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Odd Lots 解説: 世界の市場を揺らす韓国発のレバレッジETF(ゲスト: Alex Altman氏)

▶ 元エピソード: https://omny.fm/shows/odd-lots/the-korean-levered-etfs-shaking-markets-all-around-the-world

2026年7月9日

概要

このエピソードでは、韓国発の単一銘柄レバレッジETF(上場投資信託)が、世界の株式市場に無視できない影響を及ぼしている現象を取り上げています。マクロ経済のニュースが霞むほど、半導体トレード、ひいては韓国トレードが世界の焦点になっており、韓国市場が1日に5%動くことにすら市場が慣れてしまった、という状況です。ゲストのBarclays($BCS)でグローバル・エクイティのタクティカル・ストラテジー責任者を務めるAlex Altman氏が、これらの商品の仕組みと市場への影響を詳しく解説しています。

Altman氏は、レバレッジETFの運用資産残高(AUM)がここ数ヶ月で「爆発的」に増加した点を指摘します。アジア太平洋地域では年初の120〜130億ドルから約500〜550億ドルへ、米国では4月の底値時点の約1,200億ドルからピーク時に2,000億ドル超へと膨らみました。興味深いのは、米国では価格上昇によってAUMが増えたのに対し、韓国では価格上昇に加えて大規模な新規資金流入(シェア創出)が起きている点です。

これらの商品は、日々のレバレッジ倍率を維持するために機械的なリバランスを行うため、市場に新たな「ショート・ガンマ」の次元を生み出しています。株価が下がれば売り、上がれば買う非裁量的なフローが、原資産の株価そのものを動かす「尻尾が犬を振る」現象を引き起こしているのです。

後半では、Barclaysが開発した市場タイミング指標「Betty」や、株式市場の割高感、そしてAIが金融の定量分析にどこまで使えるかといった話題にも広がっていきます。

レバレッジETFの規模とその急拡大

Altman氏は、自身がこの市場を「terrifying(恐ろしい)」という言葉で表現した理由を、まず数字で説明します。グローバルのレバレッジ商品のAUMは、執筆時点で約2,500億〜2,700億ドル。この数字自体が特別大きいわけではありませんが、驚くべきはここ数ヶ月の増加ペースの急峻さです。

具体的には、アジア太平洋地域のレバレッジ商品のAUMは年初に約120〜130億ドルだったものが、現在では約500〜550億ドルへと3倍以上に膨張しました。米国でも、市場が底を打った4月初旬には約1,200億ドルだったものが、ピーク時には2,000億ドルを超えました。

Altman氏が特に注目するのは、米国と韓国で成長の中身が異なる点です。米国ではAUM増加の大部分が価格パフォーマンス、つまり原資産の値上がりによるものでした。一方、韓国では株価の急騰に加えて、大量の新規シェア創出(新規資金の流入)が同時に起きているのです。

レバレッジETFのメカニズム

Altman氏は、これらの商品がなぜ市場でこれほど重要になったのかを理解するために、その仕組みを分かりやすい数字で解説します。

たとえば、AUMが300億ドルの原資産があり、それを3倍のレバレッジで運用するとします。この場合、追加で600億ドル分のエクスポージャーを取りに行き、合計900億ドルのエクスポージャーになります。このエクスポージャーは通常、プライム・ブローカレッジ経由のスワップ契約によって合成的に得られます。

ここで株価が10%下落すると、900億ドルの10%、つまり90億ドルが失われます。エクスポージャーは810億ドルに減りますが、AUMは元々300億ドルしかなかったため、そこから90億ドルが失われて210億ドルになります。3倍レバレッジを維持するには210億ドルの3倍、630億ドルにエクスポージャーを合わせる必要があるため、810億ドルから100億ドル以上を機械的に減らさなければなりません。

こうした調整が下落日には売り、上昇日には買いという形で毎日発生します。これが市場に新たな「ショート・ガンマ」の次元を生み出しているのです。従来はコール・オプションを売る「オーバーライティングETF」がボラティリティを売って「ロング・ガンマ」を作り出し、レバレッジETFと相殺し合っていました。しかしレバレッジETFがあまりに大きくなった結果、市場全体のネット・ガンマがよりネガティブに傾き、より大きな役割を果たすようになったと説明します。

レバレッジETFの組成とレバレッジの調達

Altman氏によれば、レバレッジETFの組成自体は、他のETFプロバイダーと大きく変わりません。アンカー投資家や共同スポンサーが初期のAUMを作り出し、SEC(証券取引委員会)の規制を通す必要があります。どんな意見を持つにせよ、これらのレバレッジETFはすべて規制当局によって承認されているという事実は重要だとAltman氏は強調します。

レバレッジは通常、銀行パートナーから調達されます。プライム・チャネルを通じて合成的にエクスポージャーを得るわけです。市場参加者の中には、こうしたレバレッジETFが資金調達金利(ファイナンシング・レート)の上昇を招いていると主張する人もいますが、Altman氏はこれを部分的にしか正しくないと否定します。

