうこうしているうちに一気に涼しくなりましたね。
私が東海道を歩いてからまだ1ヶ月も経っていないのですが、この変化の速さは体調にも響きますね。
では本編スタートです。
計画とテストランは以下の記事をご覧ください。
1日目(由比~焼津)
サマリ
当初はテストラン(箱根湯本~沼津)の続きで沼津から始めようと思っていましたが、テストランの結果から一日の距離を見直しつつ、しかし薩埵峠は越えたいということで由比からのスタートとしました。
よって今回1日目は由比~焼津のルート(黄色線)を計画。
早速ですが、実績が橙線です。
テストランもそうですが、頭の部分がなぜか記録できていないことが何度かありました。またその他一時停止からの計測漏れなどもあるとは思いますが、厳密にやるつもりもないので大目に見ていただければ幸いです。
またチェックポイント黒色が今回訪問済みの宿場(の代表地)、青色が未踏の宿場(の代表地)を示します。
というわけで、今回この区間で踏破できたのは由比宿~府中宿のみでした。

由比宿(静岡県静岡市清水区)
朝、由比駅に向かう際に天気予報を見ました。
おいおい、なんだいこの天気は?
開始早々、笑えない暑さです…

朝の駅構内ですが、既に暑くなりそうな気配がプンプンします。
ほぼ無人駅、じっくり荷物整理をし、誰の目も気にせずじっくりと準備体操をしていざスタート。

由比駅前の歩道橋を抜けて旧東海道へ。
空は雲一つない晴天。
あまり風も吹きません。

由比宿旧東海道の雰囲気はこんな感じ。
しばらく行くと由比の西倉沢の一里塚。
ここから本格的に薩埵峠に入っていきます。
薩埵峠と言えば、東海道三大難所の一つにも数えられることがあります。近代以前は海の近さから高潮で通行が困難にあることが多い、そんな難所。
一方で我々がよく目にする写真、駿河湾と左富士の見事な「ザ・東海道」な光景が見られるはず。そんな期待に胸膨らませて急坂を登っていきます。

ここで江戸から160kmとのこと

まだ8時台ですが急斜面と暑さで嫌でも息が上がります。
歩くこと20分くらい、意外と早く着きました。
距離自体は大したことなかったですが、とにかく暑くて体力が消耗します。
到着するやいなや来た方向を振り返ります。
しかし富士方面は雲がかかっており期待した景色は見えませんでした。
皆さんはぜひその景色を見てみていただきたいものです。

富士方面は雲がかかり期待した景色は見えず…残念

期待した光景を見ることかなわず、またスタートして間もないため感慨もありません。
駐車場付近は日影もないため、まさに「焼け着く」といった感覚がぴったりな暑さ。そんな暑さに耐えきれず先を急ぐことにしました。

由比側は舗装や除草がしっかりとしており車が通れます。
そのため歩くストレスは少なかったのですが、興津側は真逆です。
足元は草ボーボー、人が通れるほどの幅しかありません。
ぼーっと歩いていると顔に枝やクモの巣がかかります。
(虫嫌いの私にはクモの巣がかなりきつい…)
県境や山を超えると整備状況がまるで異なるなんてことはよくあります。なので管轄が違うのかなあなんて思いましたが、両方とも静岡市清水区。
ただの推測ですが、本来の薩埵峠はこうなんでしょうね。
興津側の方が険しく、海沿いには道を作れないと。

時間も忘れるほど鬱蒼とした山道を降って興津方面へ出ました。
距離自体は大したことないのですが、難所と呼ばれる理由はよくわかります。
そして相変わらずの暑さ。
たまらずコンビニで休憩を入れます。

興津の次に目指すは清水駅方面。
少しでも暑さをしのげそうなルートで向かいました。
江尻宿(静岡県静岡市清水区)
清水駅前の魚市場は…なんと水曜定休。こちらも残念。
しかし魚市場を超えた先にある宮本商店さんはばっちり営業されていました。どうしても清水ではお魚を食べると決めていたので、ありがたい限り。

