トシガミ様はガチャガチャがお好き
忘年会で忘れたのは、忘年会をしたという事実だった。
だって俺たち、もうそれ以外に忘れることなんて何もないのだから。
……おっといけない!
つい自分を“アンニュイな30代男性・職業不詳・右目に青あざ発生中”に仕立て上げとりました。
“俺”とか言っちゃって、私ったら油断するとすぐアイデンティティが揺らぐんだから!
ほらほら、あんたは体重200キログラムの豆タンクでしょう?
落ち着いて。
そんな豆タンクが降り立ったのは年がら年中辛気臭い地下鉄の駅。
改札を通れどもう一生抜け出せないのではないかと毎日絶望した東京メトロ。
約一週間ぶりの「おひさしぶり」の六文字は腹の探り合い。
真っ先に吹き出したのはハリスン。
今では立派な臨床心理士だ。
笑ったら負け。
謎の戦いの火蓋はいつも唐突に切られる。
探る腹が無くなればそこからはもう粗探しだ。
ハリスンはすでにゲームオーバー。
今はレノンと私の戦い。
しかしもう、ハリスンの頭に発芽玄米の如き寝癖はついていないし、白塗りがひび割れたジョーカーが平然と改札を通り抜けてくることもない。
「ん?」
レノンが私の右手を引っ掴んでまじまじと見ている。
ポーカーフェイスが売りのハリスンもドボンしているのをいいことにゲラゲラと笑っている。
……今すぐその商標を取り下げろ、詐欺師め!
「ねえこれ……何?」
あろうことか私の小指の爪の間にワカメが挟まっているではいか!
ああ……エモの下僕たちが、やり残した2025から滴る謎液を飲み干し年越し蕎麦の上の海老天のカロリーを抱きしめて年を越したのと時を同じくして私は小指の爪でワカメを羽交締めにして日付変更線を飛び越えたってことだな。
──眠ったまま。
「そういや、官房長いなくね?」
すっとぼけにすっとぼけを塗り重ねる。
我々はまたやってしまった。
静かに、音もなく地下鉄を爆破してしまう。
いつだってそうだ。
誰かしらが時間通りに現れないと公共交通機関が爆発したことにしてしまう。
おかげでJR中央線は十年以上前に廃線となっている。
少なくとも、私たちの世界線では。
ようやく現れた官房長は、
「遅れてごめん」でも、当然「おひさしぶり」でもなく、
「2025年の不運の連続の原因がわかった!」と叫んだ。
しかも私の肩を引っ掴んで。
ガクガクと前後に揺らしながら。
不運?なんのこっちゃ!のレノンとハリスン。
脳震盪一歩前の私。
「2025年、2月生まれの水瓶座は運気が最悪だったんだよ! 年明けてから知った!」
官房長は印籠の如くスマホをグイと私の顔に近づけた。
【2025年 凶運ランキング】
1位:水瓶座×2月
「えー、っていうか水瓶座って2月生まれしかいなくない?」
「おん? 何も知らないんだな、天秤座君。1月生まれもいるんだな、これが!」
「hydeさんとかね。」
「今hydeのことはどうでもいいんだよ!」
「どうでもよくないだろ! それから、hydeじゃない! hydeさん、な!」
また馬鹿すぎる戦いの火蓋を切ってしまう我々。
そろそろ切られた火蓋の不法投棄罪で捕まる。
「で、何? 官房長の不運ってのは。」
「いっぱいある! 去年は初詣で骨折!」
「なんでだよ! 幸先悪過ぎんだろ!」
「県庁が更地になった!」
「なってねえだろ、更地になったのはテメェの職業欄だけだろ!」
「友達が結婚しまくる!」
「めでたいだろうが!」
「御祝儀貧乏!」
「ハロウィンにコロナ、コロナ明け2日でインフルエンザ!」
「それは踏んだり蹴ったりだね。」
不運に追い立てられし、官房長の2025年。
私もめくるめく2025年に思いを馳せる。
そういえば新年早々鳩の糞が頭に降ってきて、それ以来隔月なんらかの鳥の糞にやられている。
そして秋の間中鼻がイグアスの滝と化していた気がする。
そしてなぜか知らん人vs知らん人の喧嘩に巻き込まれて蹴飛ばされた日もあった。
細々としたことで言えばおじさんの口から出たガムがおろしたてのスニーカーにひっついたこともあった。
あとはコンビニの鮭おにぎりの包装(しかも絶対セブンイレブン)だけが庭に飛んでくる呪いにもかかった。
「こりゃあ歳神の八つ当たりだ。」
