2030年-SoFi がJ.P.モルガン(個人部門)を超える!?―
J.P.モルガン、言わずと知れた米国最大の銀行で、全米第10位の時価総額を誇る。将来的にSoFiはJ.P.モルガンを追い抜くことができるのだろうか。それとも競争に敗れ去ってしまうのだろうか。
J.P.モルガンの事業は、複数の部門に分かれており、SoFiの事業モデルに一番近い部門はConsumer & Community Banking(CCB:個人および中小企業向け事業)となるため、以下はCCB部門(個人部門)との比較である。
【時価総額】
SoFi:時価総額 約230億ドル/J.P.モルガン:約8,000億ドル(いずれも2025年7月11日終値時点)。J.P.モルガンCCB部門は、2024年通期の全体利益の約3割を占めているため、同部門に相当する時価総額は約2,400億ドルとなる。これをSoFiと比較すると、時価総額は約10倍の差がある。
【売上・純利益】
・2024年通期売上:SoFi26億ドル、J.P.モルガンCCB部門715億ドル
・2024年通期純利益:SoFi2.3億ドル、J.P.モルガンCCB部門176億ドル
※SoFiは特別利益を除いたAdjusted Net Incomeでの比較
SoFiの売上・利益ともにJ.P.モルガンには遠く及ばず、SoFiは規模で見れば「豆粒のような存在」に過ぎない。
一方、売上の推移を比較すると、2019年から2024年までの5年間でSoFiの売上は5.8倍になり、J.P.モルガンCCB部門は1.3倍である。J.P.モルガンCCB部門はそれほど伸びていない一方、SoFiは堅調に推移している。


絶対額があまりにも違いすぎるため、比較するのもはばかられるが、何か理由があるはずである。以下に違いを見ていく。
【預金金利】※2025年7月現在
・SoFi:最大3.80%/月額口座維持費無料
・J.P.モルガン:0.01 %/月額口座維持費5ドル(条件を満たせば免除可能)
J.P.モルガンは日本の銀行と同じで、完全な「金余り状態」である。2025年第1四半期末時点で、貸出1兆3600億ドル/預金2兆5000億ドルで、預金に対する貸出比率は54%である(SoFiは2025年第1四半期末時点で107%)。
全米最大の銀行というブランド・安心感から金利を上げなくても預金は自然に集まってくるため、あえて金利を上げる必要がない。ただし、これはお金持ちや金余り企業だけの話で、少しでも高い金利を求める人は五万といるため、SoFiの預金額はうなぎ上りである。

なお、SoFiに預金をした場合、「SoFi Insured Deposit Program」という仕組みを通じて、万が一、銀行が倒産した場合でも、最大300万ドルまでの預金が保険によって保護されるため、(富裕層を除けば)何ら問題もない。
【ローン金利】
個人の信用スコアにもよるため、一概に比較はできなかったが、各種ローン金利もSoFiの方が低いのは確実だ。
【物理店舗】
・SoFi:なし(厳密には、Golden Pacific Bank買収により取得した3店舗を現在も維持している)
・J.P.モルガン:全米各地に5,000を超える店舗数
ただし、個人向けサービスに関して言えば、基本的なことのすべてがアプリで完結する時代である。よって、莫大なコストを抱え込んでいると言え、これはサービス品質(預金金利・ローン金利など)に必ず反映されていく。
【資金力】
J.P.モルガンは2024年単年で170億ドルにものぼるテクノロジー予算を投じたと言われている(2025年の予算は180億ドル)。対して、SoFiは2024年実績ベースで5.5億ドルとなっており、費やしている額が文字通り桁違いだ。
しかし、たとえばローン審査一つでも、SoFiではプロセスがほぼ完全に自動化されており、スマートフォンから最短数分で仮承認を得ることができる。一方、J.P.モルガンをはじめとする大手銀行は、依然として人手による書類審査や顧客対応が残されており、相対的に多くの時間を要する。
このようにテクノロジー投資額には差があるが、古くて非効率な業務プロセスを後からAIで効率化しようとしても、システムの複雑さや部門間の分断が壁となり、劇的なスピード改善にはつながりにくいのが実態だ。
【その他】
SoFiの「預金」「ローン」「カード」「投資」など、すべてのサービスが基本的に1つのアプリ内で直感的に完結できる点、また今年にも始めるブロックチェーン技術を使った送金サービス、暗号資産関連サービスにも踏み出しているという点でも、よりアグレッシブで次世代型と言える。
【まとめ】
SoFiとJ.P.モルガンをはじめとする大手銀行では、資金力に大きな差があるのは事実だ。しかし、大手銀行は、レガシーシステム、物理店舗、硬直的な組織といった「負の遺産」も多く、それが迅速なサービス改善や業務効率の向上を妨げているのも事実だ。
そのため、資金力の差がそのまま優位性につながり、SoFiのようなフィンテック企業が駆逐されるという構図は、現実的ではない。実際、SoFiは特に個人向けサービス領域において、大手銀行を上回る競争力を発揮し、ユーザーからの支持を得ている。
【そして、2030年…】
順調にSoFiが成長を続け、2030年までに「5,000万人の会員が平均3契約(アカウント)を保有する」というCEO Anthony Notoの目標が実現できれば、売上は2024年の10倍を超える可能性がある。そして、仮に売上が10倍になった場合、利益はより一層膨らむことが期待されるため、「10倍」という現在の時価総額の差を埋め、2030年にはJ.P.モルガンCCB部門(個人部門)の時価総額を抜くかもしれない。
・参考資料
SoFi「2030年会員数5,000万人」その時の売上・利益・EPSは?―前編―
SoFi「2030年会員数5,000万人」その時の売上・利益・EPSは?―後編―
SoFiの“売上以上に利益が伸びる”理由──2025年第1四半期決算を読み解く
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