しかし宮本商店さんでマグロ丼をいただきました
宮本商店さんで食事休憩しつつ、この先の道程を確認します。
この暑さの中、先が長すぎて気が重い。
軽い頭痛を覚えて熱中症であることを自認します。
静岡駅で終わりだったらもう少し頑張れそうなのですが、岡部など超えて焼津まで向かうルートを設定していました。
静鉄に乗って静岡駅までワープしてしまいたい…今思えばこんな日にはそんなイカサ…柔軟性も必要だったのかもしれません。

電車に乗りたくなる気持ちをこらえて静岡駅方面へ向かいます
清水方面から草薙を抜けて静岡へ向かう道はまっっすぐな一本道。
太陽が高くてロクな日影もありません。

特に1号線に出ると地獄の暑さです
府中宿(静岡県静岡市葵区)

命からがら静岡駅、駿府城公園へ到着しました。
ここで異常な暑さと発汗に命の危険を感じてリタイア…
静岡駅からは電車で宿泊地の焼津へ向かいます。
残念ながら鞠子宿と岡部宿はパスです。
予想以上の暑さに見舞われたとはいえ、開始早々での挫折に自信喪失。

リタイアしていなかったら見られなかったかも。
予想外だったのは、午後すぎの時間はまともな日陰すらないこと。まあないわけではないのですが、東海道を上るということは午後は正面から日を受けることが多くなります。
焼津(静岡県焼津市)

思いもしませんでした。

とりあえずホテルへチェックイン、汗を流して冷房の効いた部屋で横になり休憩します。
まずは体調回復。
それでも明日はやってきます。
明日も進まねばなりません。
洗濯と夕食のために外へ出ます。



美味しいものを食べて気力を回復
1日目の感想と気づき
覚悟の上だったのですが、前日の夜にイベントがあったため寝不足でした(4~5時間)。
スタート地点までの長い移動もありました。
熱中症の症状としては頭痛と異常な火照り、酷い発汗。
疲労と寝不足からくるひどい眠気で思考停止。
一方で足腰は全然大丈夫です。
所詮一人でやっているのでいくらでも手は抜けます。
しかし普段の私はなかなかそれが苦手です。
「今日はやめよう。この先の宿場は諦めよう」
「引き際」を見極める。
やめる勇気が必要でした。
この日歩いた由比駅から静岡駅は26km程度しかありません。
「この程度でなにがウルトラウォーカーだ」
自分を責めました。
結果をありのまま公開するのも勇気がいりました。
「この暑さの中でよく粘り強く歩いた」
がんばった過程、ありのままの自分を認める心が必要でした。
寝不足は活動の大敵。
ウルトラウォーカーのキモは環境への適応力、準備力。とはいえ普通の人、暑さへの耐久には限界もある。
自己管理、引き際の大切さ。
歩いた距離はただの結果。がんばった自分を認めること。
2日目(島田~浜松)
サマリ
本来の東海道は岡部を超えて藤枝ですが、ある程度自由に旅をしたいので焼津に寄宿としていました。
一方で距離調整のために、焼津から島田までは電車移動としました。
なので宿場としては藤枝をスキップし、島田~浜松を計画していました(黄色線)。
実績は橙線。
この日も残念ながら完走ならず。
この日は最も体力的に限界でした。
歩けたのは島田宿~掛川宿まで。袋井宿、見付宿は未踏。

島田宿(静岡県島田市)
さて2日目。
前日の晩は少しでも身体を冷やすために冷えピタを貼ったりしながら眠りについたわけですが、朝起きたらあまりの体の怠さにがっくり。
しかし旅はまだ始まったばかり、心を無にして身体を起こし、朝食のパンをつまみます。
前日のようなカンカン照りではありませんが、天気予報は「猛暑時々曇り」。気温と湿度はしっかりあります。
実際場所によっては風で涼しさを感じる場面もあったので、「昨日よりはかなり歩けるな」。これが序盤の感覚でした。

