🎬映画『Michael/マイケル』映画感想ーこういうのでいいんだよ
映画やドラマを観て泣いたことはあるだろうか。
あるよね。
たいていはここってスイッチがある。
火垂るの墓:「なんで蛍すぐ死んでしまうん?」
国宝:「日本一の歌舞伎役者になったね、お父ちゃん」
進撃の巨人:「兵士よ怒れ!兵士よ叫べ!!兵士よ戦え!!!」
うわぁぁぁん!!!!
( ;∀;)
し・か・し、マイケルは上映前のお決まりの「NO MORE映画泥棒」を観ながら「あ、そろそろ始まるかな」って館内が一層の闇に包まれ、聞き覚えのある音楽がワンフレーズ流れてきただけで……。
つーーーーーって涙が頬を伝った。
え????どした?
どしたどしたどした。
わたしはもともと特別なマイケルファンではない。
ただ昭和生まれの女としてマイケルを「キング・オブ・ポップ」と呼ぶことに何の異論もない。当時亡くなったというニュースが駆け巡った時、衝撃ではあったけれど、他の大スターの死とそれほど変わった受け止め方をしたわけでもない。寂しいなぁとは思った。
スリラー、Beat It、BADとか、数曲のタイトルをそらで言える程度。でも、マイケルの曲はどれも耳にすれば口笛で吹ける。英語はさっぱりわからない――そんなレベル。
ちゃんと興味を持ったのは亡くなった後に映画になった「THIS IS IT」からだ。あの時も、まあ、見届けるかくらいな気持ちで映画を観に行って、マイケルが亡くなったのが急に悲しくなり、半べそかきながら家路についた。
そのあと、マイケルのライブDVDをいくつか買ったり、Youtubeで名場面を観たりして、少しマイケルに入れ込んだ。歌が最高なのはもちろんだが。ファンへ対する愛情とライブのドラマティックさに心奪われた。
マイケルの実際のライブでは「ユー・アー・ノット・アローン」という曲の時に、何万人のファンの中からスタッフが女の子を一人選んでステージの上へ誘導するという演出が定番だった。え? え? みたいな表情のまま、そのファンは歌っているマイケルへと案内され解き放たれ、憧れのスターに全力で飛びつく。通称「ラッキーガール」夢のような瞬間を与えられる。ぎゅうぎゅう抱きしめられ、頬ずりされながらもマイケルはプロ根性で歌い続ける。一分くらいの逢瀬。終わりですよってスタッフが彼女の肩をトントンしても、引き下がるわけがない。必死にマイケルに縋りつく。マイケルも幸せそうに彼女を見送る。
観客はみな「もしも自分だったら」とため息をついて歓声を送る。
映画みたい。日本公演でもこの演出はあったらしいが、やはり日本人は奥ゆかしかったそうな。

今回、マイケルの映画の予告を、映画館で何回か目にする機会があった。うん、でもマイケルじゃないんでしょう? 役者さんなんでしょう?
微妙~。まあ一回くらい観に行くかなって思った。封切りしてもちろんIMAXをぽちった。だって、いい音でマイケルの歌声を聞きたかったから。
そして……。役者さんなんでしょう? なんて上から目線してごめんなさい。ごめんなさい。マイケルを演じた実の甥のジャファー・ジャクソンは、地球上の誰も越えられないてっぺんに立つ、一番星、マイケル・ジャクソンを演じるために、この世に生を受けたかのような凄まじさだった。
演技とかじゃなくって、マイケルがいる。その瞳がマイケル。マイケルじゃないのにマイケル。憑依していた……マイケル・ジャクソンが。
今回の映画はマイケルの父親のジョセフとの確執と栄光が中心に描かれている。親父さぁ、いい加減にしやがれ。首を何度も締めたくなったね。確かに彼の英才教育がなければジャクソン5は誕生しなかったのかもしれない。でも、子供たちが稼ぎ、マイケルが支え、父は首に重厚な金持ち趣味のゴールドのロザリオをぶら下げ、手にはじゃらじゃらきらびやかなブレスレットが音を立て、最高級の葉巻を吸い……まだマイケルを自由にしようとはしない。いや、永遠に縛り付けようとする。
家族に父親がまざって笑い合うシーンもある、でも、父ジョセフには愛がない。
マイケルを貪り食おうという輩はたくさんいるのだろう。でも、守ろうとする人にも囲まれていて少し救われた気持ちでスクリーンを見つめる。ボディガード兼運転手のビル・ブレイ。マイケルを見守る父親のようなまなざし。映画の中では描かれないが、実際にマイケルは彼に「父親になってくれてありがとう」という手紙を送っている。マイケルの幼いころからずっとマイケルに寄り添ったビル。
スクリーンでマイケルがどんどん輝きを増していく。
お空の一番星になるために駆け上がっていく。
眩しくってずっと涙が止まらない。どうして泣いているのか、多分、もうこの世にマイケルがいない事実を突き付けられて打ちのめされ、果てしなく切ない。泣くってレベルじゃなくって、唇をハンカチで抑えていないと嗚咽が漏れてしまう。他の映画でもラストシーンで涙が溢れてって事は何度もあるけれど、上演時間2/3以上泣きっぱなしなんて経験は他にない。これって、生粋のファンだったらどんな反応になっちゃうのだろうか。心配になる。
いつ、スキャンダルとかの場面になるんだろうと、身体がこわばっていた。スクリーンではマイケルが魂のレベルで輝いて羽ばたいていく様に圧倒される。
あ、マイケルに羽が生えたよ。
そんな気持ちで、音楽の爆音に酔いしれていると、エンドロールが流れ始めた。
ああ、光の中にマイケルがいる。
少年への性的虐待疑惑だの訴訟だの家族構成だのなんだかんだ。全然描かれていない、これでは綺麗ごとだと辛辣な意見も多いらしい。
だまらっしゃいっ!
こういうのでいいんだよ
現実としてFBIが公開した300ページを超える資料でも、少年への性的虐待の事実は認められなかった。裁判でも10すべての罪状で無罪となっている。それでもなお、この話だけを何度も掘り返され続ける。もう本人は何度も「触れたくない」と言っていたじゃないか。
五回は観る。すべてIMAXで。そう誓った。
さあ、次はグランドシネマサンシャイン池袋 IMAXシアターへいかなくっちゃ。日本で一番どでかいIMAX。自分の中のハードルを越えた作品はここで再び観るってマイルールがある。
もうマイケルに闇はいらない。
もう一度言おう。
