芋出し画像

🔷【27話】倩䞊の楜園・この胞に宿る願いナりタ

恋は熱病のようなものだず蚘したのは、遠い異囜の詩人か哲孊者か。

女は口説き萜ずすたでが最高にスリリングなお遊びだ。この手に萜ちおきたず感じる高揚感。だが、ひず時それを味わった埌に残るものは色耪せた倊怠感。

サチずいう熱病は、自分を芋倱うほどに俺の心を狂わせた。

熱が冷めたず意地悪く蚀ったら、圌女はどんな顔をみせるのだろう。

い぀もの色恋沙汰なら、これでゲヌムオヌバヌ。この先にどんなドラマが展開されるのかなんお考えた事もなかった。

だけどサチを知っお、俺は党く免疫のない未知の領域に䞀歩螏み蟌んでしたった。曎なる埌遺症が俺を蝕む。

熱が冷めたず意地悪く告げたなら、サチはどんな顔をみせるのだろう。

悲しみを秘めた県差しを投げおくるのだろうか、それずも肩をすくめお仕方がないず笑っおおどけお芋せるのだろうか。そっけなく流されたらず思うず、冗談でもそんな事を口にする勇気はない。ただ、やみくもに求める熱が匕けた埌、意倖な感情が芜生え始めた。

サチが癒しおくれた矜は、どんな高芋たでもはばたかせる力を䞎えおくれる。そう、圌女はそんな倢を芋せおくれる。

俺は今たで誰かのために頑匵ろうだなんお思った事などなかった。たしおや䜕の為に生きるのかなんお、小指の先皋の思想も持ち合わせおはいない。

だけど海ず空だけに抱かれた小さな島での䞀週間は、俺の行く先に、䞀筋の道を瀺しおくれた。

肩を寄せ合い黙っお芋詰めるスコヌルの雚粒。
ディナヌのテヌブルから拝借した果物を、ベッドの䞊で分け合う長い倜。

サチは目が芚めるずよく、さっきたで圷埚っおいた倢の話を聞かせおくれた。それは䜜り話ではないかず思う皋に物語性があった。寝がけた口調のたた、ビヌ玉の瞳だけはピカピカず茝かせ、圌女は語り始める。


ドヌニでね、ずっずずっず旅をするの。
そうするずね、怰子の朚が䞀本だけ生えた小さな島に蟿り着くのよ。

服のポケットに小さな皮が沢山入っおいお、それをひず぀ず぀指であけた砂浜の穎に萜ずしお怍えるの。

そうするずね、薔薇が花を咲かせるの。ほら、ヒロのベランダにあったような倧茪の薔薇。

アダムが色々な島のハネムヌナヌから泚文を聞いおきおね、ナりちゃんずブヌケを䜜っお暮らすの。

モルディブの䞀番小さな島を、薔薇でいっぱいにしちゃうんだよ。



サチに察しお芜生えたこの想いを岡郚に告癜したら、アむツはなんお答えるのだろう。

無芖か 攟眮か 倱笑か

戯蚀を口にするのは䞀人前になっおからにしろず、䞀喝される事だろう。

レスリヌ・ラりの映画でそれなりの評䟡を埗られたならば、岡郚も耳を傟けおくれるかもしれない。


コマヌシャルの新バヌゞョン撮圱で、再びスタゞオ入りをしおいる時だった。い぀の間に入り蟌んだのか、北原プロデュヌサヌが岡郚の隣に立っおいた。劙に深刻な顔で話し蟌んでいる。どうしたっお蚀うんだ 信じられない事に、あの北原さんが䜕床も岡郚に頭を䞋げおいる。気がそれたせいか、ステップを間違えおNGを出しおしたった。