2,000億ドル超のAUMに2倍以上のレバレッジがかかれば、4,000億ドル超がスワップ形式で銀行のバランスシートに乗り、確かに逼迫の一因にはなります。しかし、バランスシートが逼迫している最大の理由は、市場全体が上昇して資産価格が上がったことだとAltman氏は言います。さらに、マルチマネジャー・プラットフォーム(複数の運用担当者を抱えるヘッジファンド)のAUMがコロナ以降ほぼ3倍の約1兆ドルに膨らみ、ロング・ショート両建てで大量のリスクを取っていることもバランスシートを消費しています。つまり、レバレッジETFは数ある要因の一つに過ぎないのです。

オプション市場を通じたレバレッジ調達

ディーラー側のバランスシートが希少であるため、単一のカウンターパーティに40億ドル規模の与信を出したがらないという事情があります。そのため一部のレバレッジETFが、スワップだけでなくオプション市場を通じてレバレッジを調達しているという話も出ています。

Altman氏は、これは報道でも取り上げられたが、アジアのある特定のファンドに固有の話であり、米国で起きたことではないと述べます。レバレッジの提供先やカウンターパーティ・リスクを論じ始めると「パンドラの箱」を開けることになるとし、Barclaysはカウンターパーティの選定について保守的かつ極めて慎重であると強調しました。あくまで自分たちはリスク管理を生業としているのだ、という姿勢です。

リテール投資家と株式への過剰なエクスポージャー

司会のTracy Alloway氏が、韓国市場ではリテール(個人)投資家の関心が米国を上回るほど強い点を指摘すると、Altman氏はリテール・チャネルが今日の世界の株式市場で最も重要なダイナミクスの一つだと応じます。

韓国ではレバレッジETFの93%がリテール投資家によって保有されているのに対し、米国では約75%とやや低い水準です。それでも十分に高い数字です。Altman氏は「レバレッジETFはリテールにとてつもない金額を稼がせた」と述べ、その利益でMcLarenを乗り回している人が大勢いると付け加えました。ただし、これは判断を下すものではなく、儲けたこと自体を批判するつもりはない、と釘を刺します。

Altman氏がチームとして最も懸念しているのは、レバレッジETFそのものではなく、株式への構造的な依存だと言います。米国の家計資産の34%が今や株式にあり、これは記録的な高さで、ドットコム期をも上回ります。さらに驚くべきは、次に大きな家計資産である不動産が約26%で、この8ポイントの差もまた過去最大だという点です。社会全体がこれほど株式に過剰に傾斜したことはかつてありません。

だからこそ、S&Pに20%の毀損が起きれば約16兆ドルの富が瞬時に消え、米国GDPの半分に相当する打撃となり、消費が即座に減退して「即座のリセッション」につながる、とAltman氏は警告します。Joe Weisenthal氏も「もはや株式市場が経済そのものだ」と応じ、さらに「AIが株式市場であり、AIが経済でもある」というAIの影響が二乗になっている状況への懸念を口にしました。

モメンタムと非裁量的フロー

Altman氏は、米国で最大の単一銘柄レバレッジETFがMicron($MU)であり、世界最大の単一銘柄レバレッジETFがHynix(SK Hynix)であることを挙げ、これらのダイナミクスがNASDAQ関連商品や半導体に集中している点を指摘します。

価格がナラティブを規定する構造も問題です。価格が上がると人々は確証バイアスを抱き、「AIストーリーは健在だ」と受け止めます。それが完全に間違いとは限りませんが、非裁量的なフローがどれだけ価格を歪めているのかは判断が難しいのです。モメンタムは史上最も成功したファクター戦略であり、S&Pは78%の確率で上昇するため、投資家は本質的にモメンタムのロングを望む傾向があります。Joe氏は、ある2倍レバレッジETFが1年前に23ドルだったものがピークで1,200ドルを超えた例を挙げ、その爆発的なリターンに驚きを示しました。

規制当局のハードルとレバレッジの限界

Tracy氏が、なぜ10倍のレバレッジETFが存在しないのか、SECの基準は何なのかと問うと、Altman氏は一つの逸話を紹介します。政府機関の一部閉鎖期間中に、5倍程度のレバレッジETFを上場・棚上げしようとする試みがあったものの、規制当局がレバレッジには限界があることを明確にした、というものです。

Altman氏はその会話に立ち会ってはいないとしながらも、規制当局がレバレッジの観点から容認できる水準には限界があると理解していると述べ、それは至極合理的なことだと付け加えました。

