第8回 fact は作られたものだった―― fac / fic(作る)から見える「事実」の正体[その1]
この回では、fact / fiction / factory / factor / benefit / office など、
fac / fic(作る)に関わる語源ワールドを探検します。
英単語は、孤立していない――語源でひらく意味の地図
※この連載は、第7回 stand(立)から生まれた語の物語シリーズの続きです。
fact は作られたものだった
英単語 fact は「事実」
という意味です。
私たちはふつう、事実を
「そこにあるもの」
「動かしようのないもの」
だと考えます。
しかし語源をたどると、
その感覚は静かに裏切られます。
fact ── 実は「自然物」ではない
fact は、
ラテン語 facere(作る・なす)
の過去分詞形 factum に由来します。
つまり fact の原義は、
「なされたこと」「作られたこと」なのです。
ここで重要なのは、
fact が「最初から存在していたもの」ではなく、
人の行為の結果として成立したもの
だという点です。
factory ── 作る場所
factory は文字通り、
作る(facere)+ 場所(-ory)
から成る語です。
物が作られる場所が factory であるなら、
事実(fact)もまた、
何らかの行為の結果として
「作られたもの」だと考えることができます。
fiction ──作られたが、事実ではないもの
fiction もまた facere から生まれた語です。
語源は fictio(形作ること)。
ここで、fact と fiction を比べてみましょう。
fact:作られ、事実として受け取られたもの
fiction:作られたが、事実とは見なされないもの
つまり、
事実と虚構は、
同じ「作る」という行為から生まれた
ということになります。
factor ── 結果の中に潜む「作った要素」
factor は「要因」という意味です。
これも facere 由来で、
結果の内部で「作る働きをした要素」
を指す語です。
一つの結果(fact)の中には、
たいてい複数の factors が含まれています。
事実とは、単独で成立するものではなく、
多くの「作る力」の集積なのです。
benefit / office ── 善や職務も「行為の結果」
benefit は
bene(良く)+ facere(作る)から成り、
「良い結果を作ること」を意味します。
office も語源をたどると、
of(〜の方へ)+ fice(作る)
「相手に対して果たすべき行為・義務」
という意味から出発しています。
その行為を果たす場が office です。
これらの語は抽象的な概念のようでいて、
実はすべて行為の積み重ねの産物なのです。
この第8回では
あえて結果としての世界から見てきました。
では、
その世界を作り続けているものは
何でしょうか。
次回は、affect / effect / perfect / infect / sacrifice。
目に見えない「作用」の側から、
世界を見直してみようと思います。
単語のスペル一つ一つには、先人たちの生きた痕跡が刻まれています。
日々英語を教える中でも、そうした痕跡に気づく場面が多くあります。
生徒から受ける刺激に支えられ、英語教育に携われることに喜びを感じています。共に学び、教え合える仲間に感謝します。
授業や学び直しで、この語に引っかかった経験があれば、ぜひ教えてください。
