色眼鏡|掌編小説
むかしむかし、ある小さな村に、不思議なガラス職人のおじいさんがいました。おじいさんが作る眼鏡は、かけると世界がまったく違う色に見えると評判でした。
ある日、村一番の疑い深い男が店にやってきて、「世の中の嘘を見破る眼鏡をくれ」と言いました。おじいさんはにっこり笑い、真っ赤な色眼鏡を渡しました。
「これをかければ、隠された悪事や嘘が赤く浮き出て見えるよ」
男は大喜びでその眼鏡をかけ、さっそく村へ繰り出しました。
するとどうでしょう。道行く人はみな、口をへの字に曲げて真っ赤な顔で歩いています。りんごを売る商人は目を血走り、挨拶してくる隣人は恐ろしい形相で睨みつけてきます。「やっぱりみんな、腹黒い嘘つきばかりだ!」男は人間不信になり、すっかり怒りっぽくなりました。
ある日、男は自分の不機嫌さに疲れ果て、川のほとりでふと眼鏡をはずしました。そして、顔を洗おうと水面に自分の顔を映し見たのです。
――そこにいたのは、世界を呪うように真っ赤に充血した目をし、鬼のように険しい顔をした、自分自身の姿でした。
男はハッと気づきました。赤く染まっていたのは世界ではなく、自分自身の心だったのです。男は慌てて色眼鏡を床に叩き割り、やっとのことで優しい青空を取り戻したのでした。
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「ねえ、ママ〜」
「なあに?」
「いまのはなし、『えーあい』?」
「え?」
「『えーあい』なの?」
「あ、え、う、うんとね……」
娘の朱音からの予想外な一言に、気持ちの動揺を隠せず、顔にはっきりと「どぎまぎしています」と書かれたような表情だったに違いない。
こどもの頃から夢だった『童話作家』。
社会人になるまでは小説投稿サイトに沢山の作品を公開して、小さな賞だけどいくつか選ばれたりした。
だけど、就職先での人間関係が原因で心を病み、退職後は実家に戻りずっとゴロゴロしているうちに創作欲がすっかり無くなってしまい、いつの間にか夢のことなど考えなくなっていた。
そんな夢も希望もない中、今の夫・和大と出逢い、交際期間一年を経て結婚。
さらに一年後には、私の膝にちょこんと座りながら顔を見上げてまじまじと見ている朱音が生まれた。
その朱音に赤ちゃんの頃から毎日読み聞かせをしていくうちに、昔抱いていた『童話作家』になりたいという気持ちがムクムクと湧き上がってきていた。
ただ、家族に「童話作家になりたい」とは恥ずかしくて言えず、家事・育児の合間を縫ってこっそりと創作活動を再開すると、何度か書いていくうちに昔の感性が戻ってきたどころか、これまで朱音に沢山の童話を聞かせてきた影響からか、創作した作品自体もこれまで以上に洗練されたものになっていた。
ある時、試しに朱音に読み聞かせようと思い立った。
「ネットで見つけた」と嘘をついて、紙に打ち出した私の作品を読み聞かせてみると、朱音が大きな瞳を輝かせて「もっときかせて!!もっともっと!!」と、同じ物語を繰り返し読んでほしいとせがんできた。
あまりの好反応に、私は読み聞かせながら目にはうっすらと涙が滲んでいた。
さっきその朱音から「これ、『えーあい』?」と言われた瞬間、どぎまぎしたけど、この際言ってしまおうかと考えた。
以前、「ママもおはなしかけるの?」と聞かれた時に咄嗟に「ううん、ママはこういったステキなお話は書けないかな。ちょっと苦手だから」と言うと、「ふ~ん」と言ったままそれきりになっていた。
また、和大が最近AIにハマっていて、よくブログ記事の一部をAIに書かせたりしているけど、最近朱音がその様子を見ていた時の会話がこんな感じだった。
「最近はAIっていうものにいろいろと書いてほしいことをお願いすると簡単にやってくれるんだよ。」
「えほんもかいてくれるの?」
「そうだよ、物語も書いてくれるし、絵も描いてくれる。何でもできちゃうんだ」
「ふ~ん」
その会話を覚えていたに違いない。
「ママは書くのが苦手」
「AIが物語を書いてくれる」