市場タイミング指標「Betty」

話題はBarclaysの市場タイミング指標「Betty(Barclays Equity Timing Indicator)」に移ります。この指標は2018年に最初のバージョンが作られ、19の入力項目を持ちます。実質利回り、スポットとボラティリティの相関、ミューチュアルファンドやヘッジファンドのベータ、CTA(商品投資顧問業者)、ボラティリティ・コントロール、レバレッジETFの動きなどを含みますが、センサー(心理指標)だけは一切含めていません。Altman氏のチームには「定量化できないものについて語る権利はない」というモットーがあり、「feels(感じる)」「seems(思われる)」という言葉の使用は禁止されているそうです。

現在、Bettyは記録的な長期間にわたって警戒領域にあり、その主因はモメンタムの過密です。加えて実質利回りが問題で、10年物の実質利回りは今日、約95パーセンタイル、約2.30%の水準にあります。政府、投資適格債(IG)ともに記録的な発行の年になりつつあり、資本を巡る競争が株式にとって逆風となっています。

Bettyが示しているのは、市場が暴落するという予言ではなく、非対称性(アシンメトリー)が良くないという事実です。通常であればS&Pを2ヶ月(42営業日)保有した場合の平均リターンは約190ベーシスポイント、勝率は約73%です。しかしBettyが6や7、あるいは10や11といった高水準にあるときは、同じ期間で儲かる確率が約35%以下、平均リターンはほぼマイナスになると示唆しているのです。実際、モデルが5月下旬に初めて警告を発して以来、S&Pはほとんど動いていません。

株式市場の割高感

Joe氏が、市場タイミングとは別に、バリュエーションと実質利回りの上昇を組み合わせて歴史的にどれほど割高なのかを問うと、Altman氏は詳細な比較を示します。

金融危機後の環境と比べると、当時のS&Pのマージンは今日よりずっと低かった点を踏まえる必要があります。マージンが高ければマルチプルも高くなるべきだからです。それでも、実質利回りが今日ほど高い時期の平均的なS&Pのマルチプルは約14〜15倍という恐ろしく低い数字であり、現在は約20.2〜20.3倍で取引されています。コロナ後の環境で比較しても約18.5倍で、依然として約10%のマルチプル収縮があってもおかしくない水準です。

なぜ期待成長率ではなくマージンが重要な要素なのかというJoe氏の問いに対し、Altman氏は、マージンに限らずROE(自己資本利益率)でも測れるとしつつ、より収益性の高い企業はより大きな「モート(参入障壁)」を持つ高品質なビジネスとみなされ、それゆえ高いマルチプルが付く、と説明しました。

AIは定量分析にどこまで使えるか

Tracy氏が、フローや機械的な要因が重要になった現在、株式デリバティブ戦略家が20年前より真剣に受け止められているのではないかと問うと、Altman氏は自身のキャリアの変遷を語ります。彼は2004年にJP Morgan($JPM)でジェネラリストのセールスとしてキャリアを始め、その後ファンダメンタルズ分析やバイサイドを経験しましたが、業界の専門特化が進む中で、Citi($C)在籍時にクオンツやファクターの世界へ転身したのです。

AIについては、Barclaysが先進的にCopilotやClaudeのライセンスを導入し、社内外のモデルで独自ツールを構築していると述べます。Altman氏によれば、AIが最も強力に機能するのは、構造化・非構造化を問わず明確に識別可能なデータ・パラメータを与えたときです。

具体例として、ある単一銘柄をバスケットでヘッジするという業務課題を挙げます。これは巨大なペアワイズ相関モデルを走らせる作業です。AIは、たとえばあるネオクラウド企業をヘッジする際に、他の上場ネオクラウド企業や相関の高い銘柄を選び出す「材料の特定」は得意です。しかし、流動性の考慮や最適な配分といった「スライス」の部分はできません。Emmanuel Derman氏の著書になぞらえ、AIは材料を特定できるが、最適な切り分けと配分は人間の仕事だ、と整理しました。

Altman氏は「知識」と「知恵」の違いにも言及します。誰もが無限の知識にアクセスできるようになったが、それは知恵を持つことを意味しない、というわけです。「知識とは、トマトが果物だと知っていること。知恵とは、それがフルーツサラダには合わないと知っていること」という格言を引き、AIが返す非構造的な回答は、たいていファクトチェックや検証が必要だと締めくくりました。

まとめ

エピソードの最後に、Tracy氏とJoe氏は対談を振り返ります。これらの商品、とりわけアジアでの爆発的な成長により、市場において限界的な買い手・売り手としてより重要な存在になっていることが浮き彫りになりました。規制当局が5倍や100倍のレバレッジ商品を承認しないとしても、これらの商品の総量そのものが懸念になる地点があるのではないか、とTracy氏は問いかけます。

Joe氏は、バランスシート容量の観点と、大きな下落局面で銀行のバランスシートに何が起きるかを真剣に受け止める必要があると指摘します。さらに、家計の株式エクスポージャーと不動産エクスポージャーの差がこれほど広がっていたことに驚いたと述べ、経済全体が株式市場に、株式市場がレバレッジに、そしてそのすべてがAIに連動している構造の重さを改めて確認して、対談を締めくくりました。

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