冬を待つ
春を感じる日が増えてきました。
春は
芽吹きの季節であり
新たなスタートの季節でもあります。
冬から春に移り変わることを、
厳しい試練を乗り越えることのたとえとして用いられることがよくあります。
また、
「暖かくなって過ごしやすくなりましたね」
など、春を歓迎する定番の挨拶もよく耳にします。
私は春が苦手です。
ぽかぽかとした陽気も、
新年度のザワザワと落ち着かない緊張感も、
何かを正しく前向きにスタートしなければいけない空気も、
子どもの頃から苦手です。
かといって、
「暖かくていいですね」
と言われた時に
「いえ、私は寒いのが好きです」
なんて言いません。
ちゃんと笑顔で、そうですねと答えます。
春は
様々な生命が芽吹く季節です。
一方で、春になってその役目を終える草花もあります。
私はそれらを愛おしく感じます。
冬の間、張り詰める寒さの中で
ひっそりと美しく咲いていた命を
愛しています。
冬の
雪雲のどんよりとした空も
ピンと張り詰めた冷たい空気も
寒さでみんなが家に籠って人が少なくなった町も
雪で覆われて浄化されたかのように美しく見える街並みも
深く積もった雪に音が吸い込まれて
まるで宇宙空間のように神秘的な夜の風景も
寒さから身を守るぶあついコートも
大雪で安心して家にこもれる時のストーブの匂いも
愛しています。
胸がざわざわする春を乗り越えて
暑さで記憶が飛びそうな
賑やかな夏を通り抜けて
秋の落ち着いた空気に懐かしく
安心して
また美しい
冬を待つ。
