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山田詠美はなんて言うかなー『DTOPIA』安堂ホセ(2024年)候補4→芥川賞受賞

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 発表前に芥川賞候補5作中3作を読んだが、受賞したのは残りの2作品だった。当日の18:00以降はスマホを見ないで、ドキドキしながらニュース番組を待った。尹大統領逮捕、新党発足…なかなか芥川賞・直木賞のニュースにならない。ネットや有名な書評家が本命と書いていたから、乗代雄介さんが取ると思っていた。同時受賞がいる気がして、もう一人は誰かなと思っていた。金屏風の前にいたのは安堂ホセと初めて見る男性二人だった。

第172回芥川賞受賞作
 恋愛リアリティショー「DTOPIA」(デートピア)新シリーズの舞台はボラ・ボラ島。ミスユニバースを巡ってMr.LA、Mr.ロンドン等十人の男たちが争う──時代を象徴する圧倒的傑作、誕生!

河出書房新社HPより

 NHKのニュースで作品紹介を聞いて、「恋愛リアリティーショーに興味がないから好みじゃないかも」と思ったが、いつも似たような作家ばかり手に取るのを改めたかったので、読みはじめた。出だしから面白くて、読むのをキャンセルしなくて良かったと思った。

 フランス領ポリネシアのボラ・ボラ島を舞台にした世界配信の恋愛リアリティーショー「DTOPIA」(デートピア)。集められたのはMr.LAやMr.ロンドンなど各国代表の男性10人で、東アジアからはMr.東京。彼はこの小説で「おまえ」と呼ばれている。つまり語り手がいるのだ。その乱暴な呼び方に、誰視点だろう?と疑問がわいた。この10人の男性がミスユニバースをめぐって競い合う。

 説明が周到なので、恋愛リアリティーショーを見たことがないわたしにもすんなりとイメージできた。とくに気に入ったのはエピソードのタイトルたちだ。どれもめちゃくちゃそれっぽい。

Date1 ポリアモリー・ユートピア?
Date2マルセルのタヒチツアー
Date3 デッキの上で考えていた
Date4 ルール違反は誰のせい?
Date5 あんたはここに呼ばれていない

『DTOPIA』P.13

 さらに“ショー”が視聴者によってどのように扱われ出すか、その様がとても現代的だった。

例えば、みんながどうやって推しキャラクターを決めるのか。自分の国の代表を応援するっていうのが普通のはずだけど、異性愛者が異性を応援するとき、愛国的なモチベーションは驚くほど持続しない。だいたいの異性愛者にとって、世界でいちばん憎悪をそそられる対象は、自分の国の異性だから。

『DTOPIA』P.16

 読みやすいって偉大だ。
 たとえば料理に対して、「おいしい」とか「好きな味」ではなく、「噛みやすい」「飲み込みやすい」と最初に言うのはふさわしくないみたいに、「読みやすい」は賛辞じゃないと思っていた。でも、この小説はするする読めるのがうれしくて仕方なかった。

 全編約150ページのうち、真ん中の80ページが登場人物の過去の話になる。そこでMr.東京をおまえと呼ぶ人物がわかる。
 昨今多様性と言われる少数派や人種の違いがそれこそ多種多様に登場した。
 わたしは80年代の村上龍ぽさがあると思い、別の観点から鷺沢萌を思い出していた。当事者にしか書けない小説という意味だ。作者のことはほとんど知らないけれど。
 芥川賞は世相を現したものが受賞することがある。ポストモダンの時代だったから村上春樹は取れなかったとも。本作も時代を現しているところが評価されたのだと思う。わたしが定義を知らなかった、作中に出てくる「シス」や「ノンバイナリー」って言葉も常用語になっていくんだろう。多様性ってなんだっけ?わからなくなってきた。
 小川洋子や川上弘美や山田詠美が来月の『文藝春秋』の選評になんて書くか気になる。
 かつて、黒人パートナーとの関係を叩かれた山田詠美は現代のこの“多様化社会”をどう見てるのかな。なによりも彼女の選評がいちばん楽しみだ。

 わたしの願望だけど、先生をしてくれた乗代さんの受賞会見やニュースでの紹介を見たかったなあ。それで、『文學界』で誰かと対談してるのを読みたかった。これを機に乗代作品が届くべき人に届いて、その人たちが救われたらいいなあと。乗代さんなら誰と対談するだろう?

読む:1/16〜1/18
note:1/20

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