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🔶【話】倩䞊の楜園・運呜の盞手サチ

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人は様々に分類できる。䟋えばこんな颚にも。

愛を受ける人。愛を泚ぐ人。
喝采を济びる人、それを莈る人。


新宿駅の雑螏の䞭、山手線のホヌムで圌を芋぀ける。
壁䞀面を芆う巚倧なデゞタル広告。
次々ず切り替わる映像の䞭、柔らかな埮笑みを浮かべた圌がこちらを芋぀めおいた。

い぀たでたっおも慣れるはずもない。この人が自分の恋人だなんお。

桂朚ナりタ。二十八歳。
十代の頃から第䞀線を走り続けるトップスタヌ。

映画にドラマ、CM。
名前を芋ない日はない。

最近は、台湟出身の䞖界的映画監督から新䜜ぞの出挔オファヌを受け、メディアでも話題になっおいる。

倕暮れの街に人々が溢れおいる。
華やかな郜䌚の雑螏。
ショヌりィンドりに、自分の姿ががんやり映った。

二十䞉歳。身長癟五十八センチ。
モデルみたいな抜矀のスタむルでもない、ごくありふれた女。仕事は駆け出しの童話䜜家兌むラストレヌタヌ。

  いや。

ほんの少しだけ、名前を知られおいるかもしれない。

半幎前、桂朚ナりタがデビュヌ十呚幎を蚘念しお出版した自䌝。その装画を描いた。

圌が、あたしを指名したから。
だからっお、どうしおこんな事になったんだろう。
䜕床考えおも、䞍思議でしかたがない。

圌ずの出逢い。
そう、半幎前のあの日。

岡郚ず名乗るマネヌゞャヌに指定された日時に、打ち合わせのため壇プロダクションを蚪ねた。

通された応接宀には、桂朚ナりタが座っおいた。
他にも人がいたにも関わらず、圌を包む独特のオヌラに息を呑む。

なんお目立぀人。

正盎、あたしはかなりの芞胜人音痎だ。
だけど、圌の顔くらいは知っおいた。嫌でも日垞で目に入っおくるから。

フルネヌムを䞀文字間違えお芚えおいた事は、黙っおおこう。

「お䌚い出来お光栄です」

圌はそう蚀うず、そっず怅子を匕いおくれた。

「以前、あなたの絵本を拝芋しお、すっかり魅入られおしたっお。い぀か自分が本を出すなら、絶察にお願いしたいず思っおいたんです」

嬉しそうに埮笑む姿は、出来すぎたドラマのワンシヌンみたいだった。

ぎこちなく笑い返したものの、たぶん䞍自然だったず思う。
なんだか恥ずかしかった。

片偎の翌が折れた倩䜿のクレパス画。
それが、圌からのリク゚ストだった。


出版蚘念パヌティの華やかさに圧倒され、居堎所がなくお壁際からがんやり人の波を眺めおいた。

――あ、芋たこずある。

そう思っおも、名前たでは出おこない。
自称・芞胜人音痎のあたしにずっお、桂朚ナりタくらい目立぀存圚は別ずしお、皆どこか“テレビの向こう偎の誰か”だった。

もう垰ろうかな。
話し盞手もいなくお、退屈を持お䜙しおいた時だった。

すっず、綺麗な女の子が目の前を暪切っおいく。

なんお顔が小さいんだろう。
さらりず揺れるドレス。
華奢なヒヌルの足銖では、アンクレットが光を跳ね返しおいた。

その瞬間、䞍意に頭の䞭ぞ“劖粟たちの舞螏䌚”のむメヌゞがひらめく。

――あ、いいかも。

い぀だっお、䞖界はそんな颚に始たる。
思い぀いたむメヌゞから、物語が勝手に広がっおいく。

バッグから小さなスケッチノヌトを取り出すず、壁にもたれたたた鉛筆を走らせた。

――あ、あれは氎の劖粟。
うるんだ瞳が、光を映しおきらきら揺れおいる。

――あの子は火の粟かな。
カルメンみたいな、情熱的な名前が䌌合いそう。

遠くから、誰かの声が聞こえおくる。

「これ、なぁに」
「倪陜」
「倪陜、いっぱいあるんだね」
「いいの。だっおここは劖粟の囜だから」
「ほんずだ。みんな矜が生えおる」
「この子はね、トンボの矜。光に透かすず虹色に芋えるの」

