米国発前川のニュースレター
7月24日(金曜日)前川のニュースレターをお送りします。
日本では、7月後半の梅雨明け後、猛暑、酷暑が連日続いているようですが、ここ米国の南カリフォルニアでもエルニーニョの影響でしょうか、 32度を超える暑さとなっています。
今日も米国の政治、経済、不動産関連ニュースをお送りします。
【経済動向】
ドル円相場
中東情勢の悪化を受けて原油価格が高騰しました。 昨日、Brent Oilの価格が1バレル100ドルを超えてきました。 米国のイラン攻撃と共に、イエメンの親イラン武装組織フーシー派がサウジアラビアの船舶を攻撃したことがその理由でしょう。しかし、ホルムズ海峡の迂回経路となっている紅海ルートでは数百万バレルの原油輸出が継続していることが分かり、供給混乱の懸念が幾分和らいだことにより、原油価格が約2%下がってきています。原油価格の安定を受けて、米国債の利回りが約0.5%下落して10年国債の利回りは4.680%となっています。 それにもかかわらず、ドル円は163.86円と昨日とほとんど変わらず164円目前となっています。今のところ日本政府は必要に応じて果断に行動すると、為替介入の可能性を匂わせていますが、市場はほとんど反応していません。米国債の利回りが上昇基調になったことに伴い、円安が進んだことを考えると、やはり、日米金利格差を利用した、ヘッジファンドや機関投資家による円キャリートレードも円安の大きな原因の一つでしょう。また、原油取引がその大部分がドルで取引されるため、ドル需要が高まり、ドル高、円安になっていることも影響しているでしょう。 更に、今月のFOMC(米国海市場委員会)の政策金利決定会合でインフレ対応の利上げの可能性がスワップ市場は35%の確率で見込んでおり、その為、市場はドル買いを強める公算が大きくなっているようです。いずれにしても、現状は引き続き円安が続くとみて間違いないでしょう。
米国の新関税
米国の最高裁の判断により、これまでのトランプ関税が違法とみなされたことを受けて、別の法律を根拠として新関税が23日の発表されました。 24日に失効するこれまでの10%の関税に変わり、今後は日本からの輸入品に対して12.5%の関税が掛けられることになります。強制労働対策が不十分な国に対しては12.50%、適切な法律を成立させた国に対しては10%の関税となります。日本政府は、今回の関税措置は遺憾だと述べていますが、強制労働の制限措置に関しては言及していないようです。
インフレの行方
一部の国を除くとこれまでの関税率と同率の関税が課せられることから、 関税によるインフレ上昇圧力はほとんどないと考えられます。関税は毎月上昇したり、輸入するたびに変動するものではないからです。原油高による輸入コストの上昇に関しても、今後は落ち着くと予想されます。 米国は、ミサイル、弾薬の在庫が減っており、イランも経済が崩壊寸前だと思われます。その為、今後何か月にも渡って戦闘が続くとは考えにくいからです。もう一つのインフレ要因はAIへの莫大な投資です。金利上昇による投資資金調達の難しさもありますが、データセンターや電力供給の体制が整ってゆくにしたがって落ち着いて行くと思われます。直近はインフレ懸念が引き続きあるにせよ、徐々に解消すると見込まれています。
今後の政策金利
直近の金融市場は原油高など現在のインフレ率の推移から、年内の利上げを織り込んでいますが、エコノミストの間ではFRBは今年は金利を据え置き、来年第三四半期には0.25%の利下げを予想しています。 FRB当局者は根強いインフレを抑えるために、2026年に利上げが必要になる可能性を指摘する声が最近増えてきています。しかし、AIバブルの崩壊の可能性や、中国のAI企業の追い上げ、不動産市場の低迷など不確実性の長期化で労働市場に逆風が吹く危険性もあり、エコノミストは利上げより、利下げの可能性が高いと考えているようです。私も来年には利下げに向かうと考えています。
【不動産・住宅ローン金利動向】
S&P コアロジック・ケース・シラー全米住宅価格指数によると、住宅価格は1年前と比べて1%弱高くなっていて、依然として高水準にありますが、 不動産の売れ行きが落ちており、値引きをして売るか、売るのを止める状況が続いていたため、最近では売主も当初から、売り出し価格を下げて市場に出すようになってきています。それを反映して、Realtor.comのデータでも6月の売り出し価格は前年同月比で2.5%低下しています。売り出し価格低下は8か月連続の低下となっています。これまでは、売主の希望価格と買主の希望価格の乖離が大きかったのですが、徐々に需給のバランスが整い始めています。しかし、この統計はあくまで全米のデータであるため、地域格差はあります。
住宅販売件数の推移
Redfin.comの6月のデータによると、中古住宅販売件数は前月比0.1%の増加で、2022年11月以来の高水準を記録しています。前年同月比では約4.2%の増加です。新築と中古を合わせた総数は6月に前月0.5%減少しましたが、前年同月比では4.5%の増加です。
この販売件数の増加、販売価格の上昇は富裕層の購入者が牽引しています。サンフランシスコでは住宅販売価格の中央値が前年同月比で9.2%上昇、ピッツバーグでは9.1%増、フロリダ州ウエストパームビーチでは8.6%増加でした。これらの地域の売買は高級物件で、ウエストパームビーチとサンフランシスコは販売成約件数をみると、前年同月比で約23%の伸びを記録しています。ボストンやテネシー州ナッシュビルでも同様の傾向が見られます。AI長者や金融関係の高額所得者は高金利、物件価格の高止まりをものともせず、不動産購入を続けていることが分かります。
