京の夜桜と満月|ショートショート #シロクマ文芸部
夜桜と雲一つない夜空に大きな満月。
ワタシは京都市内にある老舗旅館の2階からの景色をぼんやりと眺めていた。
すると、何やら下が騒がしい。
何事かと下を覗くと、宿の入り口で、月明かりに照らされた侍の格好をした男たちがざっと見た感じでは50人くらいいるようだった。
男たちは各々、提灯や十手、縄などを持っている。
先頭にいる1人が叫んでいた。
「御用改めでござる!」
美しい夜桜には似つかわしくない怒号に、ワタシは眉をひそめる。
「御用改めでござる!」
すると、ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえたかと思ったら、ワタシの部屋の戸が乱暴に開かれた。
!!
そこには、全身びしょ濡れになりながら大事な部分だけを手ぬぐいで隠している、頭の毛が禿げ上がった1人のオッサンが立っていた。
「捕吏が来ただよ、捕吏捕吏」
どうやらワタシに危険を知らせに来たらしい。
それにしても、何たる格好だろうか
風呂でも入っていたのかな
一応、ワタシはオナゴなんだけど
下では、旅館の主人がガラガラと戸を開けたのだが、その途端、外で待機していた男たち50人ほどが一斉に中へ入り込んできた。
バタバタバタ
大勢の人間が激しく階段を登る音を立てながら、禿げ上がっているオッサンの後ろに大勢の侍たちがやってきた。
「そこのオンナ、神妙にいたせ!」
侍たちはオッサンのことは無視してじりじりとワタシとの間を詰める。
もう、雰囲気台無し!
ワタシは赤い帯に隠し持っていた棒を二本を取り出して両手に持つと、棒の先から青白い光の刃が伸びた。
それを見てざわつく侍たち。
振袖だととても動きづらいが、この程度の敵なら全く問題ない。
一人の侍が鞘から日本刀を抜き出すなり、ワタシに切りかかってきた。
えいっ!!
ワタシはとある超人気SF映画で有名なラ〇トセーバーのような武器で、この侍に向けて一閃。難なく切り倒す。
そのままの勢いで、電光石火のごとく、次々と侍たちを切りまくる。
その光景は、某人気ゲームの何とか無双のような、サクサクと単純作業を繰り返しているかのようだ。
侍50人ほどをものの1分で切り倒したのだが、ふと気づいたら禿げたオッサンが見当たらない。
そこにいたであろう場所には、手ぬぐいが落ちているだけだった。
「きええええええ」
突然けたたましい声とともに、さっきのオッサンが生まれたままの姿で天井から襲ってきた。
いつの間にかオッサンの爪は伸びて刃と化していた。
オッサン、お前もか!
ワタシは両手のラ〇トセーバー風な武器でオッサンをサクリと切り裂く。
これで終わりかな?
ワタシは軽く息を吐くと、旅館の主人がひょっとりと部屋にやってきた。
「いや〜派手にやりましたな、カッカッカッ」
豪快に笑い飛ばしたが、両手にはピストルを持っていた。
「お客さん、困るんですよね~こんな騒動起こされたら~商売あがったりですよ~」
と言うなり、ピストルの銃口を向けて間髪入れずトリガーを引いた。
ワタシは、飛んできた二つの銃弾を、これも超人気映画の弾除けシーンのように身体を反らしてかわすとともに、主人との間合いを一気に詰めて、ラ〇トセーバーってぽいもので串刺しにした。
主人が小さく呻きながら仰向けに倒れるのを見届け、後ろを振り返ると、外はこれまでの喧騒がウソだったかように静寂に包まれていた。
・・・
風に吹かれて桜の花びらがひらりひらりと舞う。
満月に照らされた花びらが、一枚一枚キラキラと輝いて見えた。
人生は、儚い
この夜桜のように、あっという間に散るだろう
だから、今、この瞬間を精いっぱい生きなければならない
夜桜を愛でながら、ワタシは古の短歌を口ずさんだ。
桜花 咲きかも散ると 見るまでに 誰れかもここに 見えて散り行く

(1,500 文字)
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企画内容
「夜桜と」から始まる
小説・詩歌・エッセイなどを
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締切は3/30(日)23:59。
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夜桜ということで、これまでに思い出があったらそれを題材にして書こうと思っていましたが全くなかったので、こんな現代風時代劇にような設定になりました(笑)
ここまで読んでいただきありがとうございました🍀
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