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東京マッチングアプリ回想録

40代、バツイチ、フリーライター。以上が私のプロフィールだ。我ながら胡散臭いプロフィールだと思う。

こんな私でも、マッチングアプリで恋人を見つけることができた。しかも2回も。

しかし、最初の彼氏とは半年で、その次の彼氏とはなんとたったの1ヶ月で破局してしまった。人生で最速記録だ。学生時代だって、半年は続いていたのに。

マッチはする。やり取りも、続く人とは続く。実際に会うこともできる。実際に会ったら必ず告白もされる。

なのに、最終的にうまくいかない。

これはマッチングアプリで出会っているせいなのか、私に問題があるのか。

私はゆっくりと恋をするタイプだが、マッチングアプリで知り合った男性はたいてい3回目のデートで交際を申し込んでくる。私はその時点では、まだ相手のことが好きかどうかわからない。

けれど答えを保留にするのも申し訳ないので、「いい人だな」と思ったら付き合ってみる。そのときはまだ恋をしていなくても、恋人として同じ時間を過ごすことで、愛を育むことは可能だと思うからだ。

実際に付き合ってみると、ドキドキはしなくても、じんわりと「一緒にいて幸せだなぁ」と感じる。そうしていいパートナーシップを構築できてきた頃に、なんらかの原因で破局してしまう。2回ともこのパターンだ。

やっぱり、恋愛感情のない相手と交際することには無理があるのだろうか。恋をしている相手と付き合うしかないのか。

マッチングアプリ発の恋愛(そして破局)を2回経験してみて思ったのは、「たぶん運命ってある」ということだ。

運命の相手であれば、たぶんすべてがスムーズに続く。運命の相手じゃなければ、どれだけ努力や工夫によってパートナーシップを構築しても続かない。

またマッチングアプリをすることになったら、私は男性のプロフィールを見るたびに、「この人は運命の人かな?」と考えるだろう。やり取りに少しでも違和感があれば、「この人は運命の人じゃなかった」と考える。そうして、運命の人が出るまでカードをめくりつづけるのだ。結局はそれしかないんじゃないか。

というわけで、2回ほどマッチングアプリをやってみた体験談を書いてみる。

プロフィールの自己紹介文は思うままに書いた。

ライターという仕事柄、「どうしたらウケるか」という戦略を立てるのは得意だ。だから男ウケするプロフィールも、ちょっと情報を集めれば書けるだろう。だけどあえて情報を集めず、飾らずに素の自分を出すことにした。別に「男ウケよりも自分を貫く!」と言えるほどの自分があるわけではない。単に、男ウケを頑張れるほどの気力がなかったのだ。

思えば、私は若い頃から男ウケするタイプではなかった。しかし、そんな私でもたまに告白されることがあったため、「モテてもモテなくてもどうせ付き合うのは一人なのだから、多数派ではなく少数派に振り向いてもらえればいいや」というマインドになった。アプリもそのマインドでやっていこう。

まぁ、「多数派にウケなくてもいい」なんて余裕ぶっこいたことを言えるのは、人口の多い東京に住んでいるからこそかもしれない。もしも人口の少ない地域に住んでいたら、もっと他の戦略を考えざるを得なかったと思うので、東京に住んでいてよかった。

さて、次は写真を載せなければいけない。

カメラロールを漁るが、食べものと花の写真ばかりで、自分が写っている写真がほとんどない。若い子と違って、おばさんは自分の写真を撮る習慣がないのだ。かろうじて何枚かの写真を見つけ出して設定した。

とりあえずはこれでよし、と。布団に入り、目を閉じる。

あ、写真、加工すればよかったな……。

写真を撮る習慣がないので加工する習慣もないのだが、前にセクシー女優さんにインタビューしたときにおすすめの加工アプリを教えてもらい、何かあったときのためにインストールしておいたのだ。まさに今が使い時なのに……!

そう思ったが、布団から出るのが面倒だったのでそのまま寝てしまった。

翌朝、アプリを見てみると、たくさんの「いいね!」がついていた。けっこう見られているものだな。

「いいね!」してくれた人に「いいね!」を返せば、メッセージのやり取りができる仕組みらしい。「いいね!」は右スワイプ、スルーは左スワイプだ。自分から相手を探して「いいね!」をつけることもできるようだが、まずは「いいね!」をつけてくれた人たちに返答しよう。

「いいね!」をつけてくれた人を一人ずつ見ていく。

年齢層は35歳~54歳と幅広い。けっこう高学歴・高収入の人もいる。写真も、顔がはっきり写っている人もいれば、いまいち顔がわからない写真の人もいて、さまざまだ。

私は「いいね!」を返さない基準を決めた。

・35歳以下の人
・50歳以上の人
・あきらかにプロフィール文がおかしい人
・基本情報欄の「子どもが欲しい」にチェックを入れている人

我ながら、かなりゆるい基準だと思う。

まず、35歳以下の人を弾いたのは、「あなたには私よりもふさわしい人がいるよ」と思うからだ。男性だって若いうちのほうが結婚や子育てはしやすいだろうから、私に時間を使っている場合ではないよ、と思う。

50歳以上の人を弾いたのは、前夫がけっこう年上だったので、なんとなく縁起を担いで年上すぎる人は避けた。

あきらかにプロフィール文がおかしい人は言わずもがな。

「子どもが欲しい」にチェックを入れている人も、もちろん弾いた。私は40代前半で、たとえ出産ができたとしても、もう体力的に育児は難しい。子どもが欲しい男性は、子どもが欲しい女性とマッチしたほうがいいだろう。