䌑憩に入り䞀歩セットから足を螏み出すず、顔銎染みになったダンサヌ達がどっず俺に矀がっおきた。

「ねぇナりタぁ、今日皆で飲みに行くんだけど、ちょっずだけでも顔出さない」

「岡郚さんにはあたし達が䞊手く誀魔化しおおくからぁ  ねっ」

「ナりタ、すっごい、いい色に焌けおるよね。どこのサロンに行ったの あたしも連れおっお欲しいなぁ」

おいおい、確かに数回面識があるけれど、俺はアンタ達の友達でも䜕でもねぇぞ 銎れ銎れしいんだよね。しかも名前呌び捚おかよ。

心の䞭では悪態を぀きながらも、顔は営業スマむルで適圓に誀魔化す。䜓裁だけは申し蚳なさそうに、岡郚ず打ち合わせがあるからず断り、服の裟を掎む指先を擊り抜けお歩き出す。

近寄っおきた俺の姿を認めるず、岡郚ず北原さんはぎたりず䌚話を止めた。

「お久しぶりです」

そう挚拶をする俺に、北原さんはすがるような県差しを投げおくる。

「䜕かトラブルですか」

「いや、たぁそうなんだ。緊急の盞談でね、迷惑をかけお申し蚳ないんだが、ずにかくここは桂朚君にお願いするしかないず思っおね。盎接頌みに来たんだ」

北原さんは固い衚情のたた、俺に深々ず頭を䞋げおよこした。

「いや、北原さん、そんな」

頭を䞋げたたたの圌の頭䞊で、俺は岡郚に目配せをした。どうしちたったんだよ このおっさん。

「了解したした、北原さん。スケゞュヌルを調敎したすが、本番ギリギリの局入りになりたす」

岡郚の台詞に、北原さんの衚情がふっず緩んだ。

「いや、もう桂朚君ならぶっ぀け本番でも、安心しおカメラを向けられるよ。むンタビュアヌも映画評論家の垂川竜之介先生にお願いする予定だから」

垂川竜之介。映画雑誌の線集長も務める倧埡所だ。

「䌑憩が終わるぞ、ナりタ。この話は埌で俺からゆっくりず説明するから、今は集䞭しろ」

じろりず睚たれ、はいはいず芖線を返す。

きっず、レスリヌ・ラり監督の新䜜に぀いおのむンタビュヌを受けるのだろう。話の党䜓像は芋えないたただったが、岡郚が他の予定を調敎しおたで受けるず蚀うのならば異論はない。

じゃあ、ず䌚釈をしお螵を返すず、「桂朚君っ、恩に着るよ」ず北原さんは、安堵した口調で蚀葉を投げおきた。

「ただ、ひず぀条件があるのですが  」

歩き始めた俺の背埌から、がそりず声を萜ずした岡郚の蚀葉が耳に届く。どんな泚文を北原さんに突き぀ける぀もりやら、盞倉わらず抜け目のない野郎だぜ。

肩をすくめお電車のセットに向かう。前回ず同じ、車䞡を暪から切り開いたようなセットだ。立ち䜍眮にスタンバむするず、腕に足に銖筋に女達の指が絡み付いおくる。

「そのたた動かないでっ、じゃあ本番行きたす。音楜スタヌトっ」

゚レキギタヌの前奏が響き枡るず、女達の手が俺の背埌で劖しげに舞う。そう、さしずめ俺は䜕本もの女の腕を持぀阿修矅ずいったずころだ。

䞊等なドレスを纏った女達は、車䞡の䞭を気たぐれな蝶のように舞いながら、むダホンを぀けた男達ぞ口付けを萜ずしおいく。唇の痕を頬や額に刻たれた男達は、だらしなく口元を緩たせ、盞手にされなかった者は肩を萜ずしお座り蟌んでいた。

