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コナン・コナン・コナン|ショートショート #あなたの旅ショートストーリー

「もう別れちゃったんすか~?」

職場の後輩・木股と飲んでいたとき、最近付き合っていた女と別れた話をした頃には、木股は既に酔いが回っていた。


「三ヶ月前ですよね?付き合いだしたの。何したんすか~浮気っすか?」
「酔っ払いのお前になんか理由は言わねーよ」
「へ~い」


木股の言うとおり、たった三ヶ月でフラれたのは事実だが、理由が今でも納得できない。


女の名は、小南こみなみ蘭。
木股が企画した合コンで出逢ってからすぐに意気投合し、結婚を前提に付き合いだした。

木股の情報では、蘭は「名探偵コナン」の大ファンのようで、ことあるごとにコナンの素晴らしさを友人らに語っているそうだ。
俺が興味がないのを知ってか知らずか、デート中にコナンの話題は一度もなかったが。



順風満帆に思えた交際だったが、先週、事態が一変した。


「別れてください」


LINEから一方的に送られてきた別れのメッセージ。


ーー俺が何した?


理由も分からずフラれるなんて納得できず、何とか理由を問い質したが、その答えに俺は時が止まったかのようにスマホ画面に釘付けになった。


「結婚すると「小南コナン」じゃ無くなっちゃうのが嫌なの。だからごめんなさい」


フラれた日からずっと頭の中はこの名前で大渋滞していた。


コナン


仕事にも身が入らず、気分を変えようと木股を飲みに誘ったのだが相手にならず、突然の失恋を受け入れることができない。


人間は身勝手だ。
悲しみが深くなると、時が経つにつれて徐々に原因となった相手に対する怒りが湧き上がり、狂人と化する。

俺の負の感情が頂点に達した時、思いもよらぬことを考えた。


ーーコナンと心中してセンセーショナルに人生散ってやる


木股と飲んだ数日後、会社をサボって鳥取県へ行くことにした。
センセーショナルに人生を終わらせるために。



鳥取空港に降り立ち、レンタカーを借りた俺が向かった先は、「鳥取砂丘」。

季節は八月。今日の鳥取の気温は38℃らしい。
灼熱の太陽の下で砂丘で寝転んでいたら、余裕で熱中症によりホトケサマになるだろう。

鳥取砂丘に着き、入り口から砂丘を全力で下った先で思い切りダイブし、江戸川コナンのイラストがプリントされた上にマジックで「NO MORE KONAN」と殴り書きしたTシャツを日に照らしながら、ゆっくりと瞳を閉じた。


一分も経たないうちに全身がフライパンで焼かれたようにヒリヒリしてきた。


すると、天からの恵みにしては手厚すぎるくらいの大量の水が俺の顔を打ちつけた。


「ゲホゲホガハ」


鼻や口に水が入ったせいで息ができず溺れたように必死でもがいていると、傍には一人の女性が見下ろしていた。


「没事吗?」


言葉が分からずぽかんとしていると、その女性は優しい眼差しを向けながら去っていった。


どうやら俺が熱中症で倒れたと思ったらしい。

しかし、あんな躊躇いもなく水をかけられた恥辱のまま死ねるか!


気を取り直して、別の場所へ移動することにした。


車で少々運転した先にあったのが、「鳥取城跡」。

戦国時代にサル顔天下人が城内を取り囲んで飢餓に苦しめた悪名高い場所だ。


ーーここで飢えてホトケサマになろう


山麓から久松山の急坂を汗水垂らしながら登りきり、遠くに鳥取砂丘を認めるとその場に大の字になって寝ころんだ。


しばらく寝ころんでいると、

地面の底から悲鳴を上げるかのように何度も腹が叫び出した。


そういえば朝から何も食べていないなと思い始め、俺はスタスタと下山するなり、目星をつけていた飲食店に入り、柿の葉寿司を頬張ったところで我に返った。


ーーしまった!本能で飯を食ってしまった!


美味しく平らげたときにもうあそこしかないと決めた。


ーー「青山剛昌ふるさと館」で華々しく散ろう


レンタカーの荷台には、途中のガソリンスタンドで買った灯油が三リットル積んである。

他人まで巻き込む勇気はないから、ふるさと館の前で灯油被って人間ロウソクになってやろうと思った。


しかし、コナンのことをよく知らない俺はホトケサマになる前に知っておいて損にはならないだろうと館内に入った。


これが俺の運命の分かれ道だった。



「ありがとうございました!」


店員からのお礼に振り向きもせず、「喫茶ポアロ」を出たときには既に人気もまばらになっていた。


ーー結局ホトケサマになり切れなかった


「青山剛昌ふるさと館」に入ってからコナンの世界に魅かれ始め、思い切り堪能してしまったのだ。



返信を期待せず蘭に鳥取にいることをLINEでそれとなく送信したところ、意外にも返信があった。


「久しぶり。何で鳥取にいるの?」
「蘭がコナンが好きだと聞いたから来てみたんだ」
「コナン?ワタシ好きじゃないけど」
「え?」
「ワタシが好きなのは「コーナン」。ホームセンターの」



ーーはあ!?


蘭の返信を確認してから立ち尽くしていると、一人の女性が近づいてきた。


「あの〜スミマセン、ちょっといいですか?」
「はい」
「今からポアロの写真撮りたいので、そこ、どいてもらえますか?」



(1,997文字)


※サムネは、今年訪れた「青山剛昌ふるさと館」で撮影したものです。


■今回のショートショートは以下のマガジンに収めています😌

■小説専門マガジンに参加中です✨️

■創作系メンバーシップ「虹色創作部」に入部しています🍀



自分が主催した企画で書いてみましたが、思いのほか上手く書けず時間がかかりました💦


今年の夏に家族旅行で訪れた場所が舞台でしたが、2,000文字だと情報量をかなり端折らないと書けないですね🥲

簡単そうで意外と書きにくいテーマの中、応募された皆さんの作品が眩しく見えます✨️


企画は10/31(金)までですのでまだ日数があります。
気軽にご応募ください🎵お待ちしています😌


ここまで読んでいただきありがとうございました🍀


今回の物語の舞台となった場所▽

鳥取砂丘


鳥取城跡


青山剛昌ふるさと館





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