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負けヒロインの方程式|掌編小説 #片想い文芸部

偶然は時に残酷だ。


上手くいきそうな相手がいても、たった一つの偶然の出来事でこれまでの関係が一瞬で破綻することを何度も経験してきた。


例えば中学生の時。
小学校から想いを寄せていた男子とクラスが一緒になり良好な関係を築いていたのに、ある日、転校生がやってきて、ワタシの想い人が一目惚れ。その後、相思相愛になり誰もが羨むカップルに。


また、高校生の時。
同じ陸上部に所属していた一つ上の先輩と良い感じの雰囲気になっていたのに、ある日、部活の同級生が偶然その先輩に会った時、軽はずみで先輩に告ったらオッケーされ、その後、部内公認のカップルに。


さらに大学生の時。
テニスサークルで知り合った同級生の男子と仲良くなり、何度もデートを重ねてきたのに、ある日、キャンパス内でその男子が、女子と出会い頭に衝突し、偶然に唇と唇が触れたことに運命を感じたらしく、その数年後、結婚して幸せな夫婦に。


これ以外にも数人いるが、思い出すだけで悲しさが増す一方だ。

その後のワタシの想い人たちは、頭の中からワタシの存在自体を消したかのように、目すら合わせてくれなくなった。



こんなに偶然が重なって失恋する女って、世界中どこを探してもワタシしかいないのではないかと思ってしまう。



これが世間で言う「負けヒロイン」なのかな…





「新川さん、ここ、いいかな?」


その言葉にワタシは現実に引き戻された。


顔を上げるとそこには職場の同期の伊勢くんが、カレーライスが乗っているプレートを持ちながら立っていた。


気づくと、ワタシの頬がうっすら潤っている。


しまった…


恋の負けっぷりを思い出していたら涙を流していたことに気付かないほど、気持ちが深く沈んでいた。


「ここの食堂、コスパいいけど、座席数少ないのが不満だよね。偶然、新川さんの前が空いていたので声かけちゃった」


窓際のカウンターは全て埋まり、二人席はワタシの席しか空いていなかった。


「あ、うん、どうぞ」
「ではお言葉に甘えて」


ワタシの前に座り、両手のシワとシワを合わせて、


「いただきます!」


カレーライスのCMに出したいくらい幸せいっぱいの笑顔で頬張る彼を見て、

くーくー

ワタシのお腹が鳴り始めた。



「ごちそうさまでした!」


さっきのワタシの涙のことは触れず、彼は黙々とカレーライスを平らげた。


「新川さん」
「は、はい」
「ちょっとだけ散歩しない?」
「…うん」


彼に誘われるままに、職場の目の前にある公園で散歩することに。


涙のことは触れないのかな…


少々落胆しながら黙々と二人で散歩を始め、公園の中央にある噴水にさしかかった時、彼がポツリと呟いた。


「人って無意識に望む道を選択するんだって。それならみんな自分に勝っているって言えるよね」


彼自身に言い聞かせているのか、ワタシを励ましてくれているのか分からず、返答に困った顔をすると、そのまま何も話さず歩き続けた。


もしかして…


ワタシはその場に立ち止まり、心の中で彼の言葉を復唱し、そして過去の失恋に照らし合わせるとあることに気づいた。



自分に勝っている?

そっか


これまで偶然が重なって失恋してきたのは、
実は「必然」だったのなら

失恋になるべくして選択してきたのなら


偶然の出来事で破綻を繰り返すワタシ自身が「負けヒロイン」というレッテルを貼ることで勝手に自分を貶めていたのではないか



ワタシが立ち止まり、そんな考えを巡らせているとも知らず無言で歩き続ける彼。



正直言って彼はワタシの好みではない

でも、これまで彼と接してきて、心の何処かで職場の同期の関係以上の想いを持ち始めていた。


出会ってきた想い人たちのどのタイプとも違う

だから距離の取り方に自信がなくてこれ以上の想いを抑え込んできた



だけど、彼ならワタシの「方程式」を書き換えてくれるかもしれない



ワタシが歩みを始めようとした時には、彼はかなり先まで歩いていた。

小走りで彼に追いつくと横に並びながら話しかけた。



「伊勢くん、あの…今夜空いてる?何だかもっと話してみたくなって」




(1,610文字)



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この記事は、ナルさん企画【片想い文芸部】参加記事です。
今回のお題は、【偶然】でした。


今回はオチ無しでしたので、掌編小説にしました😌

ここまで読んでいただきありがとうございました🍀


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