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米国発前川のニュースレター

8月7日(金曜日)
ホルムズ海峡開放の交渉は袋小路に入ったようで、なかなか出口が見えてきません。今日もイランとオマーンがホルムズ海峡再開の合意案に米国とイスラエルの船の通行禁止のニュースやフーシ派がイエメンに展開するサウジアラビア軍部隊を攻撃などのニュースがでると、原油価格が上がり、米国債の利回りも上昇しました。経済指標だけを見ても株価や債券利回りは予想がつかないとつくづく思います。
今日も米国の政治、経済、不動産関連ニュースをお送りします。

【経済動向】
ドル円相場
近々に、日本による円買い介入があるとは思っていましたが、7月30日、31日に実行されたようです。円が急騰しました。           今回は米国も巻き込んだ協調介入となりました。1ドル163円前後で高止まりし、164円台を伺う水準まで進んでいた円安が一気に156円台まで上がりました。日本の当局者は、為替介入の原資となる米国債のポートフォリオを売却せずに、FRBの米国債を担保にしたドルの借り入れ制度を利用してドルを調達して様です。今回はどうして米国が日本の為替介入に協力してくれたのでしょうか? その理由を考えてみました。
1.    日本政府が円安防衛のために米国債を売却して為替介入をする可能性があるから。―> 米国債の利回りが上昇する。
米国債が売られると、米国債の値段が下がり、利回りが上がります。そうなると、ただでさえ巨額な財政赤字を抱えている米国政府の国債の利払い額が上がってしまう。
 
2.    円安を止める為、日銀が政策金利を上げるー>日本の国債の利回りが上がると、日本の大手機関投資家が米国債などへの投資を減らして、日本国債への投資を増やす可能性が大きくなるからー>米国債の利回りが上昇する
 
3.    長期金利の指標である米国10年国債の利回りが上昇すると、住宅ローン金利などの上昇と共に、AI投資の資金調達でAI関連会社が大量に発行している社債の利回りも上昇する。―>AI投資の費用が上昇すれば、企業利益が減り、経済に大きなマイナスの影響が及ぶ可能性がある。
 
結局は、米国は、自国の国債の利回りを上げたくないので、日本に協力して為替介入による米国債売却を阻止したのだと考えられます。

米国雇用統計
うがった見方をすれば、4日に発表された米労働省による雇用動態調査(JOLTS)の求人件数の減少、5日に発表されたADPリサーチの民間雇用者数の伸びの鈍化を伏線にして、本日の雇用統計の発表があったのではないでしょうか? エコノミストの予想の中央値は8万人増となっていましたが、発表された雇用統計は2万3,000人の減少となりました。      とんだサプライズです。
この発表を受けて株価上昇、米国債の利回り下落、円上昇となりました。ベッセント財務長官の思惑通り、米国債の利回りが下がり、次のFRBの利上げ観測も後退しています。米国債の利回り低下を受けて、住宅ローン金利も下がりました。気になることとしては、賃金の伸びが鈍化して、これまで好調だった娯楽・ホスピタリティー関連の雇用が減少し、小売、外食業の人員削減が進んだことです。また、AI投資は好調なものの、国際ニュースで触れています、データセンターの立ち上げの遅れなどが足かせになって、株価の低迷と、景気の後退が本格的に進む可能性が上がりつつあるように思えます。米国は今後ますます製造業を日本に依存する必要があるので、円買い介入に手を貸してくれたのでしょうか?
 
【不動産・住宅ローン金利動向】
地域別・米国の住宅市場動向
7月のRealtor.comからのデータによると、市場に出てくる新規の売り物件の増加率は低く、販売可能な住宅数は2017年から2019年のコロナ前の通常水準を11.6%下回っています。新規売り物件が少ないと、物件価格上昇圧力が上がります。逆に、売り物件在庫が多い都市では、物件価格が下落傾向となります。全米の主要都市圏(上位50地域)のうち、34地域で前年比の在庫増加が報告されています。

