【掌編小説】欠勤証明
〈おはようございます。申し訳ございません。今朝熱を測ったところ、高熱だったため、本日会社を休ませてください〉
私はベッドに寝転がりながらスマホをいじり、上司にメールを送った。すぐに上司から返信がきた。
〈おはよう。了解。最近頑張ってたもんな。お大事に〉
しばらくメールの文面を見つめた。休まなければならなくなってから認められても、何の意味もないのに。
私は自分のおでこに触れた。熱くはない。ただ、指先に速い鼓動が跳ね返ってくるだけ。私は起き上がり、体温計を取り出して脇に挟んだ。すぐにピピピと音が鳴る。
体温計の液晶を眺めると、そこには三十六・一度と表示されていた。その数字を見た瞬間、何も入っていないはずの胃から食道に何かが逆流してくる感覚がした。
私は嘘をついていない。本当に体調が悪い。でも、熱はなかった。
体温計を机に置き、部屋を閉め切って暖房のスイッチを入れた。クローゼットから上着を取り出す。それを羽織り、キッチンに向かい、白湯をマグカップに注いだ。
部屋に戻り、椅子に座る。時間が経つたびに、身体中に熱が籠っていっている気がする。
もう一度熱を測る。すぐにピピピと音が鳴った。画面には三十六・三度と表示されている。しばらくその画面を見つめていると、体温計の液晶に汗が一滴落ちた。
体温計を机に置き、目を瞑る。さっきまでしていた吐き気は治まり、身体のだるさも抜けていっている気がする。今も垂れている汗のせいで、私の苦しみが嘘になっていく。
私は暖房を冷房に切り替え、服を全て脱いだ。キッチンから氷水を持ってきて、一気飲みをする。汗がスッと引いていく。これで私は、本当に体調が悪いとようやく証明できる。
身体が震え出した頃、私はもう一度体温を測った。体温計の液晶には、三十五・八度と表示されている。私はその画面をしばらく見つめ続けた。
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