Vol.535「ある憲法学者の巧妙な天皇制廃止誘導」
(2025.4.16)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…4月11日の朝日新聞オピニオン面「耕論」で「国連委拠出金除外の波紋」という特集が組まれ、元外務事務次官・薮中三十二、女性差別撤廃条約実現アクション共同代表・浅倉むつ子、慶應義塾大学大学院教授(憲法学)・西村裕一の3人の意見が掲載された。その中で「皇室と女性差別、考える時」と題した憲法学者・西村の論説に、わしは大きな違和感を覚えた。曰く、「そもそも天皇制自体が差別的だから、皇室典範に女性差別があっても憲法や条約の問題ではない」「天皇が象徴する『日本国』とは、現行憲法の下における『平和で、民主的な日本国』でなければならない」「現行の皇室典範は、女性皇族に皇位継承資格を認めていないばかりでなく、婚姻によらない限り皇室からの離脱も許していない」「数年前に起きたある女性皇族の離脱劇は、制度の非人道性を浮き彫りにするものだった」etc.……この不可解な主張の元にある本音は「天皇制廃止」である!!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…『祖国と青年』4月号に掲載された自民党・和田政宗参議院議員の講演録で、和田が、小林よしのり氏に対して《秋篠宮バッシング》《ビジネス保守》というデマをばら撒いていることが発覚した。和田政宗はあちこちでレッテル貼り体質を露わにしている。自分の気に入らない主張を見るや「反日だ」「外国勢力だ」と勝手に認定し、その後、支離滅裂にわめき立てるネトウヨは多数見てきたが、和田政宗は、まさにその典型である。熟議よりも告訴のほうが好きらしく、批判者に対しては、一般人ならブロック、肩書のある人や著名人なら「告訴」「刑事事件」「弁護士」という言葉で威圧する。こんな人物が国会議員をしていて良いわけがない!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…インド在住者から見た『おぼっちゃまくん』ヒットの現状とは?中居正広が多くを語らない中、マスコミが好き放題言っているのは名誉棄損にならないの?スポンサー企業に対してキャンセルカルチャーに抗うよう働きかけることは意味ある?故・八代亜紀さんのベストヒット曲アルバムが発売決定し、その特典として昔の元カレが提供したプライベートのヌード写真が付けられることをどう思う?先生は「横浜」の何に惹かれる?…等々、よしりんの回答や如何に!?

1. ゴーマニズム宣言・第564回「ある憲法学者の巧妙な天皇制廃止誘導」
学校秀才であればあるほど、戦後民主主義者になる。
80年前の敗戦によってつくられた、もはや完全に時代遅れになっている価値観を「先生」や「教授」から刷り込まれた「秀才」たちが、今も次から次から出てくる。それがわしよりもずっと若い世代だと思うと、ガッカリしてしまう。
皇位継承を男系男子に限る皇室典範は女性差別だとして是正を求めた国連・女性差別撤廃委員会の勧告に、日本政府が逆ギレして「報復措置」を発表したことについて、わしはライジングVol.529で批判した。
https://note.com/yoshirin_k/n/na2258921c56d
4月11日の朝日新聞オピニオン面「耕論」でも「国連委拠出金除外の波紋」と題してこの問題を取り上げ、元外務事務次官・薮中三十二、女性差別撤廃条約実現アクション共同代表・浅倉むつ子、慶應義塾大学大学院教授(憲法学)・西村裕一の3人の意見を掲載している。
このうち藪中と浅倉は政府の「報復措置」を厳しく批判し、藪中は「今回の行為は日本の国益に資するものではないといわざるをえません」、浅倉は「人権先進国としては恥ずかしい姿を世界に知らしめた程度の効果しかないでしょう」と述べている。
浅倉という人はおそらく人権派サヨクだろうが、この人の方が自称「右派」とか「保守」とかいう連中よりも、ずっと「愛国的」に見える。
一方、「皇室と女性差別、考える時」と題した憲法学者・西村の論説には、わしは大きな違和感を覚えた。
西村はまずこう言う。
「外務省の対応の是非はともかく、皇室典範の規定が女性差別に該当しないという政府の説明それ自体は、憲法学の有力な立場に沿うものと言えます」
今回の政府の対応をどう評価するかというのがテーマなのに、その肝心の問題を最初っから「外務省の対応の是非はともかく」の一言で、論点から完全に外してしまうのだ。
憲法学者だったら、政府の対応が憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」に違反するのではないかという問題を真っ先に指摘すべきではないかと思うが、西村はこれには最後まで触れない。
そしてその代わりに「皇室典範の規定が女性差別に該当しない」という見解は「憲法学の有力な立場に沿う」と主張するのである。
西村によると、日本では1985年の女性差別撤廃条約の批准当時から、皇室典範の規定が条約に反するのではないかという議論があったという。
そしてその議論で、憲法学者の奥平康弘(当時・東大教授)が「そもそも天皇制自体が差別的なのだから、その中での女性差別は憲法や条約の問題ではない」と主張。異論もあるが、この見解が憲法学界では有力となっているという。
そもそも天皇制自体が差別的?
だから女性差別があっても憲法や条約の問題ではない?
歴史的には明治に入るまで女帝は排除されていなかったのであり、差別的なのは天皇制そのものではなく、あくまでも明治につくられた皇室典範とそれを引き継いだ現行の皇室典範が差別的なのだ。奥平の見解は全くおかしいとしか思えないが、それが憲法学界では有力な学説だって!?
違和感が半端ないが、まずは西村が何を言いたいのかの分析を進めよう。奥平康弘という憲法学者については後で触れる。
西村は続けて「憲法が天皇を日本国の象徴と定めているからと言って、国民が天皇のことを象徴と思わなければならないわけではありません」と指摘する。
そしてさらに、こう続ける。
「象徴とは何かについて確固たる答えはありません」
「天皇が象徴する『日本国』とは、現行憲法の下における『平和で、民主的な日本国』でなければなりません」
「現行の皇室典範の皇位継承の定めが、そのような象徴にふさわしいものとなっているのかは、常に国民の議論に開かれています」
その上で西村は、現在の皇室制度が女性を犠牲にする非道なものだと訴えていき、こう述べる。
「現行の皇室典範は、女性皇族に皇位継承資格を認めていないばかりでなく、婚姻によらない限り皇室からの離脱も許していません」
だが、これは完全に間違いだ!
皇室典範第11条1項は「年齢十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる」と定めている。
これまで前例はないものの、制度上は本人に皇族離脱の意思があり、皇室会議が認めた場合は、女性皇族は皇室を離れることができるとはっきり規定しているのだ。
さすがに誰かが指摘したようで、web版では後に「お詫びと訂正」が追記されたが、もう手遅れだ。この憲法学者は皇室典範もろくに読まずに皇室制度を語っていたことが、バレバレになってしまった。