在庫が増加している都市圏
1.    ミネアポリス +29.3%
2.    ケンタッキー州ルイビル +24.9%
3.    ワシントン州シアトル +21.4%
在庫が減少している都市圏
1.    フロリダ州ジャクソンビル ー20.0%
2.    フロリダ州マイアミ -16.9%
3.    サンフランシスコ -16.3%
 
売買契約手続き中(ペンディング・セールス)の物件数
対前年同月比で1.3%増加して、8か月連続増加中ですが、6月、7月と徐々に増加ペースが鈍化してきています。             地域別にみると中西部が+9.3%、次いで北東部が+8.3%と増加しているのに対して、南部はー0.2%、西部は0.6%微増でした。
 
地域別・既存一戸建て住宅価格の中央値(前年同期比)
北東部 $547,200 (+3.8%)
中西部 $348,000 (+3.6%)
南部  $380,000 (+1.0%)
西部  $637,900 (-0.8%)
 
住宅価格は地域や都市圏によって異なる傾向が続いており、南カリフォルニア地域でもエリアやコミュニティーによってまちまちの傾向が出ています。あるところはショートセール(家を売ってもローンが返せない為、銀行管理になっている状況の物件)やフォークローズ(差し押さえ物件)が多いエリアがある一方で、物件が売り出されると、取り合いになるエリアもあり、また、売り出しても長い間売れないエリアもあります。

物件がよく売れている上位5都市圏
フロリダ州ウェストパームビーチ (13.2%)
テキサス州オースティン (10.8%)
ニューヨーク (9.8%)
ボストン (9.5%)
ニューヨーク州ナッソー郡 (8.2%)

物件の売れ行きが落ちている上位5都市圏
シアトル (-14.5%)
ヒューストン (-13.6%)
フェニックス (-8.3%)
デンバー (-6.5%)
マイアミ (-2.8%)
 
外国人による米国住宅購入動向
NAR (全米不動産協会)が発表した『2026年米国住宅不動産における国際取引』によると、2025年4月から2026年3月までの期間に、外国人購入者が取得した米国の中古住宅の総額は453億ドルで、対前年で比べると、購入額で19.1%、物件数で14%の減少となっています。また、現金で購入している人の割合は48%(米国の全取引の中に占める現金購入の割合は28%)となっています。外国人購入者の国別の割合は1.カナダ 16% 2.メキシコ 14%、中国 11%、
インド 9%、英国 4%となっています。
外国人が購入している場所トップ5は以下の様になっています。
1.    フロリダ州 20%
2.    カリフォルニア州 19%
3.    テキサス州 12%
4.    ニュージャージー州 4%
5.    ジョージア州 4%
 
*住宅価格やローン金利が高止まりしている状況に加えて、イラン戦争による影響で原油価格が乱高下しています。その為、住宅の売買件数は低空飛行を続けており、新築物件市場でも、新規建築許可申請件数が減ってきています。しかし、米国の不動産市場では未だに、数百万戸の住宅不足状態にあり、政府は住宅供給を増やすために、住宅建設の拡大を目指しています。そんな中、ウォーレン・バフェット氏から米保険・投資会社バークシャー・ハサウェイを引き継いだグレッグ・アベル最高経営責任者(CEO)が住宅メイカーを買収したり、JPモルガンが今後10年間で、過去10年間の実績を40%上回る7,500億ドル(約117兆5,000億円)を住宅分野に投じる方針を示しました。具体的には手頃な価格の住宅購入に向けた融資を拡大する方針で、融資、出資、助成金を提供するとともに、業界の他の関係者とも連携するとしています。この方針を基に新たに、アドバイザー850人を新規採用するとのことです。先進国の中では人口増加率も高く、国内需要だけでなく海外からの購入希望者も多い米国不動産市場は底堅い人気のあるまた、将来性のある業界だと考えられているのでしょう。
 
