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なぜ「測定基準」がこれほど人気になったのか

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「測定基準」はこんなに欠陥があるのに、どうしてこれほど人気なのだろうか

 「測定基準」はこんなに欠陥があるのに、どうしてこれほど人気なのだろうか。
 明確な答えはないが、いくらか推測はできます。

能力主義社会では一見客観的に思える基準が求められる

 先ずエリート層が属する能力主義社会では、判断の基盤とするために、一見客観的に思える基準が求められる傾向にあります。
 そのとき数字は客観性があるような空気を醸し出し、主観的判断を排除しているかのような印象を与えてくれます。

数字は客観性があるような空気を醸し出し、主観的判断を排除しているかのような印象

 1960年代以降、アメリカでは権力への不信感が蔓延している。そうした中で、説明責任のための測定基準は魅力的に映りました。
 特に非営利部門(政府、学校など)では純損益がないことから、成功や失敗を測る手段がなく、客観的な測定基準が求められていたのです。
 こうして説明責任の名のもとに、多くの分野で測定基準が導入されたのです。

リーダーの経験および知識の欠如

 大きな組織は複雑で、さまざまな構成要素から成り立っており、すべてを理解することは不可能です。
 故にそのトップにいる人々にとっては、「数字」を使うのが組織を理解するうえで、一番の近道のように映ります。

経営陣にとって部下を管理する上で「測定基準」は中心的な要素

 経営陣はさまざまな戦略を通じて部下を管理したがるが、そのとき「測定基準」は中心的な要素となります

「組織内でも複数の組織にまたがってでも、役職の階層を登りながら、いくつもの役職を回っていくべき」

 アメリカには「組織内でも複数の組織にまたがってでも、役職の階層を登りながら、いくつもの役職を回っていくべき」という奇妙な文化があります。
 これによりCEOや大学の学長は、ひとつの組織からまた別の組織へ異動することが多いです。
 「組織の中よりも外にもっといい人材がいるはずだ」と私たちは考えがちです。

経験に基づく深い知識を持たないがために、彼らは似たような測定基準を好むようになる

 しかし新たに就任する人は、その組織についてあまり多くの知識を持っていないです。
 そして経験に基づく深い知識を持たないがために、彼らは似たような測定基準を好むようになります。
 これも測定基準が人気になったひとつの要因です。

情報技術の広がり

 情報技術(IT)の広がりも要因のひとつとして挙げられる。1980年代初頭から、電子スプレッドシートが急速に普及しました。
 これにより数字の集計や操作が簡単になりました。
 成功した投資家のひとりであるセス・クラーマンは、スプレッドシートが「徹底的な分析」という幻想を生んだと批判しています。

結論「データを集めたら改善が見込めるかもしれない」検証されていない信念にすぎない

 データを集める機会が増えたこと、それにかかるコストが減ったことで、「データこそが答えだ」という流行が広がったというわけです。
 ですがそれは「データをかき集めて組織内で広く共有することで、改善が見込めるかもしれない」というのは、検証されていない信念にすぎないです。

【参考】ジェリー・Z・ミュラー・松本裕(訳)(2019).測りすぎ なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?. みすず書房