計画通りこの日は島田まで移動してからのスタート。
平日の島田駅はたくさんの中高生で溢れていました。
島田の旧東海道は大井川川越遺跡を中心に楽しいところでした。
個人的にまたゆっくりと訪れたいです。
「遺跡」と名がつく通り、東海道の3大難所とも言われた大井川の渡し、その渡しで生計を立てた人々の暮らしが伝わってきます。



川越人足に料金を支払い、人足が引く蓮台と呼ばれる乗り物に乗って渡河します。
支払う料金によって複数のランクの中から割り当てられます。
最も安いランクは蓮台ではなく肩車。
最も高いランクになると梯子の上に駕籠が乗った「大高欄蓮台」と呼ばれるものになり、駕籠に乗ったまま渡河することが可能です。


蓮台に乗って写真撮影OKです。

かなり水量が少ないです。

金谷宿(静岡県島田市)
大井川を渡りしばらく進み、金谷駅あたりから急勾配の登り坂。
「旧東海道 石畳入り口」という看板から山へ入っていきます。

箱根よりは短く、だいぶ歩きやすかった印象です。
金谷坂は健脚であれば勢いのまま登り切れるくらいの短さ。
金谷坂を抜けると茶畑が広がります。
そして菊川坂の大きな降りが始まります。
金谷坂と比べて快適とは言えない菊川坂の石畳ですが、江戸時代に整備されたまま残るものです。


降り坂の方が足にダメージがきます。

当初はこの後1号線へ合流し、中山新道から掛川へ抜けるルートを引いていました。
しかし東海道の難所の一つ「小夜の中山」を見落としていたことに気づいた私は急遽ルート変更。小夜の中山を通って次の日坂宿に向かうことにします。
この小夜の中山がとんでもない急勾配なのです。
なんとなく撮った写真でもその勾配が伝わる気がします。

頂上、というわけにはいきませんが、中腹まで登ると勾配はひと段落します。そんな場所には「中山の茶畑」。
この景色の爽快さは登った人にしか味わえないでしょう。
茶畑を過ぎると再びの急勾配。
大粒の汗を流しながらゆっくりと登っていきます。


こんなところで育ったらさぞ健脚なんだろうな~
久延寺前の接待茶屋跡で腰を下ろして一休みします。
がんばって登ってきたせいか、この日も強い火照りを感じます。
拭えども拭えども汗も止まりません。
幸い天気で言えば予報よりずっと曇りなのですが、時間とともに着実に気温は上がっている気がします。
昨日の疲れもあるでしょう。
強い疲労感を抱えながら進んでいきます。


いよいよ日坂宿に近づいてきました。
なんて思う暇もないほどの急な降りが始まります。
金谷側が十分急なのに、日坂側は歩けないほど。
思わず小走りになりますが、走り出したが最後、勢いがついて簡単には止まれません。
日坂宿(静岡県掛川市)

日坂宿を出た後はますます疲労感が強くなり、頭痛や吐き気など体調に異変が起こりますが、掛川駅付近までは行くしかありません。
掛川宿(静岡県掛川市)
めまいや吐き気をこらえて一時間くらいでしょうか、なんとか掛川城までたどり着き、ベンチで倒れ込むように横になります。こんな場所で心苦しいですが、幸い誰もいないのでしばらく靴も脱いで休憩させてもらいました。
この時はとにかく身体を回復させることだけを考えていました。
残り距離がどうとか、今日どれくらい歩いたとか、そんなことを考える余裕はありません。旅を続けるために、無事に自分一人で今日の宿へ向かわなければいけないのです。
そのためにまずは動けるように回復せねばなりません。
頭がガンガンして意識がとびそうになりますが、意識をつなぎとめるように深呼吸を繰り返します。
たまーに他のお客さんが通りがかる度に身体を起こしてみます。
奇異の目で見られたくないというのもありますが、まず通報されたらたまったもんじゃないですし、救急車を呼ばれても旅は終わるかもしれません。この期に及んで周囲の目も気にしていました。