その䞭の䞀人、寂しげにがんやりしおいる冎えない男に、俺は自分のワむダレスむダホンを差し出しおやる。

電車のドアが開く。女達を匕き連れお䞋車する俺の背埌では、さっきの男が幞せそうに音楜を聎いおいた。

『ハヌトのリズムが鳎り響く』

最埌に商品のむダホンがアップで映し出される。

撮圱は順調に進んだ。予定より少し早くのサむンが出るず、スタゞオ内に拍手が湧きあがった。

芋芚えのある男がペットボトルを手に近づいおくる。壇プロダクションの河田ずいうスタッフだ。

「岡郚さんは自宅の方に取りにいくものがあるっお事で䞀床垰られたしお、代わりにT局に入るたで私が桂朚さんに付くよう蚀われたした」

ぞ 岡郚の奎、䜕か忘れ物でもしたのかよ。珍しい事もあるもんだ。手枡されたスポヌツドリンクに口を぀ける。きっず、気を぀かっお売店で買っおきおくれたのだろう。

あ、やっぱ俺この匂い苊手  。たかがスポヌツドリンク、されどスポヌツドリンク。モノによっお埮劙に銙りが違う。岡郚の野郎、抜けるならコむツに俺の奜みを蚀い぀けおから行きやがれ。

倧した事じゃない。だが、こういう時に思い知らされる。

食欲のない朝に甚意される䞭華粥、うたた寝した膝に掛けられるブランケット、眠れない倜に差し出される、ブランデヌを少し垂らしたホットミルク。

たるで䞖話焌き女房だなず、苊笑いを噛み殺す。

いよいよ銙枯ぞは来週出発だ。途䞭、沖瞄でのロケなんかも入るが、東京には二カ月は垰っおこられないだろう。サチに䌚えないず思うずチクチクず胞が痛むが、そんなおセンチな事を蚀っおいおは男がすたる。

俺が登っおいく階段は、これからより深い意味を持぀のだ。頌むぜ、岡郚ちゃん。俺を癟幎に䞀人のスタヌにしおみせるず、ほざいおくれたよな。途䞭で芋捚おたりしおくれるなよ。振り払っおも、俺、しがみ付いちゃうからね。

アンタずいう道しるべがなければ、俺は迷子になっちたうんだ。そしおサチが呜を吹き蟌んだ矜で、アンタが指差す堎所ぞず、高く高く舞い䞊がっおみせる。


T局の控え宀に入るず、慌ただしく身支床を敎える。

「岡郚は」

「北原プロデュヌサヌず、ただ打ち合わせ䞭みたいです」

䜕だよ、埌で詳しく説明するっおアむツ蚀っおたよな 今日のむンタビュヌ、生攟送なんだろうが、こんなんで倧䞈倫なのかよ。俺の苛立ちが䌝わるのだろう、河田がおろおろした顔でこちらを窺っおいる。

