ワールドカップの日、息子が選んだのはサッカーボールではなく「バット」だった
ワールドカップの熱戦が繰り広げられているこの頃。
今日の日本代表のチュニジア戦、画面越しに熱い声援を送っていたご家庭も多かったのではないでしょうか。
我が家のリビングでも、ずっとサッカーを続けてきた私としては画面の前の特等席から離れられない時間を過ごしていました。

そこへ、お昼寝からもうすぐ2歳になる息子が目をこすりながら起きてきたんです。
「お、起きたか。一緒にサッカー観る?」
あわよくば、この熱狂を一緒に味わって「ボール蹴りたい!」なんて思ってくれないかな…。そんな親の淡い期待をよそに、画面で躍動する選手たちには一切目もくれず、息子は力強くこう叫びました。
「おに!おに!」
……実は息子、今年の2月の節分シーズンに『鬼のパンツ』の動画にどハマりして以来、「YouTubeが見たい=おに」にすっかり変換されてしまっているのです。(いつまでその呼び方が続くのやら…)
ワールドカップの熱狂よりもYouTube。根負けした私は、仕方なくスマホを取り出して動画を見せることにしました。
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その後、試合が終わってから、気分転換も兼ねて一緒にエディオンへ。実は株主優待が先日届き、5,000円分の商品券が手元にあったのです。
「おもちゃ、5,000円までだったら好きなの選んでいいよ」
おもちゃの棚の前に到着した息子は、いつものトミカやプラレールには目もくれず、ある一つのアイテムに一直線。そして、小さな両手でがっしりとそれを掴み、誇らしげに掲げたのです。
それは、プラスチック製のおもちゃの「バット」でした。
「これ!」
息子の瞳はキラキラと輝いていて、「絶対に離さないぞ」という固い意志が伝わってきました。チュニジア戦の無関心から始まり、おもちゃそっちのけで最終的に息子が選んだのは野球のバット。思わず笑うしかありませんでした。

結局、その意志に降伏し、私たちはバットをお買い上げして家路につきました。
帰り道、私は自分の幼少期のことを思い出していました。私がサッカーを始めたきっかけは、しっかりとした目標や劇的な出会いがあったわけではありません。「幼稚園の友達が何人もサッカークラブに入るから」という、実にあっさりとした偶然の連鎖でした。
人の人生を動かす「きっかけ」って、本当にいつ、どこからやってくるか分からないものです。それは大人になってからも同じで、私自身、数年前には今のようにコーチとして活動するなんて想像すらしていませんでしたし、最近は広報についても学び始めるなど、何が起きるかわかりません。すべては、その時々の予測不可能な出来事の連続です。
そう考えると、子どもの「好き」の矢印がどこを向くかをコントロールしようだなんて、到底不可能なのだと痛感します。
ただ、ここでふと、親としての葛藤が顔を出します。
今日のおもちゃ一つにしても、「何でも好きなものを選んでいいよ」と言いつつも、心の中では「こっちを選んでくれたら嬉しいな」と願ってしまう。これって結局、親のエゴの押し付けなんじゃないだろうか、という自問自答です。
けれど、だからといって完全に手を引いてしまうのも少し違う気がしています。子どもは、自分の世界の地平線にあるものしか選べません。
だからこそ、私たち大人の役割は、意図的に「きっかけとなり得るもの」を子どもの周りに置いておくこと、つまり「選択肢の種を蒔くこと」なのではないかと思うのです。
それがたとえ、親のエゴから出発した種まきであったとしても、適度に選択肢が増えるような働きかけは、子どもの世界を広げるための大切なプロセスのはず。
重要なのは、「種は蒔くけれど、どの芽を育てるかは100%子どもに委ねる」というスタンス。親の願いとは違う芽が出たとき、それを今回のように「そっちを選んだか!」と全力で面白がれる余裕を持つこと。それが、エゴを愛情に変える境界線なのかもしれません。
明日からは、サッカーのドリブル練習ではなく、リビングでの素振りの練習が始まる予定です。息子が選んだバットの世界を、まずは一緒に思いっきり楽しんでみようと思います。
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頭ではこんなふうに「子どもの選択を面白がろう」と理解しているつもりなのですが、現実はそう綺麗にはいきません。最後に、私の抑えきれなかったエゴの結晶についてお話しします。
実は先週のことです。 ワールドカップが始まる直前、私はあまりの興奮と期待の先走りに耐えかねて、一人でスポーツショップに駆け込んでいました。そして、「息子のために」と、わざわざ【ワールドカップ仕様の特製リフティングボール】をフライングで購入していたのです。
現在、そのボールは主を失ったまま、部屋の隅で静かにワールドカップの熱戦を見守っています。
「きっかけの種まき」などと格好いいことを言ってみたものの、私のエゴは、息子の選択の遥か先を全力でダッシュしていたようです。
子どもの世界を広げる前に、まずは私の「親としての空回り」を、息子に優しく軌道修正してもらう日々は、まだまだ続きそうです。
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