一方、住宅販売価格の下落率が高かったのはワシントン州シアトル(―4.9%)、カリフォルニア州サンノゼ(―3.9%)、オレゴン州ポートランド(-1.8%)となっています。また、住宅販売件数の減少率が高かったのは、フィラデルフィア(-6.8%)、シアトル(-5.9%)、ジョージア州アトランタ(-3.7%)となっています。
新築一戸建てのHMI(住宅市場指数)の3か月移動平均による販売動向をみると、北東部は1ポイント上昇、中西部は2ポイント上昇ですが、南部は1ポイント低下、西部も1ポイント低下と全体として見ると、あまり振るいません。
米国内の人口移動状況
2026年人口増加が一番多かった州は、これまで1番を続けていたテキサス州を抑えて、ノースカロライナ州となりました。生活費の高い州では依然として住民の流出が続いています。また、アラバマ州は国内純移住者数が23,358人となりフロリダ州を上回りました。アラバマ州の人口はフロリダ州の4分の1であることを考えると驚くべき数字です。
人口100万人以上の郡では、直近の期間において国内移転による人口の純減が合計63万7,634人に上りました。対照的に、人口5万人から99万9,999人の郡では、国内からの転入により合計53万3,766人の人口増を記録しました。人口1万5,000人から4万9,999人の中規模な郡でも、国内移転によって9万5,095人の人口増が見られました。人口1万5,000人未満の郡でさえ、8,773人という小幅な純増を記録しています。生活費の高い大都市から、中小都市への移住が多いことが分かります。 全米で見てみると、人口は、2025年7月1日までに約180万人(0.5%)増加し、3億4,180万人に達しました。この増加幅は前年の320万人の約半分にとどまりましたが、その主な要因は、海外からの純移動者数が53.8%減少したことにあります。
住宅ローン金利動向
先日、イランがホルムズ海峡を通過している船舶を攻撃したことから米国が報復措置を取り、11日連続のイラン攻撃を続けています。その為、停戦の覚書が事実上破棄され、次の交渉のめどが立たないことから、原油価格の上昇と、米国債の利回り上昇、ドル高が進み、住宅ローン金利も上昇しています。FRBの利上げが予想される中、住宅ローン金利は30年固定のプログラムで、先月より約0.3%から0.5%上昇しています。イラン戦争の停戦、ホルムズ海峡の安全航行が見えてくるまで、当分金利は高止まりとなるでしょう。
【国際ニュース】
米中AI競争の勝者は誰に?
7月17日、アンソロピックの最新AI「フェイブル」にほぼ匹敵する性能を持つ中国のムーンショットの新モデルである「KIMI K3」が発表されました。シリコンバレーはその速さと廉価に衝撃を受けたとのことです。安売りで、まず市場シェアを先に抑える、中国得意の戦略ですね。この戦略は無視できない影響力があるでしょう。
7月16日に中国はAIの国際協力機関として、「世界AI協力機構」(WAICO)を設立しました。AIの一対一路と言われいます。習近平はこの設立会議の演説で、「グローバルサウスのAI能力建設を強化して、持続可能な発展を促進し、AI分野で新たな歴史的不公正を生み出すことを避ける」と言っています。この演説の意味するところは、グローバルサウスが米国AIのくびきから逃れることを中国が支援するという事です。 WAICO設立協定の署名式には国連のグテーレス事務総長が出席し、カザフスタン、ラオス、パキスタン、ロシア、インドネシアなど29カ国が創設メンバーとして名を連ねましたが、西側からの参加はありませんでした。習近平総書記の講演では、「今後5年間で発展途上国向けに人工知能専門研修枠5000人分を提供、ASEAN、アラブ連盟、アフリカ連合、ラテンアメリカ・カリブ共同体、上海協力機構、BRICS向けには国際人工知能応用協力センターを建設。気象AI早期警報システム『媽祖(マーズー)』の30カ国での導入、運用を推進」との内容が盛り込まれました。要するに、中国は自国のAIが世界標準プラットフォームとなることを目指そうとしているのです。もし、中国のAIプラットフォームをBRICSなどグローバルサウス諸国(G7以外)の国が利用することを決定すると米国は価格競争力で対抗できなくなるかもしれません。データセンターや電力供給の問題はあるにせよ、中国AIプラットフォームが世界標準となれば米国のAI覇権は崩れる危険があります。最先端半導体の中国国内生産が可能となれば、AIは中国の手に握られる可能性が出てきます。その為、半導体製造装置や原材料供給で世界をリードする日本の重要性がますます高くなるとも言えます。
【豆知識】
家賃が手頃な都市トップ5 (2026年5月現在)
1. ノースカロライナ州ローリー
2. テキサス州オースティン
3. ケンタッキー州ルイビル
4. ユタ州ソルトレイクシティ
5. オレゴン州ポートランド
(出典:Zillow.com)
これらの都市では、これまで新築のアパートの供給が増えた為、賃貸物件の競争が激化し、家賃が下落しました。しかし、現在は、物価上昇、金利上昇などにより、新築アパートの供給が減っており、今後、家賃は上昇すると見込まれています。
米国住宅ローン金利】(金利上昇)

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