「桂朚さん、そろそろスタゞオの方に  」

局のスタッフに呌ばれ、控え宀から廊䞋に出た時だった。開いた扉の脇に岡郚が立っおいた。

「んっだよ、遅せぇよ岡郚っ。䞀䜓䜕しおやがる」

「スタゞオに入るたでには話し終わる。歩きながら話すぞ」

涌しい顔しやがっお、苛立っおいる自分が銬鹿みおぇだな。枋々ず䞊んで歩き出す。

「今回の番組は、話題になったアゞア映画や俳優を玹介する䞀時間モノの特番だ。生むンタビュヌに充おられた十五分は、元々りォン・リヌの予定だったんだ」

りォン・リヌ あのアゞアを代衚する若手俳優の

「今日、薬物所持で捕たった。この番組に出挔する為、成田に到着した時にだ。ファヌストクラスならスルヌだずでも勘違いしおたらしいな」

「マゞかよ」

飛行機にわざわざ持ち蟌むなんざ、正気の沙汰じゃねぇな。

「結構、爜やかなむメヌゞを売りにしおいたからな。圓分は衚舞台に出られないだろうな」

あ、そういう事。未来がなくなった圹者の出番など、ワむドショヌ以倖にはなくなっちたったっお蚳か。

「た、それで急遜お前に癜矜の矢が立ったっお蚳だ」

「北原のおっさん、この俺を代圹にしようなんお随分いい床胞しおるのな。最初から俺の特集にしずきゃいいのによ」

「お前がレスリヌ・ラり監督の映画に出挔する話は、ただ公衚しおないからな。北原さんはたたたた䞀昚日おずずい、壇瀟長ずゎルフに行っお耳にしたんだ」

「口が軜いな、りチの瀟長さんは」

「映画に぀いおのむンタビュヌは、以前、シミュレヌションした事があっただろう。あんな感じでやればいい」

「ぞいぞい」

さっさず終わらせお早く垰りたいぜ。

「プラむベヌトな質問もあるかもしれないが、答えは適圓にお前に任せる」

「は」

プラむベヌトっお  。

「桂朚さん、こちらにスタンバむお願いしたすっ」

よく意味が掎めないたたスタゞオに足を螏み入れた途端、急かされ、セットの゜ファヌに案内される。

おい、適圓っお、䜕の話だよ スタゞオの隅で腕組みをしながらこちらを芋おいる岡郚に芖線でそう蚎えおみたが、今曎答えが返っお来る蚳もない。


「桂朚さん、どうぞ本日はよろしくお願いしたすよ」

先にスタンバむしおいたむンタビュアヌの垂川竜之介に声を掛けられる。

「あ、こちらこそどうぞよろしくお願い臎したす。バタバタず寞前のスタゞオ入りで申し蚳ありたせん」

「いや、北原プロデュヌサヌがホッずしおいたよ。君なら安心だっおね。でも驚いたな、レスリヌ・ラり監督のご指名がかかったんだっお 今日のむンタビュヌは僕個人ずしおも興味深いよ」

六十代くらいだろうか。短く刈り蟌んだ癜髪亀じりの髪に、トレヌドマヌクの倪い黒ブチのメガネ。駄䜜に察しおは、ずこずんこき䞋ろす事で知られる蟛口の映画評論家だ。真っ盎ぐ向き合うず虚栄など匕き剥がされおしたいそうな県光に緊匵が走る。

「じゃあ、本番行きたす」

おいおい、リハヌサルをやる暇も無しかよ。

深く息を吞い蟌み目を閉じお肩の力を抜くず、がんやりず瞌の裏に浮かんでくる情景。溶けるように青く柄んだあの海がよぎる。頭䞊から降り泚ぐラむトが熱いほどに俺を照らし出す。だけど南囜の陜射しのように、肌を焊がす事はないだろう。

「こんばんは、垂川竜之介です。今倜は掻躍の堎を広げ、䞖界に矜ばたこうずしおいる期埅の星、桂朚ナりタさんにお話を䌺いたいず思いたす」

スタヌトの合図ず共に、物慣れた様子で圌は話し始めた。このおっさん、いい声しおるよな。そんな事を頭の隅で思いながら、蟛口評論家に向かい合う。い぀の間にか、この察談を楜しんでいる自分がいた。

「桂朚さん、レスリヌ・ラり監督のご指名で新䜜ぞの出挔が決たっおいるそうだね」

「えぇ、圹どころは日本人です。撮圱は再来週から銙枯で始たりたすが、沖瞄でのロケも予定されおいたす」

「ハリりッドでも垞連のアゞアンスタヌ達ず共挔するわけだけど、そこいら蟺の心構えずかは撮圱を目前にしおどう感じおいるのかな」

「日本ではアむドル時代から十幎皋のキャリアがあり、それなりに名前も知られおいたす。顔を出すだけで喜んでくれる人もいる。けれど向こうでは党くの無名です。なんの先入芳も持たない芳客を盞手に、れロから自分を詊せるいい機䌚であり、詊緎でもあるず思っおいたす」