クスクスず笑いがこがれる。

けれど、ふず我に返っお顔を䞊げた。
すぐ隣で壁にもたれながら、桂朚ナりタがノヌトを芗き蟌んでいる。

「かっ  桂朚さんっ」

たさか、桂朚さんず䌚話しおいたなんお。
珟実に匕き戻され、慌おおノヌトを閉じる。

「サチさん、お久しぶりです。今日は来おくれお嬉しいです」
「あ、  はい」

芖線を泳がせながら、小さな声で返事をする。

あたしは創䜜に倢䞭になるず、呚りが芋えなくなる癖がある。
しかも空想の䞖界ぞ入り蟌むず、劙に子䟛っぜくなっおしたう。

さっきたで完党に、劖粟の囜の䜏人になっおいた。
恥ずかしさが蟌み䞊げる。
心の䞭を芗かれた気分だ。

隣に立぀桂朚ナりタを、暪目でそっず盗み芋る。

耳にかかる癖のある黒髪。
長い睫毛に瞁取られた倧きな瞳。
男らしい骚栌なのに、肌は驚くほど滑らかで綺麗だった。

琥珀色のオヌラが、圌の呚囲で淡く光っおいる気がする。

この特別な男を、さっきのデッサンぞ組み蟌むなら、どんな堎所が䌌合うだろう。

  性懲りもなく、たたそんな事ばかり考えおしたう。

「俺の顔、䜕か぀いおたす」

遠慮のない芖線に気づいたのか、桂朚さんが苊笑する。

「サチさんっお、絵を描いおる時、目の色倉わりたすよね」

あ、やっぱり。
完党に芳察モヌドなの、バレおた。
目の色が倉わるっお、それ倧䞈倫なんだろうか。

「どんな目しおたす そういう時のあたし」

気になっお、恐る恐る聞いおみる。

「カブト虫を芋぀けた小孊生みたいですよ」
「は」
「ビヌ玉みたいに、きらきらしおるんです」

  芞胜人っお、普段からそんな台詞をさらっず蚀うものなんですかね。

「桂朚さんっお、根っからの圹者さんですね」
「えっ、どうしお」
「だっお今の台詞、完党に殺し文句です」
「正盎な感想なんだけどなぁ」

くすっず笑っおから、圌が少し屈み蟌む。

「じゃあ、少しはぐらっずしおくれた」

近い。
背の高い圌が芗き蟌んでくる。
きっず、みんなこの県差しに堕ちおいくんだろうな。

  あ、やっぱり。
この人にトンボの矜は䌌合わない。

もっず高く。
もっず遠くたで矜ばたいおいく生き物。

「党然効いおないみたいだね、俺の殺し文句」

圌は困ったように笑った。

「教えおくれない 今、どんな絵を芋おたのかな」

あ、やばい。
優しい声が、少し空想の䞖界ぞ入りかけおいたあたしを、たた向こう偎ぞ匕っぱっおいく。

「えっず  桂朚さんに矜を぀けるなら、どんなのが䌌合うかなっお」
「うん、どんな矜をくれるの」
「やっぱり鳥かな。桂朚さんっお、“飛ぶ”より“矜ばたく”っお感じだから」
「光栄だけど、耒めすぎだよ」
「えっ 耒めおたせんよ。ただのむメヌゞです」

たいったなぁ、ず圌はおかしそうに笑った。

「あぁっ」

思わず倉な声が出おしたう。
驚いた桂朚さんが、目を䞞くした。

最初に䌚った時、聞きそびれおいた事を急に思い出したのだ。

こういうふうに、頭の䞭で䜕かが繋がるず、぀い声が出おしたう。
これも、あたしの悪い癖。

「え、䜕っ。どうしたの」

よっぜど驚かせおしたったようだ。圌はワンオクタヌブ高い声を出した。

「打ち合わせの時、絵の事ばかり考えおお聞きそびれおたんですけど  あの、本の衚玙の倩䜿の矜。片方折れたむメヌゞでっお蚀っおたしたよね。あれ、どうしおですか」

「あぁ  」

圌は少し困ったように笑った。
琥珀色だったオヌラが、淡いブルヌに倉わった気がする。

「前に北海道ロケで、片矜の枡り鳥を芋かけた事があっおさ。片方の矜を痛めおお  なんずなく、自分みたいだなっお思ったんだよね」
「えっ、桂朚さんみたいですか」

思わず銖を傟げる。

「だっおさ。もっずサチさんず話したいなっお思っおも、すぐ邪魔が入るんだよ」

圌が芖線を向けた先では、マネヌゞャヌの岡郚さんが小走りでこちらぞ向かっおきおいた。

「俺、自由に憧れる」

その蚀葉だけ、少し寂しそうに聞こえた。
桂朚ナりタが、そっず耳打ちしおくる。

「あい぀  岡郚に矜を぀けるなら、どんなむメヌゞ」

そうねぇ、隙のないやり手マネヌゞャヌずいった感じ。芋た目は俳優かモデルさん ず思わせる皋に掗緎されおいる。䞀瞬、ひらめいた

「あのね、トンビ」

別にりケを狙ったわけでもないのに、ブッず圌は吹き出した。

「だっおい぀も桂朚さんを探しおお、芋぀け出すず䜎空飛行で忍び寄っおくるむメヌゞなんだもの」

岡郚さんは目の前たで来るず、咎める口調で蚀った。

「ナりタ こんな所にいたのか。叞䌚の近藀さんがお前を探したくっおるぞ」

  だめだ。
笑っちゃいけない。
そう思えば思うほど、肩が震える。

するず桂朚ナりタが、ずうずう堪えきれなくなったみたいに声を䞊げお笑い出した。

綺麗な歯を芋せながら、ポンポンずあたしの肩を叩いおくる。
だから䜙蚈に、぀られお笑っおしたった。

岡郚さんだけが、「なんだよ」ず怪蚝そうな顔で、きょずんずこちらを芋おいる。


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