ヘッドライナーはお前だ
「幕張メッセで食べる梨は美味い。」
これが、サマソニ初参戦時の私の感想である。
大学2年の夏、
致死量の陽キャ集う幕張メッセで致死量の梨を食べた。
そもそもなぜ
陰キャ、インドア、インナードライの
“いん”のワルツ女が夏の陽キャのカーニバルに参加したのか。
そこからして怪奇現象なのだが、夏だから。
全ては夏だから。
全ては夏のせいなんだ。
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初陣
果たし状は買う時代
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7号館のトイレは大学の中でもエリートクラスの汚トイレである。
非エリートの分際で、尿意に耐えきれずこの日は
「かたじけない…」
とエア切腹しつつ、エリート汚トイレにて排尿させていただいたで候。
自動水栓ではないのに手をかざして
「ん?おかしいでござる!ふんっ!えいや!」
とやっていたら
隠居したはずの陰キャが声をかけてきた。
「サマソニ行かん?荒療治!」
陰キャこと、
千葉県にある国際線ターミナルみたいな苗字の女である。
【千葉県にある国際線ターミナルみたいな苗字の女】
誕生日:7月X日
属性:陰
高1の6月まで私と同じ高校の同じクラスに在籍していた。
が、「陽キャが多過ぎて嫌」という理由で転校。
転校後も“ツ陰”と称し、よく一緒に遊んでいた。
謎に同じ大学に入学したが学部が違った為滅多に遭遇しなくなっていた。
↑
サ オ リ ンのせいなのね、そうなのね
ウォッチ!今何時?(荒療治)
ウィッス!
(サオリン1人を大量の陽キャと誤認した模様)
“荒療治”を、“アラ リョウジ”という人物名だと勘違いした私。
そしてそれを新たなる自分のニックネームだと勘違いした挙句、
「リョウジじゃねえよ」
と見当違いの返事をする。
勘違いの厚塗り。
…厚塗りはアイビスペイントだけにしてくれよな!
ナリタ「じゃあリョウジ、サマソニ行こう。1日目の方な!じゃあ私はこれで…絶対に落とせない必修があるからチケット買っといて!じゃ!」
私はここまで「リョウジじゃねえよ」
しか言っていないのに
サマソニ初陣が決まった。
リョウジじゃねえのに統計学の授業に出たら、
教授が黒板に大量の数字と“Σを書き始めて
「数字がびっくりしてやがる」とよくわからない感想を抱いた。
そして、リョウジじゃねえのに明太子スパをズルズル吸い込みながら
Σ(i=1 to 2) 1 枚のチケットを予約した。
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出陣
馬は無いのでワインレッドトレイン
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京葉線とかいう陽キャ御用達電車に乗り込む陰キャ。
某ねずみ王国へ向かう陽キャと、幕張メッセへ向かう陽キャと、社会の歯車が箱の中で揺られている。
ナリタ「陽キャの数よ…!」
私「安心しろ…陰キャ×陽キャ=陰キャだ。つまりあいつらは我らがいる限り陰キャなんだ。」
ナリタ「つまりあの陽キャ実は陰キャで、極めて0に近いマイナスということだな。」
私「そうだ、陰キャの中にもカーストはあろう。」
ナリタ「だがしかしだ、今ここに陰キャが2人おろう?マイナス×マイナス=プラスもまた然りだ。我々が陽キャという説もあるぞ。」
私「つまりこの場合は我々は極めて0に近いプラスということだな。」
ナリタ「そうだ、陽キャの中にもカーストはあろう。」
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戦
緑無くして緑に死す
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とりあえず、陽キャに擬態すべく
スーパーサラリーマン左江内氏の変身後の如く
前面に“S”がデデンッと胸を張っているTシャツを買い、
簡易型タトゥーを施してもらう。
腕に“August”と書いてもらった。
なので、8月生まれっぽく振る舞うことにしたが隠しきれない2月が邪魔しかしなかった。
さすがに自分の生まれ持った手札の6倍の能力を出すのは厳しい。
真夏の太陽と陽キャが放つ熱気で会場は灼熱。
とりあえずトラックの荷台に乗った水着美女がぶっ放すH₂Oを全力で浴びに行く。
びしょ濡れの我々は
もはや陰キャでも陽キャでもなく妖怪である。
私「ところでどのステージから観る?」
ナリタ「とりあえずぶち上がりそうなやつ。」
私「え」
ナリタ「え」
私「サマソニ行きたいって言ったのおぬしじゃん、てっきり観たいアーティストがいるのかと…」
ナリタ「GREEN DAY」
私「GREEN DAY出ねえわ!」
ナリタ「じゃあGREEN DAYじゃないやつ。」
私「うん、“GREEN DAYじゃないやつ”しか出ないからね今日は。というか今年GREEN DAYのGの字すらないからね。」
というわけで、“GREEN DAYじゃないやつ”のステージへ向かう我々。
ステージ上のGREEN DAYじゃないけどイカした人たちとステージ下のキッズ達との間で
鏑矢&答の矢が行ったり来たりしている。
その傍で陰キャの我々は、
「スポットライトに当たったら死ぬゲーム」に興じていた。
アンコール手前でナリタが緑色に染まりつつ死んだので、外に出た。
ナリタ「いや〜スリリングだった!」
私「GREEN DAYじゃなかったけど緑に染まれて本望だったろう?」
おおよそ音楽イベントの感想ではない。
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退陣
時代を先取りヘッドライナー
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HP回復アイテム“梨”の幟がひるがえっている。
確か1個500円くらいだった。
げんきのかけらの1/4の値段で買えるのでコスパがいい。
目の前で、私の分はショートヘアの美女、
ナリタの分は筋骨隆々のナイスガイがハンドルを回して梨を丸裸にしていく。
見ていたら目が回った。
目は回ったが無事、梨を入手した。
…一口食べればそこはもう別世界。
ハッピーウォーター!
口の中が幸水の洪水。
とにかく幸せ。
ミセスグリーンペアである。
夢中で梨を貪る陰キャ。
500円はものの1分で胃の中へ溶けた。
ナリタ「…もう一個行くか。」
今度は美女がナリタの分、ナイスガイが私の分の梨を丸裸にしてくれた。
やはり二度目も
ハッピーウォーター!
口の中が幸水の洪水。
ミセスグリーンペアである。
我々はこのあと3回もミセスグリーンペアにアンコールを送った。
間違いなくこの年のヘッドライナーは
Mrs.GREEN PEARだった。
大ヒット曲“HAPPY WATER”を引っ提げて。
当初の目的はサマソニで色々なアーティストのライブでぶち上がることだったはずだ。
…GREEN DAYは出ないけれど。
まだまだ盛り上がる会場を早々に後にした。
定時上がりの社会の歯車と共に京葉線に揺られる。
汗染みではなく梨汁付きのサマソニTシャツを着た陰キャが
梨が美味かった話で盛り上がっている。
お裾分けレベルを超えて渡された梨に冷蔵庫を占領されながら思い出す、
正解の見えない夏の記憶であった。
【参考資料】
◽︎日本テレビ
スーパーサラリーマン左江内氏
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お・ぬ・し