朱音がこの二つのことをどのように結びつけてさっきの言葉になったのか、いまいち理解できないけど、この童話は私が書いたものではないとはっきり分かった上での言葉だったんだろうか。何か釈然としない。
きっと朱音に無意味な『色眼鏡』をかけさせて「ママはこんなにたのしいはなしはかけない」と思わせている、私の落ち度だろう。
頭の中でいろいろな考えがぐるぐると回っている時、朱音がもう一度聞いてきた。
「このおはなし、『えーあい』?」
噓をつき続けても仕方がない。
私は小さく息を吐き、正直に話し始めた。
「パパには内緒だけど、ママ、昔は子どもが楽しく読める話を書く人になりたかったの」
「ふ~ん」
「実はね、ママ、ずっと隠していたことがあってね。ここ最近読んでいた話、全部ママが考えて書いたものなの。ネットから見つけたって言っていたけど、あれ、全部がそうだったの」
「……」
「これまで嘘ついていてごめんね。ママが嘘つきだったなんて、嫌だよね」
すると、朱音の瞳がみるみると大きくなっていくように見えた。
「やっぱりそうだったんだ!!パパがいったとおりだ!!」
「えっ、パパ~!?」
間抜けなほどに裏返った声を発してしまった。和大が一体何を言ったのだろうか。
朱音が「パパがね……」とその先を言おうとしたとき、玄関のドアが開く音とともに、「ただいま〜」という和大の声が聞こえてきた。
朱音は真っ先に玄関に行くなり、「パパ~やっぱりパパのいったとおりだった~!!」と言いながら走り去っていった。私の視界からは見えていないけど、パパに勢いよく飛びついているのが想像できた。
「パパ、どういうこと?」
朱音を抱えながらリビングに入ってきた和大は、あーあと言った表情をしていた。
「小花、朱音にそんな嘘つかなくてもよかったのに」
「えっ?」
「この前、クローゼットにしまい込んでいた卒アルを出そうとしていたら、たまたま見つけちゃったんだ。小花がノートに綴っていた物語を、ね」
「あ……」
「その内容をこっそり朱音に伝えたら「えっ!!そのはなしこのまえママがきかせてくれた!!」って言われて、それで察したんだ」
「そっか……見られていたんだね」
「小花にそんな才能があったなんてこれまで全然知らなかったよ。凄い才能だよ!!」
「……」
「実は書き始めているんじゃないの?」と、いたずらっ子のような表情で和大が微笑んできた。私は迷うことなくこくりと頷いた。
「小花がしたいことをしてくれたら、それでいいんだよ。それに、朱音もこれからもっともっとママの物語を読んでほしいって思っているだろうから。ね?朱音」
「うん!!ママのかいたおはなし、あかね、だいすきだよ!!もっともっとも~っとかいてね!!」
「パパ、朱音……」
私は目の前で笑顔になっている二人に向かってぎゅっと抱きしめた。
とめどなく流れている涙を見られるのが恥ずかしくて、和大と朱音の体の隙間に顔を力強く埋めた。
■今回の掌編小説は以下のマガジンに収めています😌
■小説専門マガジンに参加中です✨️
■創作が泳ぐ水族館に入館しています🐬
■創作系メンバーシップ「書き手応援メンバーシップ」に加入しています✨️
この作品は、甘野充さん企画【アマノ文筆クラブ】参加作品です。
今回のタイトルは、【色眼鏡】でした👓️
最近はNano Bananaでイラストを生成したり、これまで書いた作品を読ませて感想聞いたりと遊びまくっていますが、作品自体をAIに書かせたことはないです。
本文は書いたけどタイトルがどうしても思いつかなかったことが数回あり(公募作品ではないです)、その際には参考にしたいために聞いたことはありますが、物語自体のアイデアを出してもらったりは一切していないです。
それをしてしまうときっとスランプの時に頼り過ぎてゆくゆくは自分で物語が書けなくなるのではないかなと思っているからです。
ここからが種明かしですが、今回初めてAIに書かせたのが前半の童話でした。読んでみてこれに慣れてしまったら自分の創作人生は終わるな~と感じました(笑)
ここまで読んでいただきありがとうございました🍀
