#3 ケージの中から失礼します
どうも。
ケージの中から娘ちゃんの成長を見守っている、ゴールデンハムスターのコメです。
この家に来て1週間ほど経った頃のこと。
実は、ママたちが少し青ざめる事件が起きていました。
あの日の私は、新しいおうちにも少し慣れてきて、「外の世界ってどんなところなんだろう」と脱走を試みていました。
ハムスターたるもの、一度は冒険心に駆られるものです。
ところが、それを見つけたじいじが私を逃がすまいと手を伸ばしてきました。
突然のことにびっくりした私は、とっさにガブリ。
気づけば、じいじの指からは血が出ていました。
娘ちゃんもその様子を見ていて大ショック。
そしてママはというと、
「あぁ……この子は完全に人間嫌いなんだ……」
と、半ば諦めていたそうです。
確かに、家に来てからずっと警戒していたし、人の手が近づくだけで身構えていました。
だから無理もありません。
でもね。
実は私は、人間が嫌いだったわけじゃないんです。
ただ、新しい環境が怖かっただけ。
見慣れない音、見慣れない匂い、見慣れない人たち。
小さな体の私には、そのすべてが大冒険だったのです。
じいじを噛んでしまったあの日から、娘ちゃんは少しだけ私を怖がるようになりました。
無理もありません。
目の前で血が出るところを見てしまったのですから。
それからしばらくの間、娘ちゃんはケージの外から私を見守るだけ。
ごはんをあげるのも、お世話をするのもママの役目でした。
私はというと、そんな娘ちゃんの視線を感じながら、回し車を走ったり、おやつを頬袋に詰めたり、いつも通り過ごしていました。
そんなある日。
ママがいつものように優しく私の背中をなでてくれました。
すると、その隣で見ていた娘ちゃんが、おそるおそる小さな手を伸ばしてきたのです。
指先がそっと私の背中に触れました。
ほんの一瞬。
それでも娘ちゃんにとっては、大きな勇気だったと思います。
私は驚かないように、逃げないように、そのままじっとしていました。
すると娘ちゃんは少しだけ安心したような顔をしていました。
そんなふうに、ママに見守られながら、私たちは少しずつ距離を縮めていったのです。

人間だってそうですよね。
最初の印象だけで「怖い人だな」「苦手だな」と思ってしまうこともある。
でも、少し話してみたり、一緒に過ごしてみたりすると、意外な一面が見えてくることがあります。
あの日、じいじを噛んでしまった私は、きっと「噛む怖いハムスター」だったはずです。
それでも娘ちゃんは、勇気を出してもう一度手を伸ばしてくれました。
だから今、こうしてごはんを用意してくれる関係になれたのだと思います。
もしあの時、「もう怖いからやめた」と距離を置かれていたら、今の私はなかったかもしれません。
だから私は今日も思うのです。
最初の印象だけでは分からないことって、たくさんあるんだなぁ、と。
