ソフトクリームをかつらむけ
絶賛車酔いの渦中にいる。
ぐわんぐわんの世界からご挨拶、こんにちは。
三半規管も、精神年齢も実年齢より若いのだから困ってしまう。
比例して体内年齢とか、肌年齢なんかも若返ったらいいのに…
なんてカリカリ梅で塩分過多になりながら思っている。
私は子どもの頃から乗り物酔いがひどかった。
だから、
車で移動する旅行だとか、
歩くには遠いし電車を使うと逆に遠回りになる絶妙な位置にあるデパートへの買い物だとか
そういうものが憂鬱であった。
酔い止めの薬も糠に釘、全く効きやしない。
絶望的。
父に、
「大人になれば酔わなくなるよ。」
と言われ、それを信じて生きてきた。
が、酔う。
酔うものは酔う。
サービスエリアで
「ソフトクリーム買ってよォ〜!」
と大騒ぎする同年代の子どもを見ては
毒と、その他を吐き捨てていた。
薄汚れたベンチに腰掛けて、
新鮮な空気を思いっきり吸い込んでは
「私ほど群馬県の空気の美味さを知っている小学生はいない。」
と強がっていた。
強がっていたとはいえ、
ソフトクリームの甘さよりも、あの空気は私に優しかった。
それだけは間違いない。
渋滞に巻き込まれて、
「車が澱んでいるなあ…」
高速道路ってのは本来ズゴオオオオオオ!と勢いよく水を吸い込む排水口のようで然るべきなのに、
これじゃあまるで
ゴポゴポ…と力無い音を立てて全く流れていかない詰まりトイレだ、
なんて汚い例えを頭の中で繰り返して余計に気持ち悪くなるなどしていた。
渋滞の末にようやく辿り着いたサービスエリアやパーキングエリア。
今度はトイレ前で人間が渋滞している。
女性用トイレは殊更である。
まだ追越車線が存在する車の方がいいじゃないか、と澱んだ人間を眺めながらぐるぐると考えを巡らせていた。
先程頭の中に展開したゴポゴポトイレにすらたどり着けない。
…正直なところ、とんでもない乗り物酔いで水すら飲めず、
ただひたすらにカリカリ梅から塩分を摂りまくっていた私はそこまでトイレに用はなかった。
母含む列の澱みの原因たちが切羽詰まってモジモジ、イライラしている中、
相変わらず詰まったトイレを想像してグロッキーに拍車をかけている私はむしろ幸せ者だったのかもしれない。
素晴らしい回転率で用を足し、爽やかな顔をして出てくる男たちを見て
「そうそう、これが高速道路の本来あるべき姿だ」
と心の中で絶賛するなどしていた。
いよいよ自分の番が来て用を足そうとしたが、
やはり足せる用もなく、
「なんか、ごめん。」
とよくわからない罪悪感に襲われて、涙だけが出た。
目から用を足した。
それでよしとする。
再び始まるノロノロ高速道路…いや、低速道路の旅。
耳には空気が入り、そのたびに無理くりあくびをしたり唾を飲み込んだりしてプツンプツンと空気を抜く作業。
推定旅行というのはリフレッシュだとか、
リラックスだとかそういう“良い”意味での非日常を味わうもののはずだが
私からしてみれば
いらぬ体調不良と、いらぬ作業に追われるわりと厄介なものであった。
とはいえ高速道路を降りて走る公道の脇に広がる少し金色に変わり始めた稲穂や、風に揺れる白いレースのような蕎麦の花を眺めるのは心踊る出来事である。
それでもやはり、酔いにつられて景色が歪む。
…にも関わらず、今年もまた旅に出てしまった。
今日、私は気休めに酔い止めを持ってきた。
とりあえず、ものは試し。
口に放り込もうとしたその瞬間、車がぐわんぐわんした。
酔い止めはごろんごろん転げ落ち、助手席の下に隠れた。
運転席を睨みつけたところで酔い止めは還らない。
今、私は薄汚れたベンチに腰掛けて、
新鮮な空気で肺を満たしながら
スターバックスのフラペチーノを頬に寄せて写真におさまらんとする同年代を見て、毒とその他を吐き捨てている。
ただそちらはピンボケで、
鮮明に映し出されているのは
ソフトクリームを幸せそうに溶かしている娘の姿である。
空の青より、青い顔で見つめている。
少しふざけるのならば、
「よもぎちゃーん!」
「はーい…」
「何が好き?」
「ソフトクリームよりも、ム・ス・メ!」
はい。
キマった。
今しばらく続く、ぐわんぐわんの世界へ
これを読んでくれているあなたが迷い込まないことを
私は切に願っている。
【参考資料】
◽︎ネクスコ東日本
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よもぎちゃーん!
はーい!
何が好き?
ポテトチップスよりも
お・ぬ・し