 
住宅ローン金利動向
先ほど触れました、雇用統計のサプライズによって、米国債の利回りが下落したことで、住宅ローン金利は今年の最高金利水準から少し下げました。しかし、依然として30年固定金利は6.5%から7%弱のレベルで、日本の金利と比べると、ビックリするぐらい高い水準です。住宅ローン金利は長期金利の指標となっている米国10年国債の利回りと連動しています。この水準を下げる為には、米国債が買われる必要がありますが、トランプ関税、イラン戦争、ウクライナ戦争だけでなく、米国の大きな財政赤字など政治的な不安定さがドル離れを助長させています。その為、米国債の利回りが上昇しています。これはトランプ大統領はじめ、ベッセント財務長官たちが何とかしたい最重要な課題です。日本の円買い介入を助けたのも、そこに理由があります。戦争終結、雇用の一層の悪化が無い限りは金利の大きな低下は望めないでしょう。インフレ抑制の為の利上げが言われていますので、先行き不透明ですが、今回の雇用統計発表によって、9月の利上げはさけられ、ローン金利の再上昇も一服という状況です。
次の山は8月12日のCPI(消費者物価指数)の発表です。予想では、物価上昇率は下がるとみられています。その場合はローン金利が下るでしょう。
 
 
【国際ニュース】
AIデータセンター建設の問題点
AIデータセンターが建設ラッシュとなっていますが、シリコンバレーで新設された2つのデータセンターが、電気を待ったまま空っぽの状態であることがブルームバーグのニュースで分かりました。報道によればこれらのデータセンターは数年間は空洞のまま放置される可能性があるとのことです。  また、世界で最もハイパースケールデータセンターが密集する地域であるバージニア州の「データセンター・アレイ」に電力を供給するドミニオン・エナジーによると、新しいデータセンターを電力網に接続するまでには最長で7年間の待ち時間が発生してるとのことです。
電力供給体制における大きなミス
多くのAIデータセンターが稼働できずに放置されているのは電力不足だけではなく、発電した電力を必要な場所にどうやって運ぶか問題なのです。実は全米の発電所の近くには必ず変電所が設置されていますが、変電用変圧器のうち約25%に当たる約1,750万台が耐用年数を超えて稼働しているそうです。データセンターの電力必要量は変動が烈しく電気を届ける送電線、変圧器、変電所、開閉装置がその負担に耐えられなければデータセンターへの電力供給ができません。今、米国では老朽化したインフラの更新、異常気象からの復旧、再生可能エネルギー発電所の新設、そしてデータセンターの建設の為、新しい変圧器や電源ポッド、開閉装置が必要で、取り合いになっています。これらの装置を増産すればいいのですが、それが簡単にできないのが問題なのです。
問題は米国内の製造業の空洞化
米国は過去数十年間にもわたって、それらの設備の生産能力を自ら捨て去ってしまったのです。生産能力と言えば、たくさんの種類の製造業やインフラ製造能力を中国を中心とした製造コストが低い海外に委託してしまいました。その為、イラン戦争で問題になっているミサイル、爆弾不足などの問題に象徴されるように、部品の供給や組み立てすら自国で完結できないようになってしまっています。トランプ大統領は大統領就任直後からこの現実を踏まて、製造業を米国に戻すと言っていますが、1年や2年ではできることではありません。その為、軍艦などは日本や韓国で製造するような手配をしたり、米国の新興軍需産業であるAnduril Industriesがドローンやミサイルを日本で製造することを決めたりしています。     これまで、部品や原材料の供給基地としていた中国から他国へ移行することに舵を切りましたが、何十年にも及ぶ企業間のつながりや、利権構造があるので、旧来の企業にとってはかなり難しい問題があります。その過程でAIデータセンターの建設ラッシュが起こりました。今この解決策を模索して、しがらみの少ない新興企業が立ち上がっている状況です。さて、今後、米国の製造業は立ち直ってゆくのでしょうか? 米国のこの状況は日本にとっても他山の石としなければならないと共に、チャンスでもあると思います。
  
【豆知識】
米国のZ世代(16歳―30歳)の住まい選びの希望リスト
広い裏庭(32%)
ガレージ(32%)
プール(28%)
広いキッチン(27%)
 
*上記のリストは、自身のライフスタイルを大事にする傾向が表れています。ゲストをもてなす為の裏庭、広いキッチン、多目的に使えるガレージなど、日々の生活を豊かにする設備への需要が高まっているようです。
 (出典:NewHomeSource)
  
米国住宅ローン金利】(金利下落) 

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