意外だったのは、若い人も年上の人も、かなり多くの男性が「子どもが欲しい」にチェックをしていること。少子化の世の中だけど、子どもが欲しい男性はこんなにも多いのか。この項目のおかげで、半数以上の男性をスルーすることになった。

さて、「いいね!」を返した人たちからメッセージが来て、やり取りをするようになった。

まず、マッチしたあとの初手のメッセージはほぼ「マッチありがとうございます」から始まる。

問題はそのあと。ほとんどの人は会話が続くように考えてメッセージを送ってくれるし、もちろん私もそうしている。質問に答えたあとはこちらから質問を返したり、ラリーが長くなってきたら話題を変えたり。

コミュニケーションは、スキルではなく意思だと思う。「この人とコミュニケーションを取りたい」という意思さえあれば、できることだ。

なのに、そのコミュニケーションがなかなか難しい。私は3ターンくらいやり取りしてみて、「なんか噛み合わないな~」と思ったら、その時点で返信を返すのをやめる。

たとえば、初手からタメ口の人。私は心のパーソナルスペースが広いタイプで、いきなり馴れ馴れしい人は苦手だ。しかも初手からタメ口の人ってだいたい文章にクセがある。仮にその人が哲也だったとして、メッセージの一文目が「はじめまして、俺は哲也」だったりするのだ。

えっ、何その体言止め! 昔のラノベの書き出しじゃないんだから。

こういうメッセージを見ると、「悪い人じゃないのかもしれないけど、絶対に気が合わないな」と思ってスルーしてしまう。

また、二人称が「あなた」の人も要注意だ。私は「サキ」という名前でアプリをやっているので、だいたいの人は「サキさん」と呼び掛けてくる。にもかかわらず、なぜか初手で「あなた」と呼び掛けてくる人もたまにいて、正直、気持ちが悪い。「貴女」と漢字で書いてあったりすると、「あぁ、この人とは言葉のセンスが絶望的に合わないな」と思う。すごくいい人そうなのに、「あなた」呼びだけで引いてしまって返信するのをやめたこともあった。

プロフィール文を読まない人も好きじゃない。たとえば、プロフィールに「フリーライターをしています」と書いているのに、「お仕事は何をされているんですか?」と聞いてくる人。

は? プロフに書いてあるだろうが。

そう思う私は不寛容だろうか。ほかの女性はこういうときイラっとしないものなの? 私はイラっとしたので、遠回しに「プロフ読めや」を伝えたくて、「プロフィールにも書きましたが、フリーライターをしています」と返した。

あとは、話が噛み合わない人も苦手。私はプロフィールに、サモエドと一緒に写っている写真を使っている。友達とサモエドカフェに行ったときのものだ。この写真について、「素敵なお写真ですね。ご自宅のお写真ですか?」と言われた。

いや、どう見ても背景がお店だろ。壁が鏡張りで、天井からいろいろな飾りがぶら下がっていて、掲示物とかも写り込んでるだろ。

この写真を見て「自宅」と感じる人とは話が噛み合わなそう。と思いつつ、「友人と原宿のサモエドカフェに行ったときの写真です」と返信した。すると、返ってきたのは「いいですね。原宿へはご旅行で?」というメッセージ。

いや、その前にお互い都内在住って話したよね? 都内に住んでる人間が原宿に行くの、「旅行」って感覚になると思う?

あまりに噛み合わないので、やり取りをやめた。

話が噛み合わないといえば、いきなり長文で沖縄旅行の感想を送ってきた人もいた。えっ、コミュニケーションってこういうものだっけ?

怯みながらも「沖縄いいですよね! 何度か行ったことがあります。私も美ら海水族館に行きました」みたいな、当たり障りのない相槌を返したところ、「私はパートナーシップにおいてもっとも重要なのはお互いに誠実であることだと思います」という書き出しの長文のパートナーシップ論が返ってきて、頭がクラクラした。

いつそんな話になったの? 私が気絶してる間に3ターンくらい会話進んだ?

あまりにも怖いので、即ブロックした。

他には、1ラリーで送れる内容を何回にも分けて送ってくる人が嫌い。たとえば、プロフィールに会社員と書いていた人が、「自宅は〇〇なんですけど、今日は仕事で渋谷に行ってました」と送ってきたので、「会社が渋谷にあるんですね」と返したことがあった。

すると、「いや、会社員じゃないんですよね笑」と返ってきた。いろいろ質問してわかったことだが、その人は個人事業主で、オフィスは構えていなくて、複数のクライアントを訪問する働き方のようだ。たったそれだけの情報を引き出すのに時間がかかった。何を聞いても、「職場は決まってないんですよね笑」みたいな一言で返ってくるので、全貌を掴むためには何度も質問する必要があったのだ。

なんか、もったいぶって情報を小出しにしているように感じる。私が編集者だったら「最初からすべての情報を一文で書いてください」と赤字を入れる。

他にブロックをする理由として多いのは、まだメッセージのやり取りが盛り上がってもいないのに、「会いましょう」と提案してくる人。

……焦りすぎじゃない?

私はメッセージのやり取りを重ねて、「この人なら気が合いそうだな」と思った人とだけ会いたい。メッセージによって会う人をふるいにかけているのだ。だからまずはメッセージのやり取りを盛り上げて、「この人に会ってみたい!」と相手に思わせるべきだと思う。

マッチングアプリは疲れる。もう二度とやりたくない。

そう言いつつ、私はまたそのうちマッチングアプリをインストールするのだろう。他に出会いがないから。

もしもマッチングアプリの神様がいるなら、こうお願いをする。

マッチングアプリで運命の人に出会えますように。好きになってから付き合えますように。

そして、マッチングアプリをしているすべての男女がいい出会いを引き寄せられますように。


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