話はレスリヌ・ラりの映画から最近のアゞア映画ぞず広がり、気が぀けばカメラを向けられおいる事も忘れお倢䞭で語っおいた。

「いや、君ずここたで熱く語り合えるずは感激だな」

話がひず息぀いたずころで、垂川竜之介がそう口にした。そろそろ残り時間も少ないのかなず思ったら、圌は意倖な蚀葉で話を繋げた。

「ここで玠顔の桂朚ナりタを玹介すべく、お借りした写真を䞀枚玹介したいず思いたす」

ぱっず背埌が明るく照らし出された。

䞀䜓䜕事かず心の䞭ではうろたえおいたが、その動揺を抌し隠しおゆっくりず振り向いおみた。

これっお  さっき瞌の裏を挂っおいたあのブルヌ。四角く切り取ったモルディブの海が、すぐそこで揺れおいるようだ。倧きく匕き䌞ばされた写真が䞀枚、額に入れられ、朚補のむヌれルに立おかけられおいた。

サチが俺の隣で笑っおいる。圌女らしい屈蚗のない笑顔。

あれ でも、この写真を芋るのは初めおだ。

デゞタルのこの時代に、特別な写真はあえおフィルムを䜿うこだわりを俺に教えた垫匠は岡郚だ。

“他の奎の目に、觊れさす蚳にはいかないだろう”

垰囜した途端、自分が珟像するからず、岡郚にフィルムを取り䞊げられた。

ただ䞀枚も芋せおもらっおいない。

この写真  確か波打ち際に座る俺達を、わざわざ海のほうからアダムが撮ったや぀だ。片蚀の日本語で冷やかしの蚀葉を投げおくるものだから、サチず二人で笑いが堪えきれなかった。

写真、倧した出来じゃないか。こうしお芋るず、プロのカメラマン顔負けの腕前だな。

広がる海が透明なあおいれリヌのようだ。

ホワむトサンドが溶け蟌む波打ち際は、絶劙なグラデヌションを描いおいる。

アダムに向かっお飛ばした氎飛沫が、光を匟いお空䞭に浮かんでいた。

そしお、子䟛みたいにはしゃぐ俺ずサチの顔が䞊んでいる。

䞀瞬にしお心は、遠く離れた南囜の楜園ぞず飛んでしたった。はっず我に返り、正面に芖線を戻した俺に、カメラが近づいおくる。

  岡郚の野郎、やっおくれるよな。

“答えは適圓にお前に任せる”

いいのかよ 俺、サッちゃんに関しおはちょっず深いずころたで語っちゃうよ。

「今日の゚ンディングを食る桂朚さんのプラむベヌト写真を番組偎がお願いしたずは聞いおいたんですが、私、今、初めお目にしたした。いや、玠晎らしい写真ですね。こんな衚情を是非、映画のスクリヌンでも芋たいものですな」

「えぇ、今たで螏み蟌んだ事のない色々な圹柄に挑戊しおいきたいですね」

さらりず返しおみる。

「隣に写っおいるのは恋人かな 君にこんな顔をさせられるんだ。倧した女性だね」

サチに぀いお觊れないのは䞍自然ずいうものだろう。圌は軜いゞャブを仕掛けおくる。ありがたい、そうきおくれるずは願ったり叶ったりだ。

「えぇ、最初は僕の片思いでした。誰かを愛するずいう深い感情を教えおくれた人です。圌女を知っお初めお、自分の挔技の浅さを思い知らされたした。この気持ちを知らずに、䜕を挔じおきたのだろうず。
これからスクリヌンの䞭で誰かを愛する時、きっず僕は以前ずは違う芖点で挔じる人物の心に寄り添えるず思うんです。それがレスリヌ・ラり監督の映画にどう生かされるのか、自分自身楜しみにしおいたす」

「うん、圹者の仕事は他人の人生を挔じる事だからね。経隓のない感情に、想像力で近づくこずだっお求められる。だが、自分の䞭に生たれた本物の感情は、挔技にこれたでずは違う奥行きを䞎えおくれる。䞀生それに気付かない圹者も沢山いる。
だが桂朚君はそれに気付いた。いや、その女性に知らされたずいうべきか  。それにしおも君の片思いから始たった恋ずは、珟実は小説より奇なりっおや぀だね」

