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【景物逍遥】其の二:庭を歩き季節に埋もれる。リアル没入 徳川園 3月15日

 テンペラ絵画の制作活動は変わらず続けていますが、愛知県内には私の参考資料となる近代以前の西洋絵画を鑑賞できる機会が限られていることもあり、美術館からは少し足が遠のいていました。

 その一方で、名古屋には豊かな伝統芸能と庭園文化が息づいています。江戸時代から昭和にかけて築かれた多様な日本庭園が今なお大切に維持管理されており、日常の中で庭園に触れるハードルが低いのは、この地ならではの魅力だと感じています。

 3月15日は徳川園の「起源の日」にあたり、無料開放されていたこともあって、寒さの和らいだこの日に足を運んでみました。
 徳川園は、尾張藩二代藩主・徳川光友の隠居所であった大曽根屋敷の跡地に築造された池泉回遊式の大名庭園です。1931年に第19代当主・徳川義親により名古屋市へ寄贈され、公園として公開されていましたが、第二次世界大戦により焼失。その後、2005年に作庭家・伊藤邦衛の設計によって、再び池泉回遊式の日本庭園として整備されました。
 「起源の日」とは、徳川光友が隠居してこの地に移り住んだことを記念する日だそうです。 これまで「庭園」というものを深く意識したことはありませんでしたが、大学の講義で空間設計について学ぶうちに、日本庭園の奥深い楽しみ方に気づき始めました。今では、天気の良い休日にはよく訪れるようになっています。

 この日は、少し前まで見頃だった梅がほぼ散り果てていましたが、所々に紅の椿や杏の花が咲き、桜は開花を前につぼみを膨らませているという風情でした。 池の水面には光が揺らめき、冷たい風とあたたかな陽光が混じり合う、春の訪れを感じさせる一日でした。

枯れた林の中を歩いて急に開ける淋子梅の庭園。
谷戸を思い起こさせる滝のある風景

 この日、初めて目にしたのは、ほのかな赤みを帯びた乳白色の、小さなフリルのような杏(あんず)の花でした。これから実をつけていくまでの様子も、ぜひ見届けてみたいものです。  

杏の花

 庭園は季節とともに表情を変える面白さがあります。初春は、まさに「始まり」を実感する季節なのかもしれません。池の水面では光が揺れ、時折跳ねる魚が波紋を広げる、いつまでも眺めていられるような飽きのこない風景でした。

水面の波を揺らす魚影。石を覆う藻の緑と連翹の黄色のコントラストが美しい。


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