「え?」
「歳神の巳神ニコちゃんの八つ当たりだ!」
巳神ニコは百円玉を痛バッグいっぱいに詰め込み、ユズリハ製のバイクを飛ばして池袋サンシャインへ。
向かう先はガチャガチャの森。
ニコは百円を握りしめ、天に祈る。
「どうか、どうか早乙女ナイン君……!」
早乙女ナインというのはニコの推しだ。
彼女はかねてより、アニメ「滅亡!ゾディアック学園高等学校」にどハマりしている。
その中でもピンク髪の王道イケメン、早乙女ナインにガチ恋している。
今、彼女が狙うはこの早乙女君のラバーストラップだ。
満を持してニコは握りしめて熱くなった銀貨一枚と、冷静さを保つ二枚を彼の待つ学園の門に投入する。
「……お願い! 神様!」
──ガコン……
ニコは目を開けられない。
高鳴る鼓動。
そして、「ただいま」と囁くナイン君の声……
「ナイン君……」
しかし、ニコの手の上にいたのは……
ニヒルに笑う如月アクア。
「っだーーーーー!!!! クッソ!! お前だけは……」
あろうことかニコの嫌いな如月アクア。
「嫌い! 嫌い! 嫌い! 変人ぶって! クールぶって! 群れない俺様かっこいい、みたいなのマジで嫌い!」
彼女は怒りに震えた。
そして、ぱっつん前髪を一度撫で付け目を閉じる。
「眠りし全ての神々よ……聴こえるか。我こそが二〇二五を統べし歳神・巳神ニコ……罪深き如月、水瓶と太陽の交わりし刻に誕生せし者どもに残虐、苦悩、災禍の贅を与えるのです……歳神の名の元に命ずる!」
「つまり、推しが出なくて怒り狂った歳神のせいでこうなったわけだよ。我々の受難の日々は全て歳神のガチャ運が最低だったせいだよ!」
「っていうか運を司るのが神じゃねえの?」
「何で神が神頼みしてんだよ!」
「不運をファンタジー的に処理するな!」
そもそも星占いなんて信じちゃいないのだ。
でも、不運に見舞われたことは確かだ。
ならばどうにかして笑い飛ばしてやったっていいだろ!
「あ。」
「あん?」
「これ……」
【2026年 幸運ランキング】
1位:水瓶座×2月
「大逆転にもほどがあるだろ!」
ニコは手の中で憎たらしく笑う如月アクアを睨みつける。
しかし、思い出したのだ。
彼女はおもむろに、zPhoneを取り出す。
「あ、もしもしフウロ氏ー? あ、ごめんね。まだ寝てたよね。いや、あんたさ、アクア君好きだったよね? 如月アクア! そうそう。ゾディ高の! よかったー。じゃあ次会った時、渡すわ。うん、じゃ。」
こうして如月アクアは次の歳神・馬場フウロに託されることになったのだった。
前年の不運なんて忘れて、私は呑気に生活している。
だからだろうか……
今朝、ヒヨドリの糞にやられた。
お願い、馬場フウロ。
せめて鳥糞だけでも降ってこないように!
あ、でも話のオチは頂戴。
……あらそう。
くれないのね。
いいわ。
と、初詣もせずのうのうと暮らす私であった。
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こちらは同じメンバーの20代前半の実話。
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つまり、私含むこやつらの去年の運勢は最悪だったということ。
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1月生まれの水瓶座が歌っているバンドの世界観に引きずられるワシ。
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国会以外も荒れます。
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Mr.リリックことゆきお様による、超快適言葉遊び大会。
韻は踏むは、知識の絡み合いは圧巻だわで、懐かしさと言葉そのものの心地良さの相乗効果で癒されること間違いなし。
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よもぎちゃーん!
はーい!
何が好き?
ポテトチップスよりも
お・ぬ・し