はじめての遺言書の書き方:土地・株等相続財産を持つ人の実践ガイド
どうして、この記事を書くことにしたのか。
遺言書作成は、現時点の状況を正確に把握するきっかけになります。
例えば
資産の棚卸をして、財産、又は負債を正確に特定。
今後、その資産がどうなるかを色々なケースで試算。
大切な家族の将来生活を想像する機会。
法定相続人になれるのは、配偶者と血族です。
同じ順位の人が複数いる場合は、全員が相続人となります。また、先順位の人が1人でもいる場合は、後順位の人は相続人になれません。

遺言書には、次のようなメリットがあります。
・仲の良い家族が、遺産をめぐってお互いに気を使ったり嫌な思いをしなくてすむ。
・相続手続きがスムーズになり、仕事や育児で忙しい家族の時間やお金を節約できる。
・高齢の配偶者や気がかりな子供に、マイホームなど特定の財産を確実にのこせる。
― 土地・預金・株を持つ人のための実践ガイド ―
「遺言書って、なんだか難しそう」
そう感じて、つい後回しにしていませんか。
しかし実際には、遺言書があるかないかで、家族の未来は大きく変わります。
特に、土地や建物、預金、株式といった複数の資産を持っている場合、何も決めていないと“争族(そうぞく)”になってしまうケースも少なくありません。
この記事では、実際の事例をもとに「誰でも書ける遺言書の書き方」をわかりやすく解説します。note読者の方がすぐに行動できるよう、実務に近い内容でまとめました。
■ なぜ遺言書が必要なのか
遺言書がない場合、相続は法律(民法)のルールに従って分けられます。
一見公平に見えますが、実際には問題が起きやすいのが現実です。
例えばこんなケースです。
・自宅を誰が相続するかで揉める
・預金は分けられるが、不動産は分けられない
・株式の扱いが分からず手続きが止まる
結果として、家族関係が悪化することもあります。
遺言書は、単なる財産分配の指示書ではなく、
「家族を守るための最後の意思表示」です。
相続財産の分け方には遺言がある場合とない場合で異なります。また、生命保険金などのみなし相続財産は受取人として指定された方が受け取ることになります。

■ 今回のモデルケース
この記事では、次のような家庭を想定します。
・配偶者(妻)あり
・子ども2人(長男・長女)
・財産内容
- 自宅(土地・建物)
- 銀行預金(複数口座)
- 株式(証券会社)
このケースは、日本の家庭で非常に多い例です。
■ 遺言書の基本ルール
まずは押さえておきたい基本です。
自筆証書遺言の場合:
・全文を自筆で書く(※財産目録はPC可)
・日付を書く
・署名・押印をする
この3つが欠けると、無効になる可能性があります。
■ 実際の遺言書の書き方(事例)
以下は、そのまま参考にできる実例です。
遺言書
私は、以下のとおり遺言する。
第1条(不動産)
私は、下記の不動産を妻 ○○○○に相続させる。
(1)土地
所在:東京都○○区○○
地番:○番○
地目:宅地
地積:○○㎡
(2)建物
所在:東京都○○区○○
家屋番号:○番○
種類:居宅
構造:木造○階建
床面積:○○㎡
第2条(預金)
私は、下記の預金を長男 ○○○○に相続させる。
・○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号 ○○○○○○
・△△銀行 △△支店 定期預金 口座番号 △△△△△△
第3条(株式)
私は、○○証券株式会社に保有するすべての株式および投資信託を長女 ○○○○に相続させる。
第4条(その他の財産)
本遺言に記載のない財産は、妻 ○○○○に相続させる。
第5条(遺言執行者)
本遺言の執行者として、長男 ○○○○を指定する。
付言事項
家族仲良く支え合って生活してほしい。
令和○年○月○日
住所:東京都○○区○○
氏名:○○○○ 印
この形式をベースに、自分の状況に合わせて修正すればOKです。
■ 財産ごとの書き方のポイント
① 不動産(最も重要)
不動産はトラブルの原因になりやすい資産です。
ポイントは
「登記簿どおりに正確に書く」こと。
住所ではなく、
・地番
・家屋番号
を必ず記載します。
曖昧な表現は無効や争いの原因になります。
宅地、家屋、農地、山林原野など、地目によって相続税評価額や資産価値が大きく異なります。
また、農地は相続により相続人に登記することは可能ですが、売却する場合、農地法により農地委員会の許可が必要。
農地の売却には留意が必要です。
② 銀行預金
預金は比較的分けやすい財産ですが、書き方が重要です。
・銀行名
・支店名
・口座番号
まで書くのが理想です。
「すべての預金」とまとめて書くことも可能ですが、実務では具体的な方が安心です。
③ 株式(証券口座)
株式は少し特殊ですが、実はシンプルに書けます。
・証券会社名
・口座内すべての資産
と書けば十分です。
銘柄を一つ一つ書く必要はありません。
なお、相続人が同じ証券会社に口座があると、相続手続きが円滑に進みます。
予め相続人とは、そのことを話しておくとスムーズです。
また、複数の証券会社で投資している方は、例えば、A証券は長男、B証券は長女など、証券会社毎に相続することも検討できます。
■ 見落としがちな重要ポイント
● 「その他の財産」を必ず書く
これを忘れると、
・新しく増えた財産
・書き漏れた財産
が宙に浮きます。
その結果、また話し合い(=争い)になります。
● 遺言執行者を決める
遺言執行者とは、
「遺言の内容を実現する人」です。
これを指定しておくと:
・銀行手続きがスムーズ
・証券会社の対応が早い
・相続人同士の調整が不要
になります。
非常に実務的に重要なポイントです。
■ よくある失敗例
実際に多い失敗を紹介します。
・「長男に多めに」など曖昧な表現
・日付がない
・パソコンで全文作成してしまう
・財産の特定が不十分
・押印を忘れる
遺言書は「気持ち」ではなく「法律文書」です。
形式を守ることが何より重要です。
■ 一歩進んだ考え方(実務視点)
遺言書を書く際に、もう一歩踏み込むと完成度が上がります。
● 不動産は誰に渡すべきか
・配偶者が住み続けるなら配偶者へ
・売却予定なら分けやすい形に
といった「使い方」を考えることが重要です。
● バランスをどう取るか
例えば:自宅、預金、株式が概ね配分したい価値の場合、
・自宅 → 妻
・預金 → 長女
・株 → 長男
のように分けると、比較的公平感が出ます。
■ より確実にするなら
自筆証書遺言は手軽ですが、不安もあります。
その場合は「公正証書遺言」という方法があります。
・公証役場で作成
・無効リスクがほぼゼロ
・相続手続きが非常にスムーズ
費用はかかりますが、確実性は圧倒的です。
■ まとめ
遺言書は特別な人のものではありません。
むしろ、普通の家庭こそ必要です。
ポイントは3つです。
・具体的に書く
・財産を正確に特定する
・家族の将来をイメージする
たった1枚の紙ですが、その効果は非常に大きいものです。
「まだ早い」と思った今が、実は一番いいタイミングかもしれません。
家族のために、静かな準備を始めてみてはいかがでしょうか。
なお、今回は標準的な遺言書の書き方を説明しましたが、実際の遺言には専門家の助言が必要なケースも多いため、事前に相談することをお勧めします。