垂川竜之介がたじたじず写真をのぞき蟌む。

「それにしおも、この写真のブルヌは玠晎らしいね。空や海の青をどう衚珟するか。それに心を砕く芞術家は沢山いるんだ。映画監督の名の埌にブルヌず぀けお、その䜜颚を衚すこずさえある。䞀䜓䜕凊に行ったら、こんな色圩に巡り䌚えるのだろうねぇ」

「倩䞊の楜園です」

「えっ」

「こんな倩䞊の楜園が、地球にはポツリず忘れ物のように存圚しおいるんですよ」

圌はしばらく黙り蟌むず、ふっず県鏡の奥の目を现めお埮笑んでみせた。

「本圓に今倜は楜しかった。はっきり蚀っお桂朚君の印象が倉わったよ」

どう印象が倉わったのか、倚くを圌は語らなかった。ただ、身を乗り出しお差し出された手を握り返すず、その手は倧きく、そしお熱かった。

それでもサチの話は俺なりに緊匵しおいたのだろう。ディレクタヌがOKのサむンを出し、カメラの芖線を感じなくなった途端、どっず汗が吹き出した。立ち䞊がり、垂川氏に頭を䞋げるず、圌は再び倧きな手のひらで俺の肩をポンポンず叩いた。

「銙枯での撮圱を終えたあか぀きには是非、りチの雑誌で再び僕ず察談させおくれたたえ」

おざなりの挚拶ではない事が、その口調から䌝わっおくる。

「もちろんです」

再び俺は頭を䞋げるず、岡郚に向かっお歩き出した。隣には満面の笑みをたたえた北原のおっちゃんが立っおいる。歩み寄る俺の姿を認めるず、北原さんはパンパンず拍手を送っおきた。

「いや、驚いたよ。きっずこれから局ぞの問い合わせが殺到するだろうな。それにしおもさすが桂朚君だ、玠晎らしい察談だったよ。

それに個人的にもお祝いさせおもらいたいな。君は玠晎らしい女性を射止めたようだね」

その蚀葉に呚囲のスタッフが拍手を重ねおきた。

「桂朚さん、あの写真、䜕凊の海ですか 今床私も行っおみたいです」

顔銎染みのアシスタントディレクタヌの女の子が、そんな質問を投げかけおくる。

「こらこら、むンタビュヌは終わったんだし、質問は䞀切犁止だ。ワむドショヌじゃないんだからな」

北原さんが咎めるような口調で制した。女の子はびくりず肩を揺らし、口を぀ぐんでしたった。鬌の北原プロデュヌサヌにお叱りを受けおは、恐瞮するっおもんだ。

俺は圌女の前を通り過ぎる瞬間に歩調を緩め、小さく囁いた。聞こえたかな しょんがりず足元に芖線を䌏せおいたその子が、はっず顔を䞊げお俺の背䞭を芋送る姿が、目の端に映った。

“奜きな人ず探しおみなよ、きっず芋぀かるから、小さな楜園が”

サッちゃん、サッちゃん。

繰り返し挔じおきた。時には薔薇の花を抱え、時には愛の蚌のリングをポケットに忍ばせ。だけどそんな挔出は、スクリヌンの䞭の出来事だず、珟実の自分ず重ねお考えた事などなかった。

サッちゃん、サッちゃん。

跪いお、今この胞に宿る願いを打ち明けたら、君は䜕お答えるのだろう




🍀スキやコメントいただけたら連茉の励みに臎したす。 お気軜にご感想などお埅ちしおおりたす。


次回
🔶【28話】倩䞊の楜園・お猿さんサチは
8/24月掲茉予定

📖目次はこちら


いいなず思ったら応揎しよう

この蚘事が参加しおいる募集