Barron's Streetwise 解説:決算シーズン、タイムビリオネア、そしてインカム戦略
▶ 元エピソード: https://www.barrons.com/podcasts/streetwise
概要
今回のエピソードでは、まずDeutsche Bankが提唱する「タイムビリオネア(残り人生が10億秒ある人)」という概念にまつわる若年投資家の調査結果を取り上げます。若い世代ほどリスクをさらに取りたがる傾向があり、米国では特にAIに投資判断を委ねることへの意欲が強いことがわかりました。後半では、第2四半期の決算シーズンでS&P500種指数の一株当たり利益(EPS)成長率が24%に達する見通しであること、そして債券利回りが上昇する環境下でのインカム戦略の考え方について、専門家の見解を紹介します。
「タイムビリオネア」と若年層の投資マインド
司会のJack Hough氏は、自身の残り寿命を計算したところ約9億3800万秒しかなく、「タイムビリオネア」の地位から転落していたことに気づいたと語ります。その地位から転落した日は2024年8月9日。ちょうどその日、パリ五輪で初採用されたブレイクダンスのBガール競技に、レイガン(Raygun)の愛称で知られるレイチェル・ガン(Rachel Gunn)が出場し、カンガルー・ホップを披露してインターネット上で大きな話題となっていました。
Deutsche Bankが発表したレポート「Time Billionaires Want More Risk: Is AI to Blame?」によると、若年層ほど今後1年、3年、5年にわたってリスクをさらに増やしたいと考えていることが分かりました。また、米国では特に、AIに投資判断や取引の実行を委ねることへの意欲が強く、34歳以下のアメリカ人は10対1の割合でAIに自分の口座での自動売買を任せることに抵抗がないと回答しています。
加えて、レポートはZ世代が過去の世代に比べて経済的成功に必要な資産額を2倍、必要な年収を3倍と高く見積もっており、ソーシャルメディア上の「ドリーム・スクローリング」が過度に高い期待値を生んでいると分析しています。投資判断はモバイル取引やソーシャルメディア、暗号資産、ゼロコミッションの証券会社、金融インフルエンサーなどの影響下でゲーム化・共有されており、リスクテイクが孤独な行為ではなくなっている反面、社会的証明や群集行動、取り残される恐怖(FOMO)を増幅させていると指摘します。一方で、失敗した場合の感情的なコストは低くなっているとも述べています。
決算シーズン:S&P500の利益成長とバリュエーション
Seaport Researchのチーフ株式ストラテジスト、Jonathan Golub氏は、現在の第2四半期決算が異例の強さを見せていると説明します。通常、決算発表を前に企業は悪材料を事前に出すためアナリスト予想は下方修正されるものですが、今回は悪材料が少なかったため上方修正が続きました。現在、S&P500のEPS成長率はコンセンサスで24%が見込まれており、過去の平均的な上振れ率を加味すると最終的に26%から27%に達する可能性が高いとしています。企業の業績が予想を上回る「ビート率」は15.5%と、景気後退からの回復直後以来の驚異的な水準です。
この好業績を牽引しているのはAIデータセンターの建設ラッシュです。決算シーズンの初期に発表される大手銀行の決算が大きく予想を上回ったのも、データセンター向け融資やAI関連の強い需要を受けた企業向け融資、活発なIPOや債券引受などが寄与しており、AIのエコシステム全体が金融セクターを押し上げているためだとGolub氏は指摘します。
足元の経済はGDP成長率が2%強で、雇用の伸びも堅調、ISM指数も50台前半と企業の投資意欲は底堅いものの、過熱感は見られません。Golub氏は「今年に入りS&P500の利益は約20%増加したが、株価指数の上昇率は10%にとどまっている。つまり、20%増益の企業に10%高い価格を払っているに過ぎず、実質的には株は以前より割安になっている」と述べました。今後、利益成長率は10%台半ばへ減速するとみられていますが、市場はすでにそれを織り込んでいるとしています。ディフェンシブセクターはむしろ成長が弱いと予想されており、株式市場で安全を求めるなら財務省短期証券(T-bill)を買う方がよく、株式に投じる部分では勝ちに行く姿勢で臨むべきだと助言しています。
債券市場とインカム投資の現在地
Franklin Income Investorsのポートフォリオマネジャー、Todd Brighton氏は、10年物財務省証券利回りが4.6%台、30年物が5%台と上昇している債券市場について、クレジットのスプレッドは歴史的に見て依然タイトですが、マクロ環境が底堅いことを踏まえると、キャリー(利回り収入)の観点からは魅力的だと評価します。市場では利下げよりも利上げの確率が高まっていますが、長期のインフレ期待は安定しており、投資家は足元のインフレ指標のぶれを冷静に受け止めていると解説しました。
過去3年間、S&P500が年率20%を超えるリターンをあげる中でも、投資家のインカム商品への関心は根強く、多額の資金がマネー・マーケット・ファンドのような現金同等物からインカム戦略へと向かっているといいます。とりわけ注目されているのが転換証券の市場です。最近ではGoogleのAlphabetが160億ドル超、Oracleが約50億ドルという大型の転換型マンダトリー・プリファードを発行しました。これらは、もともと低配当か無配でインカム投資家がアクセスしにくかった成長志向企業へのエクイティ参加権を提供しつつ、健全なクーポン収入も得られる手段であり、インカム投資家にとって新たな機会となっています。
来週の主な決算とエンタメ情報
来週はMicrosoft、Meta、Chipotle、Ford、そしてモンデリーズ・インターナショナル(Mondelez)といった主力企業の決算発表が予定されています。また、司会者はパリ五輪で話題をさらったレイガンのドキュメンタリー「Untold: Raygun, Breaking Badly」がNetflixで9月1日から配信されることを紹介し、エピソードを締めくくりました。
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