2~30分は経ったでしょうか。なんとか自力で駅までは動けそうになったのでよろよろと掛川駅へ向かいます。
そしてこの日の宿泊地の浜松まで電車で向かいました。
浜松宿(静岡県浜松市)
気づけば時間はお昼どき。
浜松駅ではラーメンを食べて生まれ変わったような気分になりました。エネルギーが体に満ち満ちていく感覚。
これが答え合わせ。
昨日からの疲れに加えて難所続きからくる発汗、それに伴い塩分不足による熱中症と推測しています。

この日の朝は持参した塩タブレットが底をついたタイミングでした。どこかコンビニで補充できればと思っていたのですが、意外とこれが見つからないんです。まとめて持ってくるにも荷物の問題があり難しい。
そうこうしているうちにコンビニもない難所に突入してしまいました。
島田~掛川間の旧街道はコンビニすらほとんどありませんでした。
塩分、ミネラルが欠乏する→体内の塩分濃度が下がる→水分の吸収効率が落ちる、の悪循環。難所超えでたっぷり汗をかいた身体は吸収のいい経口補水液かそれを助けるタブレットなどからとらないといけませんね。
塩分不足は危険だ、そんなことわかりきっていたのですが、それでも思考力が落ちて自分ごとになってしまいました。
まだ怠さはありますが、少し元気になったので浜松駅から浜松城まで歩いてみます。


早いですがホテルへチェックインして汗を流します。
エアコンの効いた部屋で横になり休憩します。
命の安全を確保できたので、今日の行程を振り返りました。
この日踏破できたのは結局島田~掛川間の20km程度。
事前計画済みの焼津~島田のみならず、掛川~浜松間(袋井宿、見付宿(磐田)もパスせざるをえませんでした。
昨日に続き綿密な事前の計画からは程遠いボロボロな結果。
ウルトラウォーカーとはなんだったのか…
いままでリタイアしたことなかったのに…
明日もだめかもしれない…
どんどん自信がなくなります。
メンタルをやられながらも晩御飯の時間になりました。
浜松では絶対に餃子を食べると決めていました。
なので晩御飯はホテル近くの餃子屋「餃子の大福」さんへ。

にんにくとにらのパンチがありますが、甘めの餡が特徴的だなと思いました。
お腹一杯まで自分を甘やかしました。
ビールとげんこつ餃子定食。
今振り返るとこういう自分を甘やかすポイントをちゃんと計画の中に入れておいたのはよかったと思います。
「ストイックにやる中に遊びを混ぜる」とはこういうことでしょうか。
美味しいものをお腹一杯食べるとすっきりするものです。
計画はしたけども、旅はもっと自由でいいはず。
距離志向はやめて、限りある時間、限りある体力で徹底的に楽しむことを考えよう。
そう少し前向きになれて眠りにつきました。
2日目の感想と気づき
蓄積疲労、熱中症の恐ろしさと食事・休養の重要性。
引き際を知る。悔しい気持ちは大事にしながら。ただ自分はいつも限界を超えるまでやってしまう。引き際で引いてもそれまでの頑張りがなくなるわけではない。がんばってるのは自分が一番良く知っている。
うまくいかないこと、思い通りにいかないことも旅の常。旅はもっと自由でいい。限りある時間、限りある体力でどう楽しむか。
ストイックにやる中に「遊び」「楽しみ」を混ぜる大切さ。この楽しみが自分をつなぎとめてくれた。
ここまで読んでくれてありがとうございました。
とにかく苦しみぬき、ウルトラウォーカーとしての自信がズタボロになった前半戦。
人間、適した環境の下でないと自分の本来の力は出し切れないが、普通は環境は選べない。
それを身をもって体験したこの2日間でした。
よーく
